そして少女は兆しに気付く …4
夕日が横から照りつける。
横に並んで俺たちは歩いていたため、影は重なって道に伸びている。
沈黙には慣れている。
話しかけられないことも、一人でいることにも…だ。
「……聞かないんだね、響輝君は」
河原の土手がもう終わろうかというところまで歩いてきた時、ふいに琴音が呟いた。
俺は沈黙する。
「……ねえ、商店街にさ、ラーメン屋さんの隣にあった雑貨屋…覚えてない?」
…はあ。何を言ってるのやらさっぱりだ。
「商店街は通ったことはあるが、実際に寄ったのはついさっきが初めてだ」
そう言って、俺は野菜と肉が入った袋を見せる。
「……そう、だったね。……やっぱり私の気のせいかな」
「……何がだよ」
もう一度言おう。一体何を言っているのかさっぱりだ。
俺は今日初めて住宅街の外へ出たんだぞ。
「…ううん。何でもない。……それより、さ。今度フレンチトースト作ってあげよっか」
何でもないのかよ。じゃあ今までの黄昏ようは何だったんだ。ころっと笑いやがって。
……ん?トーストだと?
「…………」
「あ、あのー……響輝君?」
あー、全く。
「…………いらない」
「えぇぇ!?」
琴音が素っ頓狂な声を上げて俺を見る。
何だその顔は。何か変なことでも言ったか?俺は。
「……最終手段がぁ…」
琴音はそう言いながらガクッという擬音が聞こえるくらい大げさに肩を落とした。
……何の最終手段だよ。
『うむ。最終手段だったのだがな…』
いや、だから何のだよ。
おい疑似人工人格搭載小型端末(試作品)。説明しろ。
『いや、な。響輝。戌海琴音が、どうしてもお前のえ…がはっ!』
嫌な音を立ててハーテッドに直撃した琴音の学生鞄は、これまた乾いた音を立て、地面に落ちた。
いや、ハーテッドの大きさを考えると全身打撲に該当するか。
もっとも、それは「怪我した」ではなく「壊れた」というのだが。
……いやいや、そんなことよりもだな。ハーテッドに直撃=俺の腰に直撃、なんだよな。
フェイタス必要になるだろうが。明日立てなくなったらどうしてくれる。
しかし、トーストは少し惜しかったな。まあ、母さんに頼めばいつでも作ってもらえる。
「ねーいいじゃない、作ってあげるからー」
「いらん」
「うぅ……」
日も落ちかけている。
とりあえず家に帰ってから、ハーテッドに何の最終手段だったのかだけ問いただして寝るか。