それが少女の存在理由 …7
「おそらく浅滅は狙ってこの遊園地で布石を敷いていたのでしょう」
身を隠したまま鈴が言った。
しかしこの窪み、改めて考えると狭いな。銃弾を全て回避するには俺と鈴がしっかりと密着して身体を押し込んでおかなければならない。
「そ、そんなことはいいんですっ!……浅滅は、私達と故意に離れ、周りの“恐鬼”を斃していた。それはいずれ行われるであろう“支配者”との戦闘でなるべく邪魔が入らないようにするため。そして、“支配者”を自分の領域から引きずり下ろす役目を私達は自然と代行していたんです」
つまり、俺達は浅滅が戦うこの状況を作るために意図せず利用されていた、ということか。
「はい。でも、利用というと少し語弊がありますね。私達も意志を持って行動していたわけですから」
それもそうだな。
……そういえば。
「なあ鈴」
「はい?」
広場の様子を見ようと首を伸ばしていた鈴がこちらに振り向く。
「何で俺達はこんな窪みに隠れているんだ? 浅滅と一緒に戦えばいいんじゃないのか」
浅滅は“狩り人”なのだろう? 三人で戦えば勝率も上がると思うが。
そう言うと、鈴は難しい顔をして、
「……見ていればわかりますよ」
とだけ言った。
話をやめて少し顔を窪みから出すと、“支配者”がその黒ローブをはためかせながら地面に着地したところだった。
「“魔弾”、貴様もしつこい駒だったが、それももうじき終わりそうだな。限界が近いのだろう? その力がもう何時までもつかわかるまい?」
“支配者”が正面から浅滅を見据える。対する浅滅は何も答えず、ショットガンをリロードした。
誰も動かない、ただ物静かな風が流れるだけの広場でその音がいやに響く。
「俺には成し遂げなければならないことがある。そのために貴様を斃す。今度こそ、必ず!」
腰だめにショットガンを構えた浅滅がショットガンの引き金を引いた。
「……何だ、あれ」
ショットガンの銃口が火を吹いた瞬間、俺は目を疑った。
散弾銃はその名の通り、撃ち出された一発の銃弾の中に大量の鉛玉が入っており、それが前方広範囲を攻撃するものだ。
だが、浅滅が撃ち出した弾丸は違った。
一発の銃弾が割れ、鉛玉が飛び出す。そこまではよかった。