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Lost Days  作者: 陽炎煙羅
八章 Firelike Lifelessness~そして遊戯は炎に陰る~
206/261

かつての少女とある少年 …1

―――――――――――――――――――――Re:Re:HIBIKI side


 遊園地の街灯がショートしたかのように点滅する心もとない明かりの下、三つの影が走る。

「左です!」

「わかってる!」

 小太刀のリーチでは有利な間合いをとることは難しいが、一般で言う刀に比べ、刃が短い分、小太刀は防御にも使える攻守を備えた武器だ。使い手にもよるが、安定という点では、重量のある日本刀よりも扱いやすい。

 そう考えながら、左方向から突っ込んできた黒い塊に向かって小太刀を振る。

 目にするモノが様々な恐怖をかたどってこちらに襲いかかってくるが、あまりにもペースが早すぎてそれを気にしている暇があまりなかった。

 今記憶しているだけでも、有名どころのホラーモンスターはあらかた見かけたような気がするが、どうなのだろうか。言ったことがあっただろうか、俺は一時期ホラー系のものにはまっていた時期があり、その知識のおかげか、“恐鬼”がかたどるメジャーな怪物は大抵分かってしまうのだ。

 まあその分怖いのだが。



 ふたつほど霧を抜けた時だろうか。

「巽野さん……」

 ふいに、俺の前を走っていた梨菜が声をかけてきた。

「どうした?」

 そろそろ気分が悪くなってきたか。ああ、俺もだ。

「違うよ。お父様のこと」

「……」

 ふいを突かれ、言葉を無くす。忘れかけていた。

 鳩丘梨菜が俺についてきてロストランドに入ったのは、先に来ていると信じている父親を捜すためだ。だが、仮に梨菜の父がこの遊園地にたどり着いていたとして、武器も無いだろうただの人間がこの“恐鬼”の一団から逃げ切る事ができるだろうか。

 ……いや、無理だ。だからどうにかしてこの少女を納得させなければならないのだが、生憎俺にもどうすればいいのか分からない。何より経験が無い。

 ごまかせばいいのか、それとも事実を淡々と伝えるか。俺は……何と言うか、こういう子どもとの付き合い方というものが全く分からないのだ。まあ俺自身まだ子供の部類には入るが、それはともかく、彼女が信じて疑わない父親の生存と言う望みの薄い理想をどう壊すかが問題なのである。

 行動目的があることはこの“街”では重要だが、それが叶わないものなら、その心の隙はすぐに“恐鬼”に付け入られてしまう。

 それを避けるためにも、梨菜には早く現状を理解してもらわないといけないのだ。

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