そして少女は明日を恨む …4
そう感じて、絶望を感じて瞬間、張り詰めた糸が切れたかのように、自分の体が床に崩れ落ちた。
「逃げなきゃ……」
今更過ぎた。しかし、ここで殺されるわけにはいかない。
幸い足は動くようになった。
ゆっくりと後ずさり、破壊された扉が近くなったところで立ち上がり、きびすを返して店から飛び出そうとした。
しかし。
その足は再び竦んだように動かなくなった。
コンビニの出入り口、外側にも散らばっているガラスの破片の上に黒い影があった。
すぐにそれが黒衣であるとわかった。賢者が着るような身の丈ほどもあるローブである。
それに身を包んでいるのは、背の高い男だった。
彫りの深い顔に、落ち窪んだ眼窩、西洋系の血が入っているらしく、ローブの隙間から見える髪の色は、色の薄い金色だった。
男は店内をゆっくり見回すと、再び私の方を向く。
男の頬にゆっくり皺が刻まれる。
……笑っている。そう気付いた。
「やあ、同胞。気分は如何かな……?」
妙にエコーを伴った声が響く。
「私は、ずっとお前を捜していたのだぞ。……こんなところにいたのか」
いつの間にか男が目前に迫ってきていた。顔に奇妙な笑みを張り付けて。
何歩か後ずさると、後ろに扉があった。店の奥に続く扉ではない。
『このトイレは従業員も利用します。清潔に利用してください』と張り紙が貼ってある。
急いでノブを回し、兎が巣穴に飛び込むかのような早さで中に入り、鍵を閉めた。