表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

【短編】その他の短編

怪物が巣くうといわれる森の奥

作者: 烏川 ハル
掲載日:2026/03/23

   

 小学生の頃、夏休みになると毎年、おばあちゃんの家へ遊びに()っていた。

 家の前には田んぼや畑が広がり、近くには小川も流れている。自然に囲まれた、のどかな田舎の一軒家だった。


 寝泊まりするのは、二階の奥にある部屋。窓からは遠くの山々が見えるのだが、それよりもかなり手前にも濃い緑色の一帯がある。こんもりと茂った、小さな森のようだった。

 確か三年目か四年目くらいだったと思う。一体あれは何なのだろうと気になって、おばあちゃんに尋ねてみた。


「おばあちゃん、あそこって何があるの? ほら、あの、田んぼより緑色の濃いところ……」

「ああ、あれか。あそこにはな……」

 おばあちゃんはズズッとお茶をすすりながら、まるでそれが思った以上に熱かったかのように、顔をしかめながら続けた。

「……怪物が巣くっておる。だから近づいちゃならんぞ」


 どうやら呪われた土地らしい。

 そんなニュアンスを感じたけれど、それで忌避感を(いだ)くよりも、むしろ怖いもの見たさの気持ちが(まさ)ってしまうのは、子供だったからだろう。

 だから翌日、早速ひとりで(くだん)の森まで出かけたのだが……。


 子供の足で半時間くらい。当時は夏でも今ほど暑くなかったとはいえ、それでも着いた頃には汗だくだった。

 森の入り口には、石で出来た鳥居。塗装もされず、剥き出しの灰色だ。

「神社……?」

 思わず小声で呟いてしまう。神社といえば神聖なイメージであり、思い(えが)いていた「呪われた土地」の想像とは真逆(まぎゃく)だった。

 鳥居を(くぐ)って進んでみると、自分の知っている神社の境内とは雰囲気が違う。何が違うのか、最初は具体的にわからなかったが……。


「ああ、わかった!」

 鬱蒼とした木々の間を歩くうちに理解する。

 下草の手入れなどが全くされておらず、参道まで雑草が伸び放題。歩きにくいことこの上ないほどだった。

 まるで参拝客が来るのを想定していないかのような神社だ。少し不思議だったけれど、その疑問はすぐに解消する。

 奥まで進んだところで見えてきたのは、いくつかの荒れ果てた建物だったのだ。


「……!」

 (なか)ば呆然と立ちすくむ。

 どうやらここは、打ち捨てられた廃神社らしい。

 もしかすると、元々は「呪われた土地」の呪いに――巣くっていた怪物に――対処するために、神様を祀っていたのではないだろうか。そして、その封印で神様が力尽きて、神社も廃れてしまった……。

 あるいは、呪いや怪物の力が大き過ぎて、神様の手に余るほどだったから、負けてしまって神社も潰れてしまった……?


 頭の中で、勝手にストーリーを構築する。

 その(かん)、そんな呪われた――怪物が巣くう――森の中で一人、しばらく立ち続けていたらどうなってしまうのか。

 自分の妄想に夢中になっていた子供には、そこまで考えが及ばず……。


 その日の夜は、体のあちこちに異変を感じて、よく眠れないほどだった。

 翌朝、寝ぼけ(まなこ)で鏡を覗けば、体中(からだじゅう)に虫刺されの(あと)


 あの森は、近辺で最も激しいくらいの、蚊の溜まり場だったのだ。




(「怪物が巣くうといわれる森の奥」完)

   

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ