けれど所詮は人の内 …1
しばらく部屋には静寂が漂う。
「みんな……、そうやって減られてくのかな……」
「このまま奴らのターゲットになるのを待ってたらな。だから、抗ってやるんだ」
「え……?」
大柴は端正な顔に笑みを浮かべる。この微笑でほとんどの女子を落とせるという。
大柴とのつきあいはそこそこ長いから、もう慣れたけど。
大柴は右手をズボンの後ろからそこに挟んでいたらしいものを取り、ゆっくりとそれを見せてきた。
黒光りする重そうな回転式の拳銃。おそらく本物だろう。
「ニューナンブM60。38口径の警察官に配給される回転式拳銃だ。弾丸は五発しかないけど、予備の弾丸もあったし、戦力にはなる」
「それ、どこで……?」
そんな危険なものをどこで……。
「北区の端にある交番にも文字が描かれてあった。二日前にこっそり中に入ってみたら、くしゃくしゃになった警官の服と靴が床に落ちていたんだ。着ていた人間だけが消失したみたいにな。ホルスターもちゃんとあった」
忘れていたけど、確か大柴君はガンマニアだった。
「でも……、そんなもの、危険だよ」
「馬鹿野郎。奴らの前では法律も何も関係ない。お前は気付いていないかもしれないが、この街の秩序は乱れきってるんだよ。実はな、昨夜、家の裏道を大きなサソリみたいな化物が這っていたんだ。だから、近づいて、二発、撃ってやった」
大柴君は手慣れたしぐさで回転弾倉を横に振り出すと、三つの弾丸が入っていた。
「倒した……の?」
大柴君はうなずいた。
「奴ら、実体化したらちゃんと肉体を持つらしい。だから、銃弾が通用するんだ。でも、死んだらすぐに消滅してしまった」
弾倉を収めた拳銃を、また腰の後ろに差し込んだ。
「なあ、戌海。商店街のはずれに鉄砲店があるだろ。あそこさ、一週間前くらいからあの店にも文字が描かれてたの知ってるか?」
私はうなずいた。