そして少年は到着する …1
初投稿になります。
更新は二日に一度くらいになるかと。
では、お楽しみいただけると幸いです。
あなたは人が死ぬところを見たことがあるだろうか。
俺の姉が死んだのは俺がまだ小学三年生の時だった。
その頃はまだ死というものに触れたことも考えたこともなかったため、全くもって現実感がなかった。 何のことはない。姉はただ、行方不明になったのだ。
だが、俺はそれを聞いても何も感じなかった。
当たり前である。
姉を殺したのは俺だからだ。
殺した……いや、死んだというべきか。
何にせよ、自分の目の前で人が死んだのだ。
全く、迷惑な話である……。
話は変わるが、あなたは幽霊やら妖怪やらを信じているだろうか。
存在するものなら出会ってみたいものだが、そもそも俺はそのような存在を信じてなどいない。
無論、俺だって昔は未確認飛行物体やUMAを特集したテレビ番組をわくわくしながら見ていたこともあったのだが、今となっては、この世はたまに現れる才のあるものが政治や国際問題を扱い、俺のような、比較的才能的には普通に属する人間はいつまで続くかもわからない、次の瞬きのあとには終了するかもしれない、ひたすら続くつまらない日常を生きるだけなのだ、
と気づいてしまい、人生というものにうんざりするのと同時に、まだ心のどこかでは、そういった、不可解で異常でとんでもない者たちの出現を待ち望んでいる自分もいたのである。
―――――――――――――――――――――HIBIKI side
目を開けると、大小さまざまな段ボール箱が見え、それと同時にトラックの立てる騒音が耳にはいってきた。
時折訪れる揺れに体を任せ、ゆっくりと意識を戻していく。
『む……、起きたか』
頭の上のほうの段ボールの上で電子音声が鳴る。
しかし俺は無視した。理由は特にない。
『おい、また眠ろうとするな、話を聞け。というかせめて返事くらいしないか』
さて、今度はいい夢が見られるだろうか。
『聞け!』
「あーわかったわかった」
とりあえず手に持っていた文庫本を脇に降ろし、顔に被さっている帽子と一緒に置いた。
顔を上に向ける。
『全く、貴様は…』
電子音声が車内に響く。
「だけどな、ハーテッド。一つ言わせてもらうとだな……」
『言わせる気は毛頭無い』
「ああそうかい」
すぐそこの段ボール箱からケータイに似た形の端末を手に取る。
一つ言わせてもらえば、人が揺れ動く車内で静かに本を読んでいたのに横でガチャガチャうるさかったのはお前であり、そのせいで俺は気分が悪くなったのだ。
……車内で本読めばそりゃ気分悪くなるか。
そう思い直し、改めて体を起こす。
『おい、響輝』
「ん?」
『暗いぞ』
「ああ。元々俺はネガティブでな」
『車内がだ』
「……」
……さて、そろそろ雑談はやめにして俺と俺の横でうるさい端末について語るとしよう。