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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
八章 Firelike Lifelessness~そして遊戯は炎に陰る~
220/261

かつての少女とある少年 …15

そろそろ副題を変えないといけませんね。15まで続けてしまうとは……(汗

「がッ……!」

 “支配者”の左拳が腹にめり込む。痛みが一瞬身体を支配し、意識が飛びかけました。

「そんな付け焼刃にも満たない動きで私に及ぶと思っているのか?」

 にやりとその顔が歪みます。嗤っているのだと見て取れました。

 さすがに力も、元より体格差がありましたし、所詮大人と子供との戦いです。力の差も歴然でした。 

「ッ……」

 痛みに腹を押さえ、地面に片膝をついて、こちらを見下ろす“支配者”を睨み返します。ですが、痛みの所為で身体のどこにも力が入らず、私はただ睨むことしかできませんでした。

「さて……。ひさしぶりに面白いモノを見つけたことだしな。一つゲームを始めるとしよう」

 そう言うと“支配者”はゆっくりと、地面に座り込んでいる緑のもとに歩いて行きました。

「や……めろ……」

 声もまともに出ず、力も入らない。私はただ見ていることしかできませんでした。

「私はこの“鍵”の持つチカラに興味があってな。ひとつ、それを頂いてしまおうという訳だ。そこで見ているといい」

 “支配者”はそう言うと、緑の頭の前に手をかざし、にやりと笑いました。

「や……めろぉ……」

 緑は何の反応も示さない。何をされたのか、意識の無いままの彼女の身体は“支配者”の腕の動きに従い、中に浮き上がりました。

「緑……起きて! この、ままじゃ……」

「無駄だ。“光球”の光からは逃れられない。……さて、今回の“鍵”は如何な能力なのか……」

 そう言い、“支配者”がもう一方の腕を緑の身体に向かって伸ばした時でした。

 それまで力の抜けていた緑の腕が急に動き、“支配者”の腕をはじいたのです。

「何ッ!?」

 瞑られていた両目は開かれ、紅く染まっていました。

 これは緑じゃない、別の“何か”である。本能、思考がそう結論を出し、私はまだ力を入れることが出来ませんでした。

「……」

 緑は何も言わず、すうっと下を向きました。つられて、私や“支配者”もその足元に目を向けてしまいます。

「……何だ、これは」

 “支配者”が声に焦りを交えながら緑の足元を見つめ、そう言いました。

「……」

 私はその時見たのです。宙に浮いた緑の下にある影。そのなかに、とてつもなく不穏な空気を纏った“何か”が居るのを。


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