表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost Days  作者: 陽炎煙羅
九章 Holy terror~そして憎悪は紺碧の空に~
238/261

そして黒い空は闇に沈む …4

「こちらに有効打はありません」

 凛とした表情で鎌を握り直し、鈴が言った。

「ですが、有効打を作ることは可能です」

「……どうするつもりだ?」

 足元は正直安定しているとは言い難い。竦みの状況であることも変わりない。

 有効打を作る、とはどういうことなんだ?

「こちらに攻め入る方法がない以上、できることは一つです」

 つまり……カウンターか。

「そうです」

 それしかない、と言いたげな表情で鈴が立ち上がった。“クエレブレ”が空中を移動するたびに吹き荒れる強風が彼女のポニーテールを激しくなびかせる。

 だが、カウンターと言っても何をするつもりなのだろうか。太さはそれほど無いとはいえ、“クエレブレ”の身体はかなりの長さだ。

「あの巨体に対して、どう攻撃を叩き込むつもりなんだ?」

「響輝さんの小太刀ではリーチが足りませんし、銃は通用しません。現時点で最も頑丈でリーチもあるのは私の鎌だけです」

 確かにそうだ。だが鎌は近接武器な上に立ち回りも必要になる武器だぞ。よほど良い状況でないと……。

「だから、それを作り出すんです。……私に考えがあります」

 そう言うと、鈴は何かを決めたかのような表情をして、俺に“作戦”を話し始めた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーRe:HIBIKI side

「では、ご武運を」

「それはこっちの台詞だ。必ず決めろよ」

「分かっていますよ、響輝さんは心配性ですね」

 こちらに向かい合い、夜闇に背を向け、鈴は穏やかに笑った。……いや、俺の目にそう映っただけで、実際は普通に俺をからかっただけだったのかもしれないが。

「では……行きますッ!」

 そう叫ぶと、鈴はその場からトンッと一歩後ろに跳ね、ゴンドラから夜闇に身を投げ(・・・・)出した(・・・)



 ーー鈴の話した“作戦”は、俺の予想斜め上を行く意外なものだった。

「とりあえず、これを見ていて下さい」

 そう言うと、鈴は一つ後ろのゴンドラに戻り、上から鎌でゴンドラの扉を剥ぐと、それを空中に投げ捨てた。

 しばらく、闇を落下していく扉を見ていたが、数秒後、動きがあった。

「!?」

 強風と轟音が空気を揺るがし、“クエレブレ”が獲物を襲うまさに猛獣の勢いで、

それに食らいたのである。

「……予想通りですね」

 すぐ隣に戻ってきた鈴が、“クエレブレ”の顎に砕かれていくゴンドラの扉を見ながら、落ち着いた声で言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ