されど変化は訪れる …2
―――――――――――――――――――KOTONE side
戌海琴音は参ってしまっていた。
一体何が起こっているのか。
自分の記憶違いの可能性を含めても、不自然な点が多すぎる。
今まで確かにあった建物や居た人が消えている……。
そして周りの人はそれを知らない……。
ほかの人が知らないことは昨日確認した。
学校でクラスメイトに聞いて回ったからである。私の少しただならない雰囲気に友達は驚いていたが、ちゃんと話してくれた。
元からあの場所に八百屋など無い……と。
私の勘違いなのではないか……。
そこまで徹底的に否定されると本当に元から八百屋など存在していなかったと思いだしてしまうが、そこで周りに流されるほど、私のメンタルは弱くない。
とはいえ、さすがに頭の中を整理する時間が欲しかった。
今まで一度も学校を休んだことのない……と言えば大げさだが、滅多に休んだりしない私を気にかけ、担任の先生が電話をかけてくれた。
「響輝君、何してるかなあ……」
私が欠席したのを気にかけていれば申し訳ないが、
……無いか。無いわ。
そう思った時、開け放された自室の窓からひゅんっと何かが飛び込んできた。
『響輝なら家で漫画を読んでいるぞ。テスト期間中だというのに、情けない限りだ』
……。
「きゃあああああああ!」
何故かベッドにハーテッドが転がっていた。今飛び込んできたのか。
『うごはぁっ!!』
思わず投げ飛ばしてしまった枕とともにハーテッドが壁に叩きつけられた。
「あ……」
あー、へこんじゃったな、壁。
『あ……ではないぞ。確かにいきなり話しかけた我にも責任はあるが、……。まさか、ここまでの仕打ちを受けようとは……』
文字通り床に転がっているハーテッドが起き上がりもせずに言う。
「ご、ごめんなさい……」
『……まあ、構わんよ。それより、あの脳内ピーマンの代わりに訊くが、風邪でも引いたのか?』
ハーテッドが電子音声で問いかけてくる。転がったまま。
「……」
言ってもいいのだろうか。また、……これ以上否定されると、どうにかなってしまいそうなのだ。
『ククッ……。まあ、そういう時もある。何か悩んでいるようなら響輝に伝えてやっても良いぞ。ああ見えて意外に行動力があったからな。あいつは』
“あった……。”過去形なところがいまいちしっくりこない。
『……少し話が過ぎたな。顔ぐらいは見せに来てやれ。流しているように見えて、単に響輝は押しに弱いだけなのだ。』
窓から響輝の部屋のベランダに投げてくれ、というハーテッドをひょいと投げる。