廻る支配と鎌と散弾と、そして …4
見ると、両者の戦いは既に佳境に達しているらしく、双方が隠しきれない程のダメージを抱えているのが見て取れた。
浅滅のロングコートは焼き切れたかのように大部分が煤と焦げ跡になっており、カーキ色だった繊維は既に真っ黒だ。おそらく二、三度“光球”の直撃を受けてしまったのだろう。
対する“支配者”も、余裕ぶっていた戦闘開始時の態度とは打って変わって、動きに多少の乱れがあった。散弾の群れに直撃はしていない様だが、掠ったり一部が当たったらしく、こちらも消耗が目立つ。
「“支配者”ッ!!」
空中で憎敵の名を叫びながら短剣を投擲する。
「ッ!」
一瞬こちらを見上げたルラーが“光球”でそれを弾き、続いて襲いかかった散弾を飛び退いて避けた。
消えかけの“クエレブレ”の遺骸が先に地面に墜落し、その上に私が一瞬遅れて落ちる。私が“クエレブレ”の遺骸を潰した瞬間、残っていた遺骸の全てが黒い霧とも塵とも分からないものになって飛び散り、風が地面からまき起こった。
「ぐッ……」
遺骸をクッションにしたものの、ダメージの大きさは否めない。痛む身体を鎌の柄で支えつつ、私は立ちあ上がった。
「何があった」
ふらつく私の前に立ちつつ、浅滅が短く問う。
「上空で“恐鬼”の待ち伏せにあいました。響輝さんが上に向かっています」
「お前は囮になったのか」
「そうです」
浅滅は「そうか」と言うと、口を閉ざして散弾銃の引き金を引いた。散弾の群れが“支配者”の“光球”と交錯し、激突し、軽い爆風と共に四散する。
「残弾が残り少ない。前衛に出ろ、俺がアシストする。おそらくこれが、“支配者”を真っ向勝負で斃せる最後の機会だ」
そう言うと、浅滅はコートで爆風をいなし、大股で一歩下がり、私の数歩分後ろに移動した。
「……」
正直身体はだいぶ疲れており、長くは持たないだろうが、この際仕方ない。
そう考えると、私は大鎌を左腕で持ち、腰で支え、そのままの姿勢で駆け出した。
“支配者”が再び両手から“光球”を放つ。だが、それらは私に当たる前に横から飛んでくる散弾群に飲まれていった。
「たあぁぁぁぁぁぁッ!」
防御の姿勢は取らず、真っ直ぐ“支配者”に向かって走る。
「……小娘風情が」
“支配者”は“光球”での進路妨害を諦め、片手を突き出して“牢櫃神蔵”から一振りの剣を取り出した。