それでも少年は冷酷で …7
“戌海琴音”がゆらり、ゆらりと狩りをする時のカマキリのように身体を揺らしている。
「今、響輝君が最も恐れているのは、自分しか知らない罪を身近な人に責められること。真核の情報を占有して、他の事では一切揺るがないその意志も、それだけで……もろく、崩れる」
その通りだ。では聞こう。その崩れた先には、何が潜み、息を殺していると思う?
「……ふふふ。逃げられない響輝君には、もう何もできないんだよ」
“戌海琴音”が制服のポケットから大型のナイフを取り出す。
物騒な奴め。今朝……いや、昨日、俺にその紛い物の姿を見せたその時から、持っていやがったのか。
……いや、わけの分からない呪文とかで瞬殺されるよりはまだましか。
まだキーは残っている。まだ、冷静に考えられる。
「……驚いたよ。響輝君はよっぽどなイレギュラーなんだね。“私たち”に最初の方に襲われる人間は、すぐに死んじゃう……もろぉーい、モノなのに」
“戌海琴音”が今度は自らの腰の後ろに手を回し、そこから、一本の少し刃こぼれした、
中華包丁を取り出した。
あの刃こぼれ具合、あの時の……。
「…………っ」
「あははははははは! ほら、よく見てよ。コレでしょ。響輝君の歪んだ記憶の中でも恐怖の対象になってる、包丁」
くそっ。
また、身体をけだるい感覚が襲ってくる。
「そうだよ。コレは、あの時のまま。お姉さんの命を奪った血濡れの凶器」
再び意識が朦朧としてくる。心が“琴音”の元へ吸い寄せられていく。




