それでも少年は冷酷で …4
……確か、いや、間違っていたら誠に申し訳ないんだが、日本人の眼の色は、黒色じゃなかったか?
……まあ、どうでもいいか、そんなこと。
……どうでもいいだと? 何を考えているんだ、俺は。
何だろう、だんだん思考がだるくなっている。
この教室の空気に酔う心が、意識が、だんだん沈んでいくような……。
微妙に朦朧としている俺を、戌海琴音がゆっくり抱きしめる。
「ほら……、良いんだよ? 響輝君。もっと身を委ねて。そうすれば、楽になれるよ」
楽に……なれる……。
過去のしがらみ。今の日常。生きること。死ぬこと。
そのすべて。面倒くさい、俺の……人生。
「全て……忘れるの。響輝君のつらい思い出、マイナスの感情。そして……」
琴音が力を込める。
「……『響輝君』を、私が……貰ってあげる」
忘れる……か。
それも、いいな……。
この際だ。全て、投げ捨てて、忘れて、楽になってしまおう。そうだ、それがいい。
それが――――――――――――
「ね、全部、頂戴。辛かったこと、憎んだこと、攫われたこと、お姉さんのこと、犯人への憎悪、あの日、『響輝君』を壊した 全てを――」
姉さん……。
とても優しかった……俺の、憧れだった人。
でも俺はあの日、姉さんを死なせた。
……殺して、しまった。
……そう。それは誰も知らない、俺だけが知る、真実。
俺以外は誰も知らない……。
誰も知らない……?
……待て。待つんだ、俺。
じゃあなんで、俺の目の前のこいつは、俺を抱きしめているこいつは……
……それを、知っている?