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第五話『外の世界』

 「この場所は、ラスリー大陸の一部分にしか過ぎない。小さい島だが、外に出ても安全とは言えない。」


 クリムゾンは、俺に注意喚起を何度もしてくる。

 親バカとは、どの世界にも存在するんだろうか。


 「外には危険な魔物もいる。武器とか服装はそんなので大丈夫なのか?」


 あれや、これやとあたふたしてる。

 てか、武器も装備もこの洞窟内で用意できるわけないだろ。


 「大丈夫です。誰の子供だと思ってるんですか。」


 「誰の子かなんか知らんぞ。吾輩は。」


 それはそうです。

 でも、俺にとってはクリムゾン。あなたが、この世界の俺の父親なんだ。

 俺のことを捨てた父と母はいずれ探す。そんな捨てた人間にいくら本当の父親、母親と言われても……。

 俺の中では、このドラゴンが父さんなんだ。


 「まあ、とにかくあなたに育ててもらったんです。そこら辺にいる雑魚モンスターくらいなら討伐できますよ。」


 「本当に大丈夫か?」


 とても心配そうな面で、こっちを眺めている。

 偉大なる古龍とはかけ離れた姿だぞ。


 「大丈夫ですって。何なら今からここで魔法ぶっ放しましょうか?」


 と、冗談半分で構えると


 「やめとけやめとけ。ここが崩落してリハエルも吾輩も死んでしまうわ。」


 手を振りながら、若干焦っている。

 俺はともかく、洞窟の崩落くらいだと死なないでしょうに。


 「前にも言ったように、貴方をここから出すための旅でもあるんです。過保護はそこまでにして、外の世界に足を踏み入れますよ。」


 そういうと、クリムゾンはどこか少しだけだが、寂しそうにしているように見えた。

 それもそうだ。ここ数千年ほど、人間とのかかわりがなく暇をしていたんだ。そこで、俺が転生してきて暇つぶしの相手になったんだ。少しの期間とはいえ、楽しかったのかな。


 「うぅ。」


 すごい涙目でこっち見てる。

 うるうるさせている。こっちを見るな。なんか、罪悪感が迫ってくる。


 「じゃあ、行ってきます!」


 いつまでもここに居るわけにもいかない。

 女神様からの条件の達成もしなくてはいけない。

 封印の解除をしなくてはいけない。

 やることは多いが、外に行かないと達成できない。

 だから俺は、笑顔で……

 家族に見送ってもらうときのように笑顔で外の世界へ足を踏み入れる。



 重なる。


 過去の映像が。


 重なる。


 俺が家を出る前の光景。


 

 「行ってらっしゃい。いつでも帰って来なね。」


 「お前も大人になったんだなぁぁうおおおおお。」


 元の世界の母親は、心配そうな眼差しで見つめていたな。

 父親は、元気に泣きながら送り出してくれたっけ。

 最近、よく元の世界の光景が蘇る。

 もう、あの世界での俺は死んだ。もう帰れない。父にも母にも会えない。

 外に出ると同時に、過去の自分とはお別れをするんだ。

 そう、心に誓い外に出る。



 空気がおいしい。

 風が冷たい。

 草木の音が心地いい。

 新しい人生の、新しい土地での冒険が始まるんだ。


 「よし!行くか!」


 俺は、顔を上げて足を進める。


 気持ちのいい風だ。自然の空気がおいしい。

 目の前は大自然が広がって―――


 ――ぎゅるるる。


 目の前には、青色のぶよぶよしたものがたくさんいる。大自然ではない何かが広がっている。

 元の世界ではあり得ない生物だ。俗にいう魔物『スライム』というやつか。

 ゲームとかで見るのは可愛いのに、実物はちょっと気持ちが悪いな。トロトロしてて触るのもあまり嫌かもしれない。

 俺の旅の初戦闘だ。

 魔法を使う実戦は初めてだ。

 少し、わくわくしている。


 「汝、水の女神リヴァイアサンの名のもとに

 我に水の加護を貸したまえ。優しき心を糧に、その魂を解放せよ。

 無数に降り注ぐ雨の如く、天に恵まれた力を我に貸したまえ!」


 魔力量を調整。一番得意な水魔法を連想させる。

 スライムの数はおよそ10匹。それを、まとめて葬り去る必殺技。


 「雨の槍(レインランス)!!」


 ―――ザァアアアアアア!!!!


 水でできた鋭利な刃は、際限なく降り注ぐ雨の如くスライムを上空から貫いていく。目の前にいた、10匹以上の魔物は、一瞬、たったの1回の魔法で綺麗さっぱり塵となって消えた。


 「うん!いい感じ!かな。」

 

 初戦闘のリザルトは、無傷の殲滅。

 余裕の大勝利。


 と、余裕を見せているところにすかさず、新しい魔物が迫ってきた。

真っ黒なその生き物。見た目は可愛いウサギさんだ。瞳は赤く、鋭い牙で襲ってきている。しかも群れで。


 「この辺って、思っている数倍は魔物が多いんだな。こんな可愛い生き物もやらないといけないのか。」


 俺は、詠唱準備に入る。群れの数はさっきのスライムの倍以上。

 さっきの魔法でもいいが、別の魔法も試してみたい。

 これは、魔法生成ではない努力で手に入れた技。現存する魔法は魔法生成じゃなくても覚えられる。


 「じゃあ、さっきとは別の魔法を試させて貰うよ。」

 「汝、水の女神リヴァイアサンの名のもとに

 我に水の加護を貸したまえ。優しき心を糧に、その魂を解放せよ。

 龍をも退ける、大海原に流れる波に呑まれることなかれ!」


 クリムゾンが教えてくれた、水属性の中でも数名しか使えない上位魔法。


 「海に嘆く大波(ドラゴンウェーブ)


 魔力で作り出された水が、変幻自在の龍の姿へと変化していく。

 目の前の敵を、無差別に食い殺すが如く黒兎を飲み込んでいく。

 溺れて、沈んでいく。先ほどのスライムよりも多かったが、一瞬にして魔物が消えていくのがわかる。

 少し魔力量に無茶をしないといけないが、一斉に倒すにはこの技は一番効果的だ。


 「終わったかな。」


 辺りを見渡しても、魔物の気配は一切ないことが分かる。

 これは、クリムゾンに教えてもらった手法。魔力感知。自分の周りに魔力を漏らしている魔物がいればすぐに察知できる。


 「にしても、どこに向かえばいいんかね。まあ、村とか町を探すのがベターではあるか。」


 周りを見渡しても、広がるのは草原。

 少し離れたところには森林があるくらい。町や村どころか人の気配すらない。どうしたものかと項垂れていると――


 「誰だ!!」


 気配がした。というより視線を感じたんだ。

 少し離れた森林方面から感じた。殺気とは違う何かが。

 最初は気のせいかと思ったが、行く当てがない以上向かってみるのもありだと思った。


 森林方面に歩いていくと、看板がある。

 『静寂の森』と記載されている。文字に関しては、クリムゾンからあらかた教えてもらった。だから、多少の文字なら読める。


 「おんやぁ~?旅のお方ですかい?」


 背後から馬車に乗っていた男性が話しかけてくる。ふくよかな体系であり、茶色いひげがチャームポイントと言わんばかりに触っている。元の世界でいうと、詐欺師みたいな野郎だ。


 「あの……どなたですか?」


 俺は、当たり前のように話しかけてきた人が誰かわからなかったから尋ねた。


 「おっほっほっほ。私は、行商人をやらせていただいております。『セバス=ワタリ』と申します。」


 自己紹介をして、ウインクをしている。なんだこの人、怖いな。

 行商人ということは、商品を運んで依頼されたら売る。そういう人だ。アクセサリー、薬、食べ物などを売りに出していそうな見た目。


 「えっと……リハエルです。ここで、何か売りたいなら……別がいいですよ。生憎ですが、俺はいま無一文なので……。」


 「おっほっほっほ!私はただの通りすがりなのですよ!旅は初めてというより、この土地が初めてですね?」


 商人の目ってすごい物と聞くが、本当だったんだ。全部見透かされている感じがする。ちょっと怖い。


 「不安がいっぱいでしょう。私はこの先の『ナナシ村』に向かっている最中なのです。静寂の森は魔物も多いです。どうでしょう!私と一緒に商売しに!!」


 勢いよく、指を立てながら自信満々に誘ってくる。ぐいぐい迫ってくる。村に行く予定があるらしい。


 「いえ、俺は商売なんかには興味が……。」


 「あれまぁ、それは残念ですねぇ。では、お近づきの印でこちらを。」


 おもむろに、小瓶を見せびらかしてくる。何かの液体が入った代物だ。


 「これは……?」


 「これは『奴隷薬』というやつです。」


 とんでもない名前の薬を手渡されました。物騒です。


 「何に使うんですかこんなもの。」


 単純な疑問だ。奴隷だなんて言葉、本来なら聞くこともないし、現代の日本ではあり得ない。でも、この世界では普通というのはクリムゾンからは聞いていた。

 それを今実感した。


 「これは、飲ませた生物を奴隷化するんです。この薬にご自身の血を混ぜることで、(あるじ)がその人という情報が刻まれる。それを飲ませることで、その飲ませた生物を逆らえない道具にするのです!素晴らしい!」


 すごい饒舌に話をしているが、本物なのかも怪しい。

 こんなにも怖い薬が存在することも。


 「ということで、代金は要りません。貴方様にプレゼントです。見返りはまた会ったときにでも。おっほっほっほ!さあ、向かいましょう!」


 半ば無理やり『奴隷薬』と呼ばれるそれを持たされて、商人は馬車に帰った。

 俺を置いて、森林へと潜って行った。


 俺はしばらく呆気にとられたが、そろそろ森林方面に同じく用事があるので、視線を感じたその『静寂の森』へと足を運んだ。

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