それが少女の存在理由 …6
浅滅はしばらく上空へ視線を向けていたが、数秒後急にその場から飛び退いた。
理由はすぐに分かった。浅滅がその場から飛び退いてすぐに、上空の闇から数発の“光球”が放たれたからである。
標的に当たり損なった“光球”はそのままレンガの敷き詰められた広場の地面に直撃した。
「ッ!」
“光球”が地面に当たるたびに、眩しい光が瞬間的に発せられる。
「浅滅……あいつ、今まで何をやっていたんだ」
自然と言葉が漏れた。
今奴は“支配者”と戦闘を繰り広げている。だが、大観覧車のすぐ下にいた俺達よりも早く“支配者”と遭遇するにはこうなることを予期していなければならない。
……ロストランドに来てからずっとこれを狙っていたのか?
「おそらく“魔弾”――浅滅でしたか、奴はこれを最後にしようとしているんでしょう」
鈴が考え込むような表情を浮かべながら言った。
「……どういうことだ?」
最後……? 何が最後なのだろうか。
「浅滅は“狩り人”です。この世の闇である“こちら側”に自ら入った者。世界の法則を保つのにはそのような存在も必要、だから“狩り人”と定義される存在が生きうる」
鈴が時折少し距離をおいて背後にあるトイレの建物に視線を向けながら話を続ける。梨菜が気になるのだろう。少なくとも勝手に動くような子ではないだろうから大丈夫だと思うが。
「“こちら側”に深く関わりを持った者には何かしらの変化が現れます。“逸れ者”である私には身体強化と長寿。同じく“恐鬼”と戦う者である浅滅にも同様の変化があったのでしょう。……でも、一度言ったことがありますが、それはあくまで『長寿』。不老不死ではありません。浅滅燎次は、もうその限界が近いのです」
長寿の限界……。具体的に、浅滅の状態は
どうなのだろうか。
「おそらく、この機会を逃したら彼はもう二度と“支配者”の前に立つことが出来なくなる……それほど危ない状態です」
つまり、もうギリギリの寿命を橋渡しして生きているということか。
「そうですね。誰にも逆らうことの出来ない、命の限界。浅滅はその狭間で戦っているんですよ」
鉛玉が頬を掠め、鈴は再び顔を引っ込めた。