それでも少年は冷酷で …2
中間テストの間休んでいたのが嘘のような元気さの戌海琴音を連れ、河原を歩く。
楽しそうに話しかけてくる戌海を往なし、ハーテッドが会話をつなぐ。
これが俺の『いつも』。変わることの無いはずの日常。そう、夜の闇に潜む謎のことなどまるで別世界の物語であるかのような……平和。
時は過ぎ、夕方の河原。この景色にも、そろそろ慣れた。
いつものように後ろをついてくる戌海に適当にいなしながら、終わりかけの春の風を楽しむ。
「ねえ、響輝君ってさ」
「……何だ?」
日は既に落ちかけようとしている。
「……好きな人とか、いる?」
「…………」
……。
………。
…………んん?
「……居るわけないだろ。どう考えても」
「……だよね、そうだよね」
そう言うと、戌海はとててーと少し前に駆けていく。
……お前、高校生だろ。なんつー擬音出してんだ、ガキか。
また、今日も夜が訪れようとしていた。
『……いや、驚いた。まさか、いや、いつフラッグを立てたのだ?響輝。おじさんに話してみなさい』
「誰だよ」
いや、俺は好かれるようなことをしたのか?
……してないな。ねぇわ。
『いやいや、よかったな』
よくない、全然良くない。
好かれるとか、好きになるとか、そういうのは駄目なのだ。
俺の好きな人、慕っている人は居なくなる。
姉さんのように、いなくなるんだ。
そして、俺が放課後の教室に戌海琴音によって呼び出されたのは、次の日のことだった。