かつての少女とある少年 …6
短いです(汗
「ん? どうしたんだい、お嬢ちゃん。やけに落ち込んでるねぇ」
「……あなたには関係の無いことでしょ」
もう私は食われるのを待つだけの、いうなれば役目を失った人質のような状態なのだ。こんなに意気消沈してもし足りないくらいの心境なのである。
「まあ、“支配者”は少し彼らを甘く見ているからね。まだチェックメイトではないよ」
「まだ……?」
「そうさ」
そう言うと、前を同じように“黒帽子”はゴンドラの扉を難なくすり抜け、中に入った。
「確かに浅滅はそろそろ限界だろうね。でも、まだ“逸れ者”が二人残っている。異常の中で自分の運命に抗い続ける人が、さ」
宙に浮かんでいる白い手袋がゆらゆらと揺れる。
「“逸れ者”……」
いままでの会話と状況から察するに、その人たちは私が忘れているという“何か”に関係している人たちなのだろう。その記憶は私が思い出さないと話にならないのだ。
でも、今の私にはどうすることもできない。戦うことも、ここから出ることもできないのだから。
「そんなことはないさ。それはお嬢ちゃん、君が勘違いをしているだけだ」
突然声のボリュームを上げた“黒帽子”がその両手を振り上げた。
「勘違い?」
「そうだとも。君は自分が非力で、ただ“鍵”だからという理由で囚われている、そう思っているんだろう?」
「そう、だけど……」
そうではないの?
「間違ってはいないさ。確かにお嬢ちゃんの“鍵”である“琴瑟調和”は戦闘には不向きだね。でも、その効果をもたらしている大元の力は今までの“鍵”の中でもトップクラスなんだ。少し手を加えれば、それを君が自由に扱えるようになる」
“黒帽子”はさも面白げにそう言うと、指を鳴らした。