かつての少女とある少年 …15
そろそろ副題を変えないといけませんね。15まで続けてしまうとは……(汗
「がッ……!」
“支配者”の左拳が腹にめり込む。痛みが一瞬身体を支配し、意識が飛びかけました。
「そんな付け焼刃にも満たない動きで私に及ぶと思っているのか?」
にやりとその顔が歪みます。嗤っているのだと見て取れました。
さすがに力も、元より体格差がありましたし、所詮大人と子供との戦いです。力の差も歴然でした。
「ッ……」
痛みに腹を押さえ、地面に片膝をついて、こちらを見下ろす“支配者”を睨み返します。ですが、痛みの所為で身体のどこにも力が入らず、私はただ睨むことしかできませんでした。
「さて……。ひさしぶりに面白いモノを見つけたことだしな。一つゲームを始めるとしよう」
そう言うと“支配者”はゆっくりと、地面に座り込んでいる緑のもとに歩いて行きました。
「や……めろ……」
声もまともに出ず、力も入らない。私はただ見ていることしかできませんでした。
「私はこの“鍵”の持つチカラに興味があってな。ひとつ、それを頂いてしまおうという訳だ。そこで見ているといい」
“支配者”はそう言うと、緑の頭の前に手をかざし、にやりと笑いました。
「や……めろぉ……」
緑は何の反応も示さない。何をされたのか、意識の無いままの彼女の身体は“支配者”の腕の動きに従い、中に浮き上がりました。
「緑……起きて! この、ままじゃ……」
「無駄だ。“光球”の光からは逃れられない。……さて、今回の“鍵”は如何な能力なのか……」
そう言い、“支配者”がもう一方の腕を緑の身体に向かって伸ばした時でした。
それまで力の抜けていた緑の腕が急に動き、“支配者”の腕をはじいたのです。
「何ッ!?」
瞑られていた両目は開かれ、紅く染まっていました。
これは緑じゃない、別の“何か”である。本能、思考がそう結論を出し、私はまだ力を入れることが出来ませんでした。
「……」
緑は何も言わず、すうっと下を向きました。つられて、私や“支配者”もその足元に目を向けてしまいます。
「……何だ、これは」
“支配者”が声に焦りを交えながら緑の足元を見つめ、そう言いました。
「……」
私はその時見たのです。宙に浮いた緑の下にある影。そのなかに、とてつもなく不穏な空気を纏った“何か”が居るのを。