そして少女は兆しに気付く …5
夜。一日の役割を終えた日が落ち、月が仕事を始める。
――――――――今夜は窓の外を見ない方が、いいよ。
久美が言っていた事を思い出し、ベットから起き上がる。
窓枠に手をかけ、カーテンを掴む。
開こうとしたが、途中で止めた。
玄関から出ると、春の夜の…いわゆる生ぬるい風が頬を掠めていった。
久美のことが気になったわけではない。コンビニにシャープペンシルの芯を買いに行かなければならなかったのだ。異論は認めぬ。
北区のこの辺りには住宅街がいくつもある。…が、何故か街灯が少ない。
その上コンビニまで十五分ほど歩いてかかる。これは絶対に何か間違っていると思う。
都心的な感覚だと不便なのだろうが、俺が前住んでいた町よりかははるかにマシだ。
しばらく歩いてT字路に差し掛かった時だった。
ずる……ずる……と何かを引きずっているような音が聞こえた。
何だ、よくある深夜のゴミ出しか……。
そう思って、T字路の右の方を向く。
暗くてよく見えないが、少し先にある十字路を誰かが横切っているようだった。
ずる……ずる……。
だが、ずいぶんと大きな荷物をもっているんだな…。
そんなのんきなことを考えていた俺だったが、それが電灯の光に照らされた瞬間、そんな考えはどこかへ飛んで行ってしまった。……ああそうさ、デジャブだったよ。
「…………ッ!!」
何かを引きずりながら歩いていた“それ”は、黒いローブを着ていた。
それまでは、いい。ただの不審者で済むからだ。
だが“それ”が目玉も無い肉も無い、ただの骸骨だったとしたら、どうだろう?
いや冗談だ。なんという偶然か。いや、デジャブか?
まあ何にせよ、人は今の俺のように、全身を硬直させて動けないに違いない。
「…………」
ずる……ずる……。
音はしだいに遠ざかり、辺りには静けさが戻った。
『ついに響輝も頭がイッ――――――』
ハーテッドがゴミ箱に放り投げられる。
どさっと良い音がした。
俺は脱力してベッドに倒れこんだ。
時計は十一時を指していた。
それを横目に見ながら、だんだんと俺の意識は深い海に沈んでいった……。