そして少女は明日を恨む …2
―――――――――――居た。
目前の血だまりや噛殺死体、“蛇”の遺骸にばかり目が行き、それがあまりにも衝撃的で、あまりにも非現実すぎて、完全に死角だった天井に、それはいた。
蛍光灯が光るコンビニの天井にとぐろを巻き、その漆黒の身体を逆さにして張り付いている。
……“蛇”はもう一体いたのだ。
そう気付いた瞬間、全身に戦慄が走る。体が硬直して動かない。
“蛇”はその長い首をゆっくりと擡げ、黄色の眼の輝く頭部を、膝立ちで真上を見上げている大柴君の方に向けた。
一体と一人の目が合い、その眼は大柴君をゆっくりと見据えている。
次の瞬間、“蛇”はその鋭牙の覗く口をありえない程大きく開け、流れるような動作で真上から、真下にあった大柴君の頭を飲み込んだ。
「……ん゛ん゛がっ――――」
くぐもった声が聞こえる。“蛇”の口の中で、大柴君が苦しみの声を上げていた。
「そ……んな、嫌……、嫌だよ、こんなの……」
口は動く。しかし、足は動いてくれない。
大柴君が右手に回転式拳銃を握ったまま両手を振り回し、必死に抵抗している。
しかし、その四肢は、黄色の眼の光る“蛇”の頭部とワンテンポ遅れて落ちてきた太い胴体に巻きつかれ、瞬く間に、床に組み敷かれた。