それが少女の存在理由 …9
「だが、いつまでもこんなところで見ているわけにもいかないだろ」
確かに浅滅との共闘は望めない。戦いに加勢して味方に蜂の巣にされては本末転倒にも程があるというものだ。
「そうですね。ですから、今何とか私達に出来ることを考えているのですが……」
鈴が浮かない顔で言う。確かにこの状況で、できることを探すのは難しい。迂闊に窪みからも出られないのだ。
その時、ふと頭に小さな疑問が浮かんだ。
「……なあ、鈴」
「?……何ですか?」
そう言いながら、鈴は少し不審げにこちらを見た。
「このロストランドは今、“支配者”の空間と繋がっているんだろう。なら、今肝心な“鍵”である戌海はどこにいるんだ?」
「どこにって……」
鈴は視線を上空に向ける。
「この大観覧車の、ゴンドラのどれかに居るとは思いますが……」
そこまで言って、さらに一拍動きを止めた後、鈴はゆっくりと視線をこちらに戻した。
「まさか……、あれを登るつもりですか⁉ 無茶です! そもそも大観覧車の乗り口に辿り着くまでに浅滅と“支配者”の戦いに巻き込まれてしまいます!」
焦った様に鈴が言った。
確かに危険だが、“支配者”も今は浅滅を相手取るので手一杯のはずだ。なら、今は囚われている戌海を奪還する最大のチャンス。
この機を逃すわけにはいかないだろう。
「ですが、“支配者”の方もそれは分かっているはずです。何らかの対策をとっていないとも限りませんよ」
確かにそうだ。だが、それも“支配者”自身と戦うよりは幾分かマシのはず。
「……何としても行くつもりなんですね?」
しばらくして鈴は、何かを悟った様に問いかけてきた。
「……ああ」
「はぁー、……そうですか」
そう息を吐き出しながら、鈴は大鎌を持ち直した。