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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
二章 Encounter with~そして終わりは訪れる~
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それでも少年は冷酷で …9

 もう不意打ちは使えない。だが、死にたくもない。

 眼を閉じる。

 ……考え直せ、巽野響輝。思い込むんだ、いや、思い出せ。

 目の前にいるこいつが、殺したんだ。こいつの同類が、松阪さんを殺したんだ。

 

 あの日の自分を思い出せ。あの忌々しい男を殺したあの時の、頭の中が沸騰するような感覚を。


 殺せ。

 殺せ。

 コロセ……。


 目を開ける。目の前に居るのは、敵。斃すべき、敵。

「…………」

 目の前の目標をにらみつける。

「……?」

 “戌海琴音”が面白そうに微笑を浮かべ、小首をかしげる。

「……を、返せっ!」

 その瞬間を待っていたかのように、身体がふっと軽くなる。

 殺せ……。


 ツーステップで距離を詰める。体重を乗せて包丁を振り下ろす。


 ガギィッ……

 サバイバルナイフと包丁の刃が交差する。


 殺せ……。


「あはっ、あはははははははは――――」

 “戌海琴音”のキーの外れた、狂ったような笑い声をBGMに、二つの刃がぶつかり合う。


 俺が叩きつけ、“戌海琴音”がナイフで受け、


 “戌海琴音”が裂き、俺が包丁や椅子で受ける。



 

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