廻る支配と鎌と散弾と、そして …2
――空中を落下していく中、俺の脳味噌は最高速度で回転していた。この状況に打開策はおそらくない。ならば、着地時の衝撃をどうやわらげるかが問題だ。
だが大観覧車の頂上部から落ちているためその策は現実的ではない。おそらくどう頑張ったとしても地面に激突し瞬間に肉塊になってしまうだろう。
策はない事も無い。だが、そのためには色々な要素が関わってくる。俺の腕が持たないかもしれないし、小太刀が折れるかもしれない。
「くっそ! ごちゃごちゃ言ってる場合かッ!」
もう思考する一瞬すら煩わしい。俺は五秒程時湯落下をすると、先ほどと同じように背中から転がるように下に遭ったゴンドラに落下し、
「ぐッ……」
そのまま壁面に小太刀を突き刺して耐える。だがゴンドラの形状に従い、刃はすぐに壁面から抜け。再び俺の身体は空中を落下しはじめた。
これを続けつつ落ちて行けば、自由落下して地面に激突するよりはましなはずだ。足で着地できる距離にゴンドラがあればいいのだが、あいにく下を見る限りでは、直線下に存在する数個のゴンドラはすべて一定の距離を保って存在している。上手く着地して持ち直すのは難しいな。
この大観覧車の特徴としてもう一つ、“ツインゴンドラ”というものが存在する。聞こえのいい名前だが、簡単に言うと、大きな観覧車の骨組み、つまり観覧車の半径に二つゴンドラがあるというものだ。説明するのが難しいが、大きな円の中に小さな円があって、それぞれの円の弧にゴンドラがあるものだと考えて貰えば問題ない。俺はそれをどうにか落ち移りながらしのいでいるのだ。
「痛っ……」
四回目の激痛。さすがにきつくなってきた。だがこうすることで肉塊を回避できるのなら御の字なのだ。背に腹は代えられない。
「……ッ」
五回目。
地面もだいぶ近くなってきた。限界が近い。小太刀の刃こぼれも酷く、もう持たないだろう。
「つあッ……」
六回目。地面まで数メートルというところで、ついに小太刀の刃が鈍い音と共に砕け散った。
身体が浮遊間に包まれ、落下。
「がはッ……!」
ようやく、地面に到達する。しかし、最後に小太刀が折れたせいで少し落下距離が長くなった。
地面にたたきつけられた身体がその衝撃で魚の様にはねるが、四肢が言うことをきかない。
身体じゅうがしびれている。腕の関節が悲鳴を上げ、指を動かすこともままならない。
頭も同様だった。残っている体力を振り絞って頭部への直撃だけは避けたものの、精神状態も芳しくない。もう今にもイカれてしまいそうな気分だ。
「――――ん、―――び―――!」
「――が、―――て―――――」
薄れゆく意識の中、消え入るように声が聞こえた。視界がはっきりしない。まるで靄がかかったかのようだ。
駄目、だ。もう、考えること、も――できな……。