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けれど所詮は人の内 …4
その血だまりの中央には黒い物体が鎮座していた。
とぐろを巻いている長く、真っ黒な身体。
その身体にはメタリックな鱗がいくつも張り付いている。
蛇だ。真っ黒な蛇。その尻尾の先は時折しなっている。
その頭部では白い牙が二本覗いている。
そして、その口は真っ赤に染まっていた。
蛇の化物は、その体躯で大柴君の兄の体にのしかかっていた。
制服を着たまま、血まみれの床に四肢を投げ出し、――しかも、その頭は半分が齧りとられていた。
頭の横半分がギザギザに割れ、そこから頭骨やら、脳漿やらが覗いている。
化け物はそれを本来の蛇の性質を完璧に無視し、鋭利な歯で齧っていた。
時折その首をもたげ、その脳漿をうまそうに咀嚼していた。
そして、その紅い舌で床の血を舐めとる。
ぴちゃ、ぴちゃという音はこの音だ。
シャー、という音が化け物の口から漏れる。
おそらく、この蛇の化け物は大柴君の兄の恐怖から生み出されたものだ。