廻る支配と鎌と散弾と、そして …3
――――――――――――――――――――――――――――――RIN side
「ッあ――」
折られた左腕が痛む。神経を通じて激痛が脳を揺さぶった。
今私は大鎌を“クエレブレ”の喉に突き刺したまま、力尽きた“クエレブレ”の遺骸の落下に従って空中を落下し始めていた。
(それにしても……)
本当に響輝さんは仕方のない人だ。私が時間を取りつつこの空蛇を相手にしていたというのに、その間ずっと私の戦いを見ているとは。
(心配……してくれていたんですか)
効率に反するとはいえ、響輝さんの取ってくれた行動に胸が少し暖かくなった。それと同時に、そんなことで心情が左右される自分に少し哀しくなる。
自分でも分かっているのだ。この心に抱く、私の響輝さんに対する感情が何なのか。そして、響輝さんの心が“鍵”から離れることはないということも。
“クエレブレ”の遺骸が落ちて行く。おそらくこのまま遺骸は地面に激突してしまうだろう。
腕が折れたことでこちらの耐久力も大幅に減少している。激突のダメージは耐えられないか……。
だが、そう考えた次の瞬間、思いがけないことが起きた。
「ッ!?」
鎌の刃を通じて感じていた確かな“貫いた”という感触が消えたのだ。思わず下を向く。
見ると、自分の下で落下していたはずの“クエレブレ”の遺骸が、少しずつ黒い霧となって消えて行くのが視界に入った。
(これなら……!)
“恐鬼”は人にその存在が極力知られないために、死んだ後に黒い霧となって空気中に霧散していく特性がある。普通ならもう少し時間がかかるはずだが、今この現象が起こるのなら……。
「まだ手は……あります!」
動かない片手を意識しつつ空中で姿勢を整える。
下を見ると地面はすぐそこだった。広場に立っているのは、浅滅と……。
(“支配者”……ッ!)