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そして少女は明日を恨む …5
その中で膝を抱え、震える体を抑える。
足音が近づく。
「……なに、焦ることは無いぞ、同胞よ。事は始まったばかりだ」
声が響く。
「もうすぐお前は私のものとなる。その日が待ち遠しいな。……では、また遭おう」
ゆっくりと足音が遠ざかっていく。
足音が聞こえなくなり、辺りに静寂が戻ると、急に身体を脱力感が襲った。
意識が沈んでいく……。
いつからこうしていたのだろうか、膝を丸めたまま、ドアからかすかに差し込む日光に眼を覚ます。
重い足を動かして立ち、少し迷った後、ゆっくりとドアを開ける。
日が出てから間も無いのだろう。
やわらかい陽光が出入り口や窓から誰もいない店内に降り注いでいる。
そこで気付いた。昨夜
完全に割られていたはずのガラスがすべて元通りになっている……。
出入り口のドアのガラスに手を触れる。
……本物だ。まるで砕けていたのが嘘のようだった。
右の方を視る。昨夜あった血だまりも、飛び散った血痕も、そこにいたはずの人も……、居ない。
「……もう嫌だよ。こんなのって……」
膝をガクッと曲げる。
「大柴君……」