それが少女の存在理由 …11
「ッはあ……!」
息を止めて歯を食いしばり、全力で駆け抜ける。鈴のサポートもあってか、大観覧車の真下へ走り込むまで、銃弾に当たることも“光球”の餌食になることは無かった。
「どうするつもりなんですか、響輝さん。観覧車は動いていない様ですが」
こちらに背を向け、兆弾や流れ“光球”を弾いている鈴が声をかけてくる。目は絶え間なく金属音や発砲音、爆発音を鳴らしながら戦いを続ける浅滅と“支配者”に向けているらしく、集中しているのが見てとれた。
「動かないなら、こちらから上に行くしかないな」
「危険です!……って、今更ですけれど」
さらに飛んできた“光球”を大鎌の刃で弾き、鈴がこちらに駆けてきた。
「響輝さんは前を行ってください。私は引き続き、流れ弾や“支配者”の妨害を防ぎます」
「任せた」
一番低い高さにあるゴンドラの窓枠に手をかけ、体重を乗せてその上に登る。
続いて、鈴が片手で窓枠を掴み、飛び上がった勢いでゴンドラの上に着地した。相変わらずすごい跳躍力である。
「何事も経験ですよ……さあ、急ぎましょう響輝さん。浅滅は限界を押して戦っています。おそらく、あの二人の戦いが長く続くことはないでしょう」
強者と強者の戦いは長続きしない、聞いたことがあるが、まさしく今はそんな状況らしいな。
「くっそ……、中々キツイな」
次のゴンドラに手をかけ、身体を持ち上げて上に登る。このままでは流石に体力が持ちそうにないな。
「時間がありませんよ、響輝さん。煽る気はありませんが、ゆっくりしていられないのも確かです」
幾つ目かのゴンドラを登ったところで息を吐き出した俺に向かって、鈴がそう告げた。……どうしてお前は片手で大鎌を持ったままそうひょいひょいと登っていけるんだよ。
「いずれ響輝さんも力が浸透していくとそうなりますよ。今は時間がありません。一気に登りますよ」
そう言うと、鈴は先を促す。確かに、この高さではまだまだ流れ弾の危険性がある。早めに登るべきなのは確かだろう。
そう考えると、俺は軋む足に鞭打ち、次のゴンドラに飛び乗った。