廻る支配と鎌と散弾と、そして …6
「あ……」
悦に浸ったかのような勝者の笑みを浮かべる“支配者”の持った剣が目の前に迫る。
身体は動かない。
回避不可能。思考停止。
死――
「――クソがッ!!」
その鋭い剣先が今にも私の顔を斬り裂こうとした刹那、横から叫び声と共に浅滅が飛び込んできた。
その手に散弾銃は握られていない。銃弾が尽きたのだろうか。
「だが、よく“支配者”に隙を作らせた。そこだけは褒めてやる」
振り下ろされた剣を、それを握っていた腕を受け止めることで防ぎ、もう片方の拳を“支配者”の腹に叩きこんだ浅滅は、そう言い、再び私に背を向けた。
「くッ……“魔弾”め、まだそこまで動けるとは……」
忌々しげに“支配者”が一歩下がる。……が、浅滅はそれを許さなかった。
「――ッ」
その場から半歩踏み出す、と同時に体重を前方にかけ、スライドするように一気に距離を詰める。
徒手格闘、というやつだろうか。何の拳法かは知らないが、浅滅がその達人であることは見てすぐに理解出来た。
剣を持っている“支配者”の腕を押さえ込み、もう片方の拳でその剣を根元からたたき折る。
そのまま身体をひねり、抑え込んで下ろした腕を軸に足で“支配者”のあごを蹴り上げた。
ここまでの動作ですら、“逸れ者”である私の視力をもってしても追いつくので精一杯。何より、“恐鬼”の類に対して肉弾戦を挑む人間自体初めて見た。
「ぐうっ……」
“支配者”は“牢櫃神蔵”から新たな剣を取り出そうとする。だが浅滅の勢いは既に“支配者”の反応出来る範囲を超えていた。
伸ばした腕を手首から掴み、今度は全体重をかけて地面に落とす。
ぼきり、と耳障りな音が聞こえた。
「腕を……」
「お前は、ここで終わらせる! 俺の戦いも、お前の謀略も……!」
浅滅は止まらない。距離を取らせず、反撃の隙を与えずに相手にダメージを与えて行く。
突き、蹴りを連続して放ち、浮き上がった“支配者”の身体に踏み込みと共に拳を放った。避ける間もなく直撃した“支配者”が数メートル吹き飛び、地面に叩きつけられた。