表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

第一話『ドラゴンと赤ん坊』

 目が覚めると、薄暗い洞窟で寝転がっている。

 ――ん?立ち上がれない。

 

 当たり前だった。

 だって今の俺は胎児だもん。生後一ヶ月くらいか。俺のこの世界の父親は目の前にいるのか。


 再び、目を開ける。いるじゃん。目の前に。


 でっかいドラゴンが。


 …………。


 「ぎゃああああああ!!!!」


 俺の目の前には、深紅の鱗を身にまとった龍がいた。二足歩行の爪も鋭く牙も鋭い。人の何倍もあるその身体は完全に普通ではない異質な生物。そんな怪物が目の前にいた。


 なんじゃこいつ!?

 でっかいドラゴン?!

 え?食べられるのか?!転生してすぐ死ぬのか?!あのくそ女神!!なんてとこに転生させてんだ?!


 てか……なんでこんな薄暗くて寒い空間に……母さん、父さん。どこに……?


 「ん?目が覚めたのか。急に泣きやがって。」


 え。喋ったのか。このドラゴン。

 喋った。とは少し表現が違う。口は開けているが、頭の中に聞こえてくるような不思議な感覚。


 「ん?なんだ?呆けたガキだな。」


 誰がガキだ!!この化け物!!


 「ワシは化け物ではない、ドラゴンだ!!」


 え?

 心の中でそう叫んだのは事実だ。でも、この現象は、あの時の――

 そう、女神シハイと全く同じようなことをこのドラゴンが行っている。


 なぜ、俺の声が届いて、理解をしているんだ。

 

 「なんだ?!このガキ、吾輩と言葉を交わしておるぞ!?こっわ!!!!」


 あたふたしている。でっかいドラゴンが。神話とか漫画とかでよく聞いたようなドラゴン像からは程遠い存在だな。まるで人間だ。

 怖いと思っていたのに、なんかかわいくすら思えてきた。愛くるしい生き物なのかこの世界のドラゴンは。


 「この吾輩が、愛くるしいだと?怖くはないのか?」


 不思議そうにその大きな身体を寄せて来る。

 息がまるで突風並みだ。

 吹き飛ぶぞ赤ん坊が。


 そして、怖いだ?最初は喰われてまた死ぬんだとも思ったさ。でも、あんな姿を見たら怖いなんて感情はどっか消えたよ。このすごく静かな洞窟の奥底まで吹き飛んだよ。


 「お前、ただのガキじゃないだろ?吾輩にはわかるぞ。その力。その魔力量。普通の胎児よりも多すぎてあふれ出ておる。なんせ、この吾輩と念話もできている。気持ち悪い。」


 このドラゴンの言う通りだ。俺は普通ではないんだ。魔力量に関してはよくわからんが、女神の差し金だろ。「いえーい」とピースしてるのが目に浮かぶ。

 最後の気持ち悪いはいるのか?いらないだろ。言いすぎだ。

 俺は、しばらくいろいろなことを考えている。この世界の事や、この場所について、そして家族の事。

 

 「お前、そんな考え事して楽しいのか?人間の赤ん坊はもっとこう、母親の乳を吸ってキャッキャッしているようなものだろ?」


 考え事をしているのはあんたのせいでもあるぞ。でも、普通ならそうなんだろう。母親も父親もいない。この状況から察するに ”捨てられた” んだと思う。


 「ぶー。」


 咄嗟に声を出してみようとしたが、歯も生え切ってないからか言葉も発せられない。赤子だから。どうするべきなのか、それは明白だ。


 俺に、この世界と魔力について教えてほしい。

 それが答えなんだ。


 「お前、本当に赤ん坊か?」


 まあ、見てくれは赤ん坊だが、頭の中や心は元々は人の子であり大人だ。転生者なのだ。


 「ぷっ。」

 「がーっはっはっはっはっは!!!お前のようなちんちくりんに吾輩が世界について、魔力について教えてほしいというのか!!このドラゴンの吾輩に!!」


 愉快そうに天を仰いで大爆笑ときた。でも、きっと彼は――


 「いいだろう。こんな面白いガキンチョを育ててやるよ。この ”伝説” のドラゴンが。」


 偉そうに近づいてくる。

 自分で ”伝説” とかつけちゃって傲慢か?恥ずかしくないんか?


 「うるさいわ!!」


 少し、目の前のドラゴンが赤らめているのがわかる。かわいいかよ。


 「では、この世界についてから教えてやろう。この世界は5つの大きな大陸に分けられている。東に位置する『ドーワン大陸』。西に位置する『ヘルツ―大陸』。南に位置する『ラスリー大陸』。北に位置する『フォーレイ大陸』。そして、中央に位置する『ゼロ』と呼ばれている大陸。まあ、この洞窟は、『ラスリー大陸』の土地の一部分の小さい島に位置する。」


 5大陸についての詳細は聞かされた。そして、この場所が南の方角に位置するということが分かった。

 わかったからなんだって話なんですけどね。


 「さっき伝えた通り、お前の魔力量はあり得ないくらいある。てか溢れてる。その生後の身体でそんだけの魔力量だ。末恐ろしいガキだ。」


 「そして、魔力というのは人間や魔物、吾輩のようなドラゴンにも流れている物。血が流れているのと一緒だな。それが大きすぎて溢れているんだ。魔力を自在に操れれば魔法も使える。この世の中は魔法が使えない奴の方が少ない。」


 それから目の前の怪物、ドラゴンは面白い話を淡々と繰り広げていた。特に面白いと感じたのはやはり ”魔法” の話、そして ”歴史” の話だ。

 話を聞くと、いくつかの基本的なことがわかった。


 1.魔法は魔力に比例して扱える。そして、属性は6つも存在する。


 ・水属性:液体を操る魔法を扱える。

 ・火属性:炎や温度を操る魔法を扱える。

 ・地属性:土や草木を操る魔法を扱える。

 ・風属性:空気中の大気を操る魔法を扱える。


 基本の魔法についてはこの4属性が主流であり、原点らしい。よくある話だ。

 この4つ以外にも、『光属性』と『闇属性』の希少属性と呼ばれる2属性が存在している。

 話を聞いているうちにわかったのは、生物に通う魔力の適正属性は生まれてすぐに決まるということと、俺には例外が起こっていることに。

 

 この例外というのは、自分自身の身体の体質によるものだ。というか、選んだスキルのせい。

 転生する際に、女神シハイから選ばせてもらった3つの中の1つ。『全能力者』という固有パッシブスキルが影響している。すべての属性に適性があるというチート性能ということになる。


 2.魔法を扱うには2種類の方法がある。


 ・体内にある魔力を利用する方法

 ・魔力が込められた物を媒介にする方法


 よくあるのは、自分の体内に存在する魔力を放出する方法。もう1つの方法は、魔力が一切使えない人や魔法が上手く扱えない体質の人用に作られた道具を利用する方法。


 3.魔法の発動条件にはいくつかある。


 ・詠唱魔法

 ・魔法陣を用いる方法

 ・道具を使う方法


 口で言葉を発して魔法を発動させるか、紙に魔法陣を描いて発動させるか、指輪などのアクセサリーに刻まれた魔法を強制的に魔法を発動させるか。この3つだ。


 4.『ナンバーズ戦役』について


 5大陸全土で始まってしまった大きな戦争の話。魔術師、戦士、剣士、召喚士などと言った人や魔物、種族の違う者たちのデカい戦争の話だ。


 個人的に興味を持ったのはこの4つだった。


 「吾輩、人間と話したの数百年ぶりで楽しくなっちゃった。てへっ。」

 

 別にかわいくはない。だって人を殺せるデカいドラゴンだもん。

 でも、感謝はしている。この世界の事や魔法の事が知れたのはデカい。俺の2つ目のスキルには魔法が魔力が不可欠だからだ。


 「お前、魔法を使ってみたいのか?」


 うん!

 魔法を使ってみたい!

 どうやって扱うのか、どうやって放出するのか興味がある。ぜひ教えてほしい。

 この先を、生き抜いて、女神からの条件を達成させるために。


 俺はまだ気が付いていなかったんだ。女神の提示した条件は、それに当てはまる ”悪” って一体何者なのか。どんな目的を持っているのか。全く分かっていないんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ