第三話『魔法生成』
一年の月日が経った。
俺は、名前をもらってから一年間は水属性魔法を完璧なものに仕上げるために訓練した。
「リハエル~。そろそろ、お前のスキルについて教えてくれよ~。」
こんな狭苦しい洞窟の最奥部で、まるでニートのような生活を送っている男のように寝転がっている。これが所謂ダメ親父というやつか。
ちなみに、食べ物に関しては、クリムゾンがとってきてくれる魔物を焼いたりして食べている。まともな食事ではないが、腹持ちがとてもいい。
「俺のスキル?ですか?」
「そうそう、吾輩はこんなにも渾身的に教えているのに、リハエルのスキルを教えてくれよ~。秘密にしているんだろ~?」
2度試したことがあった。だが、今はまだ使い物にならないと考え封印していたんだ。
「そういえば、ありましたね。」
俺の固有スキルとは別にもらったスキル。
『魔法生成』と名付けている。このスキルは、言ってしまえばチート級になり得るスキル。現存する魔法はもちろん、存在しない魔法を作って使うことができる。
現存する魔法は、お手本があるため訓練次第ではすぐに生成が可能。ただし、存在しない魔法は、明確なイメージが必要。
例えば、人形を操る魔法が欲しい。となった場合には、どの程度の魔力が必要なのか、どのくらいのサイズの人形を操るのか、どう命令させて自動で動かすのかなど。
3歳の時に、1つすでにスキルを作っていた。
それが1年前に極めた水魔法『水流の槍』だ。
だが、1つ生成したらしばらく生成ができなかった。存在しない魔法は、俺のイメージが上手くできなかったのかわからなかった。でも、現存する魔法はどう頑張ってもできなかった。
1年後、またもう一回行ってみた。
『身体透過』という魔法を生成した。これは、自分自身を透明化するわけではない。イメージしたのは、医者ならよく知っているX線をイメージした。
瞳に魔力を集中させて、見た相手の筋肉構造や骨、血流などを見通すことができる。
「へぇ~?まるでチーターだな。そんな能力まで宿しているとか、神様の子供か?」
不思議そうに首を傾げながら、俺の事を見つめる。
まあ、確かに俺のこの力は女神から与えてもらったわけだから、ある意味神様の子供みたいなものではあるか。
「さあ?神様の子なのかもしれないですね。」
そういえば、6歳になってからは魔法生成していなかった。
なにかイメージできれば、作った方がいいか。魔力の量も成長につれて増えているのだとしたら少し大きめのもいけるのか。そう考えていた。
「やってみてくれよ~。大人になる魔法とか!楽しそうだ!」
愉快に、簡単に魔法を作れと言わんばかりに見つめてくる。
でも、大人になる魔法。これに関してはイメージもしやすくて生成はしやすい。
大人の姿なら便利なこともある。
「わかった、大人になる魔法を作ってみる。」
このスキルには特段詠唱とかも必要ない。頭の中で想像し、強くイメージして魔力を流し込むだけでいい。簡単なことだ。
数年後の自分をまずはイメージする。今が6歳だから、14年後の成人した姿を想像しよう。20歳の自分を想像する。髪の長さ、筋肉量、骨格、身長、声帯。元の世界にいた自分と重ね合わせてみる。医者として働いていたからか尚更イメージしやすい。
髪の長さは、長すぎず短すぎず。横と後ろの髪の毛を少しはねさせる。
今の髪型よりは長めがいい。都合上、成長前との差はあった方がいい。
筋肉量は普通程度。身長は175㎝。声は、高すぎない程でいい。
うん、イメージができたら次のステップ。
魔力量はどのくらい必要なのか。
これは、数値にしたら簡単だろう。MAX値が100としたら、14年分の成長には半分も必要ないくらいの魔力量、30程度、3割ほどで足りそう。
今度は、3割程度の魔力を『魔法生成』に流し込む。
リハエルの身体が光を帯び始めた。
その様子をクリムゾンは目を丸くしながら不思議そうに眺める。
身体に不思議な力が湧いてくる。徐々に身体が大きくなるのを感じる。とても不思議な感覚だ。すごい速度で骨格、筋肉量、身長が変化する。
完成した。
「おぉ~。誰だお前。」
クリムゾンが目を丸くして、俺を見つめていた。
俺も自分の身体を見て少しは驚く。
「すげぇ!一気に大人になった気分だ!」
声も姿もまるで別人だが、間違いなく面影はある。変身とは違うが似ている。
だけれど、魔力量も、単純な力も6歳時点のものである。増えたりはしない。
「あ!」
ハッとしたように声を上げる。
どうしたんだ?という顔でこちらを見つめるクリムゾン。
「名前を決めよう。この魔法の!」
「良いじゃないか!!」
名前を決めることに関しては、とても乗り気なんだこのドラゴン。
だが、このスキルの使用上名前を付けなくてはいけないのは確か。
『水流の槍』も使用するときには名前を付けた。
「成長、育つ……大きくなる……変化……。」
「成長期というのはどうだ!!」
クリムゾンが大きな声で言った。
他にも考えてみたが、しっくりくるのはそれだけだったのでそれに決めた。
「魔法生成完了。スキル名:成長期で登録。」
リハエル=クリムゾン。
スキル:成長期を会得いたしました。
効果:自身の姿を20歳の姿として強制的に成長させる魔法。
いつもこうだ。
魔法生成を行うと、よくわからん表示が自分の瞳に写る。
ドラゴン、クリムゾンの瞳には映っていないらしい。
これでまた、1年後に魔法を作らないといけない。
いや、無理に作る必要はないが、現存魔法は自力で覚えればいいが、存在しない魔法は努力でどうとなる話じゃないので作る必要がある。明確なイメージが必須だが、1年に1個と考えるならもったいない使い方をしたくない。
さらに、際限がないなら生み出し続ければ、最強の人間になれるんじゃないかとも考えられる。まるでチーターだ。
これより先、成長した姿での魔法訓練も念のため行おうと思う。
そして、もう少ししたら決断しなくてはいけない。この洞窟から出て、外の世界へ出る決意をするんだ。ずっとここに居ても条件を満たせない。
俺は、女神シハイに誓ってしまったんだ。
ーーーーーー
これは、あの真っ白な空間で行われた転生する直前に行われた話。
『では、妾への質問はもう無いかの?』
『あぁ、条件は理解した。質問ももうない。』
俺は冷たく、女神という女性をあしらった。
『なんか、冷めておらぬか~?』
女神はじとーっとした瞳でこちらを見つめる。
相変わらず掴みどころのない女神様だ。
『冷めてはない。話は長い!』
ぷくーっと頬を膨らませる彼女は、はいはいと言った感じで転生の準備に取り掛かった。
『では、転生の儀式を開始する。二度目の人生を存分に楽しむがよいぞ。』
『あぁ、条件を満たして、俺は新しい世界で最強になってやるさ。』
ちょっと恥ずかしいが、ドヤっとした感じで女神にその言葉を叩きつけてやった。
『楽しみにしておるぞ。――――。』
俺の耳にはよく聞こえなかったが……
最後に女神は、元居た世界の俺の名前を告げたように聞こえた。
今はもう無き、俺の本名を。
そして、新たな世界へと足を踏み入れたんだ。




