そして少女は明日を恨む …3
“蛇”はゆっくりを頭を進める。
「……が、……やめっ……」
抵抗をしようにも身体を組み敷かれていては何もできない。
大柴君の身体はゆっくりと“蛇”の口にのまれていく。
唐突に、“蛇”がその二本の大牙を大柴君の両肩に突き立てた。
ぐさり、と牙が筋を引き裂き、肉を破り、恐らく胸部の中にまで達しているであろうことが見て取れる。
その衝撃に大柴君の腕は一瞬びくっと震え、抵抗を止め、力尽きたかのようにだらりと垂れる。
“蛇”が牙を抜く。鮮血が辺りに飛び散った。
「う゛っ……、がはぁ……」
まだ意識があるであろう大柴君が苦痛に声を上げる。
“蛇”は頭を進め、すでに大柴君の身体の半分近くを飲み込んでいる。
ごとん、と音を立て、右手から拳銃が落ちる。
そして、そこで“蛇”は動きを止めた。
「……嫌だ、……もうやめて、殺さない……で」
もうすすり泣くことしかできない。
自分の恐怖に反して、身体はちっとも動いてくれない。
逃げられない、眼を離せない、停められない。心臓が早鐘を打つ。
私はただ、目の前で繰り広げられる惨劇を見ていることしかできない。
しばらく動きを止めていた“蛇”がその胴体を縮めていく。
そして、じゅるるる、ともう二度と聞きたくない程気持ち悪い音を立て、半分飲み込んでいる大柴君のの身体を吸い上げた。
「…………」
……感情を、吸われているのだ。
恐怖、死への畏れ。
もう大柴君は、糸の切れた操り人形のようにだらりと転がったままになっていた。
“蛇”は満足したように、その巨躯を大柴君の身体から退け、彼の体を飲み込んでいく。
……もう、助からない……。