そして少女は兆しに気付く …2
しばらく歩いていると、何か違和感を感じた。
いつの間にか商店街まで入り、もうすぐで学校に着こうとしていた。
そこまでは…いい。…だが、何かが違う。
少し辺りを見回して、気付いた。
昨日、用事(というかただのお遣いである)で行った雑貨店にシャッターが降ろされている。
…まあ、よくあることよ。定休日なんてもの、どこにだってあるじゃない…。
だが、そのシャッターが一部錆びており、何故か店の看板もなかった……。
いやいや、そこじゃない。
違和感の原因はそこではない。何か、この建物自体、建てられた時から誰も住むことがなかったかのように、生気もなく、周りの景色から落ち窪んで見えるのだ。
なにより、壁のペンキが剥げているのが目立っており、外壁にはひびまで入っている。
…そんなはずないよ。だって、この雑貨屋は一か月前に建てられたばかりなのに…。
何かあったとは聞いてないし、大体、昨日までちゃんと人が…。
そこで、シャッターに妙な落書きがあることに気付いた。
近づいてみると、錆びで同化していて見えなかったものが見えてきた。
そこのシャッターにはどこぞの漫画に見るような、よくわからない文字が描かれていた。
それも、赤褐色のペンキで。
しばらくそれをじっと見ていると、そこの隣のラーメン屋から、そこの女将さんが出てきて、のれんを立てようとしていた。
「あ、あの…」
「あら、戌海さんとこの嬢ちゃん。どうかしたの?」
いつもは大抵明るい私が焦っているのを見て驚いたらしい女将さんが言った。
お隣なのだから事情も知っているに違いない。
「…ここ、閉まっちゃったんですか?」
降ろされた雑貨屋のシャッターを指さして言う。
女将さんはしばらくしてから、
「…そこは何年も前から誰も住んだことないわよ?どこかと間違えてない?」
と答えた。
「え…と、だったら、こ…この落書きってなんでしょうね?」
シャッターを指さしたまま言ってみるも、
「…何も描いてないじゃない。勘違いじゃないの?」
とだけ答え、店の中へ入ってしまった。
私は休眠しているハーテッドを抱えたまま、しばらくその場に立ち尽くしていた…。