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第十三話『それぞれの訓練と成果』

 村長から出された試練。

 祠での出来事から三ヶ月の月日が流れた。

 祠に眠っていたのは、ある巻物だったのだが……

 その巻物に記されていたのは『古代の文献』だとか。

 古代文字だらけ、三カ月の月日を使って読み解いたが祠の歴史やらなんやらで

 俺には、さっぱりな文献だった。

 歴史には興味があるし、古代文明とか人類にとっての宝でもある。

 それに、古代の医療技術なんて宝庫じゃないか。

 巻物にあった気になる文面と言えば『黒の宝珠』『活性の瘴気』『悪魔召喚』この三つだが、

 この上ないくらいに物騒な文献ではあった。

 これを記したものは、何を伝えたかったのかわからない。

 現状、俺たちにできることは鍛錬だけだったので、三カ月間はシャチとフィストの戦闘訓練と魔力操作などの上達に俺がなぜか先生をしている。


 「シャチ、魔力操作がまだ少し甘いですよ。」

 「うぅ……風のコントロールがいまいちわからなくて……。」


 シャチは、得意属性の風魔法を鍛えるために魔力の精密コントロールや魔力維持の特訓を頑張っている。

 特に、魔力の精密コントロールは最初のうちは魔力の消費が激しく感じることが多い。

 俺も、この訓練には苦難を強いられた。


 「そうだ、両手に風を集める意識を忘れずに……均等な風のボールを作るイメージ。それを数分間維持し続ける。感覚でできるようになれば次のステップだぞ。」

 「うぅ、これ疲れるぅ……。」


 シャチは努力家だ。

 言われたことを、素直にこなそうとしてくれている。

 

 「先生!この訓練、意味あるのか?」

 「あぁ。フィストはフィジカルと敏捷性を生かした機敏な動きからの攻撃。それの特訓だ。」


 フィストには、持ち前の攻撃力を生かした動き方を教えている。

 先の戦闘で、シャチとの対峙の際には冷静さにかけている部分や、力の発散するタイミングのずれが大きいことを考慮しての訓練。

 彼の動きは、少し無駄が多い。

 例えるなら、一直線の線の動き方をしている。

 せっかくのスピードと器用な部分が行かせてない。

 だから、それをもう少し柔軟にしてあげればいいのだ。

 瞬発力を鍛える訓練方法と、力の発散ポイントを教え込んでいる。

 ここは森の中だから、木々が多い。たくさんの壁があることを意識し、こういった地形に強くなるのが瞬発力向上の近道だ。


 「俺に攻撃を当ててみてください。ただし、この地形を利用してくださいね。単なる一直線の攻撃ならスキルなんか使わなくても予測できます。その予測を超える速さと頭の回転を見せてください。」

 「周りの地形を……。」


 フィストは、自身の気力を足に集中させる。

 点々とした木々を見つめながら、勢いよく次の木へ、また次の木へと移動し続ける。

 木と木を線でつなぐように動く。

 

 まだ、目の前の木の方に意識が行き過ぎているな。

 

 「フィスト!目の前の木にだけ集中していてもダメですよ!」

 「……!!」

 「敵に目を向け続けるんです。視線を逸らした瞬間に殺されますよ。」

 「(そうだ……俺はまだビビってる。敵の位置を見ながら動く……。)」

 「……っ!!」

 「ほら、今余所見しましたね?」


 ―――ドカッ!!


 俺は、一瞬の隙を見逃さずに蹴りを入れた。

 目を離せば、敵からしたら動きたい放題のチャンス。

 絶好の的がいるのに反撃しないのは、なんか違うじゃんか。


 「いってぇ……反撃なんてありなのかよ……。」

 「誰が、反撃しませんって言いましたか?」


 笑顔でそう言ってやった。

 それはもう煽るように、超満面の笑みを見せてあげた。

 これは、バカにしているわけじゃない。

 向上心を上げるためだ。

 悔しがれば、鍛錬を続けてくれるだろう。


 「そんなに煽らなくてもぉ……(泣)」

 「あぁ……!!いやいや!!そんな泣かせるつもりは!!」


 べっ。


 ―――?!


 フィストの勢いのいい拳が頬をかすめる。


 「へっ。まだまだ甘いんじゃないのか?リハエル()()。」

 「やるじゃん。」


 敵を騙すとかいう、とても卑怯なやり方ではあるが戦場ではそんな卑怯が飛び交う世界。

 一本取られた。

 彼なりの秘策ってやつなのかもしれない。


 「当てたぜ!!」

 「いいだまし討ちだけど、この地形を利用してくださいって言ったよね?」


 俺は、にんまりとしながらそう告げて、瞬発力の特訓を続けさせた。

 俺もとても負けず嫌いである。少し意地悪だったかもしれないが、ちょうどいいだろう。

 シャチも、フィストも……どんどん成長していく。

 俺も、そろそろ負けないように成長しないとな。

 

 俺はそう思いながら、右手でバリバリと鳴らしながら、

 ある属性の構築に勤しんでいた。

 

 

ーーーーー


 

 さらに、数週間が経過した。

 

 あれから特訓の内容は変わっていないものの、

 シャチの魔力維持と魔力コントロールは当初よりも精密になっており見違えるほどの強くなっている。

 フィストも、機敏さを生かした攻撃の精度アップと単純な力の底上げがほとんど完了済み。

 そろそろ、次のステップに踏み出してもいい頃合いだろう。


 「シャチ、フィスト。今から今回の特訓の成果を見せてもらいます。」

 「……!」

 「やっとか!」


 シャチは、え?!もう?!って顔をしている。

 フィストは、目をキラキラさせながら近づいてくる。


 「じゃあ、まずは……フィスト。君から見せてもらってもいいですか?特訓の成果。」

 「……!!あぁ!!なにすればいい!?」

 「俺に、攻撃を当てるだけでいい。」

 「え?それって前と同じか?」

 「あぁ。ただし、俺も手を抜かない。全力で行くぞ。」


 全力で行く。

 これは、俺の特訓の成果も確認するためのテスト。

 未来視(ビジョン)をさらに強化させるために一週間以上維持し続けた。

 

 「合格したら、次のステップと……うまい飯ですね。」

 「よし、来た!!行くぞぉぉ!!」


 若干の土ぼこりが舞う。

 足に気を溜めているだけで、すごい圧力を感じる。

 瞬間に、目の前からフィストが消える。

 正確には、飛び跳ねたの方が正しい。木々を素早く駆け回っている。

 まるで、ここは俺の庭だと言わんばかりに地形を生かしている。申し分ない。

 

 「(先生は、俺の次の手まで見えているはずだ。何秒先まで見えているかわからない。予測のさらに先を進むスピードを……思考を……。)」

 「(いいね。きっと君は、俺が予測しているのを読んでむやみに突っ込んでこない。そして、ちゃんと目を離さないのもいい。)」

 「(う~ん。限界は4秒先までは見えるかな。2倍か~。)」


 お互いに次の一手を待つ。

 フィストは、俺に届かせるための一手を考え、

 俺自身は、未来視(ビジョン)で見えるところまで見てのカウンター待ち。


 「(来るか……!)」


 最初に動いたのは、フィストの拳だ。

 やけくそか、耐えられなくなったのか、ただ一点だけを狙って突っ込んでくる。


 ―――?!


 「なぁ、先生。これは卑怯か?いや、戦場で卑怯なんて言葉は通用しないってか?!」


 フィストが狙っていたのは地面だった。

 やわらかい土と、砂埃が出るほどの量の砂。

 フィストは、俺に向かって砂を目にかけてきた。

 まあ、汚いやり方と言われても仕方がないだろう。

 でも、いい思考だ。


 「さすが、フィスト。これはいいやり方です。」

 「だろ?目が見えないとどうよ!!どっから攻撃が来るかわからないだろ!!」


 すぐに攻撃に転じないのか、フィストは再度その場を離れて木々を移動している。

 目が見えない内に、攻撃してくるかと思ったが……

 いい判断をするようになったんだ。

 少し感心しちゃうと同時に、自分を超えようとしている寂しさも来てる。


 「迂闊に突っ込んでこなかったのは偉いですね。でも、目は回復しちゃいますよ。」

 「あぁ。どうせ、織り込み済みだろ!だったらそれ超えなきゃ意味ねぇだろ!先生!!」


 ―――ドガァ!!!


 驚いた。咄嗟の攻撃と行動には追い付かない。

 未来視(ビジョン)の弱点。フィストは気づいていたのかたまたまなのかわからない。

 目で捉えているものじゃないと、このスキルは発動しないしラグも生じる。

 土の中から飛び出すなんて考えはなかった。


 「これは、見事です。」

 「でりゃああああああ!!!!」


 顔面にフィストの拳が届く。痛い。

 いい一撃だった。

 思いもよらぬ死角からの攻撃。いい判断だ。

 もし、あの時に突っ込んで来たら、俺の探知に引っかかってカウンターを与えるつもりだった。ちゃんと考えて行動している。いい生徒だ。


 「いてて……。」

 「ご、ごめん。ちょっと力入りすぎた。」

 「謝る必要はありませんよ。次のステップですね。」

 「よっしゃ!!!」


 フィストは喜んでいる。

 これまでにないくらいに。

 さて、次は……彼女の番だ。


 「準備はいいですか?」

 「う、うん……自信ないけど……。」

 「大丈夫です。では、内容は……あそこにある二本の木を()()に倒してください。」

 「……。」


 少し不安そうな表情を浮かべている。

 自信がなさそうだが、大丈夫だろうか。


 「じゃあ、行くね。」

 「汝、風の女神アイオロスの名のもとに

 我に風の加護を貸したまえ。自然の力を糧に、その魂を解放せよ。

 自然のエネルギーを二つの力に分けよ。」


 ゆっくりと、風が左右の手を覆いつくしていく。速い。

 すごい速度で、風のボールが完成されていく。

 

 「(なんて、魔力量だ。俺が初めて水魔法を作った時よりあるぞ……。)」


 精密さ、魔力維持。共に申し分ない。もう合格でもいいくらいだ。

 

 「風の双玉(ダブルウイング)……!!」


 シャチの両の手に固めた風の玉が、同時に発射されるが――


 「「(遅っ!!)」」


 心の中で、リハエルとフィストが呟く。

 だが、その心で思ったこととのギャップを見せる。

 本来の威力。それは、目を丸くするほどに……凄まじかったんだ。


 ―――ゴゴゴゴゴゴゴーーーーン!!!!!


 風の玉が、目標の木に接触した瞬間に爆音と共に勢いよく辺りを吹き飛ばした。

 二本同時のはずが、周りの木も巻き込んで何本か吹き飛んだ。

 派手な必殺技だ。

 その速度は、微妙だが威力は当たれば怪我じゃすまないかもしれない。


 「リハエル……!!」

 

 すっごい目をキラキラさせてる。

 

 「文句なしの合格ですね。流石ですよ。」


 俺は、驚きが隠せないままシャチを誉め撫でた。

 とてもうれしそうにしている。

 それにしても、とんでもない力だ半径二メートル弱吹き飛んだ。

 末恐ろしい。

 絶対に怒らせないようにしよう、そうしよう。


 「二人とも、次のステップに行こうか。」


 俺はそう言い、シャチとフィストと共に村の方へと戻る。

 この後に、俺たちを村で待っていたのは宴やパーティーではない。

 ある ”来客” だったのは、このすぐ後だ。

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