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僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~  作者: 破れ綴じ
交易都市シズィ 及び周辺地域

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第十七回勇者会議

 な、長かったぁ……。

 でも──やっと……やっと着きました! 

 ソワン国の首都サンクよりも一回りや二回り大きい……現代でも有数の大都市。


 交易都市シズィ! 


「……お、大きすぎない!? さっきの門だけでも横に数十メートルはあったよ?」


『田舎育ちが全面に出ちゃってるよエスクリ』


「だって、街の名前は聞いたことあったけど、ここまで大きい街来たこと無かったし……」


「ぼくは引きこもってたし名前も知らなかったなぁ。なんだかドキドキするね……!」


『前世を忘れている……?』


 あはは……。

 ま、まぁ。初めて来た人は流石にびっくりしますよね。


「ここは『交易都市シズィ』ですから。世界中の物流が集まる拠点ですよ」


 大量の馬車が行き来するから門はとにかく大きくなるし、運ばれてきた荷物を受け入れる施設も街の入り口に集中してるから……第一印象でとにかくインパクトがあります。

 飛び交う声は色々な言語が混ざってますし、異国風のスパイスや香辛料の香りが鼻をくすぐるので、これまでにない新鮮な印象を受けるのも仕方ないというか。

 だから、来て早々キョロキョロあたりを見渡すのも、初めて都会に来た子供みたいになるのも不思議じゃありません。


「ヴィクトールさんはあんまり驚かないんですね?」


「ん? ああ、まあな。俺も名前は知ってるし、一度は行こうと思ったこともあるから」


「へぇ……! そうだったんですね」


 まぁ、この街を拠点にする旅人が多いとは聞いていますし、確かに納得です。

 僕もソワンにいたときは要人として何度か訪れることもあったんですよ。ふふん。

 なんでも、数代前の都市長が運送業で成功して、海の近くにこの拠点を築いたのが始まりだとか。以来、代々優秀な後継者が続き、『シズィ商会』として街全体を構成しているのがこの街です。


 現都市長の娘『ディアマ』に関しては……変人だけど商才はあるとかなんとか。

 奇抜な格好をしたり、突拍子もない言動で周囲を振り回して……でも、その予測不能な行動が商売にはプラスに働いているらしいですが。


「最近では『金髪の戦乙女』という凄腕の傭兵が魔物討伐を行っているそうですよ。人間離れした身体能力で魔物をなぎ倒すとか」


「金髪か。目立ちそうだな」


「傭兵! ボクたち以外にもそんなことしてる人がいるんだね!」


「凄い人なんだね……まぁでもヴィクくん相手ならぼくの方が役に立つから……」


『マージュは何の話をしているの?』


 賑やかですねぇ……。


 僕も会ったことはありませんが……名前の通りの長い金髪を振り乱し、大きな鎧に身を包んでいるので、遠目でもすぐ分かるそうです。

 基本的に鎧を脱がないそうなので、彼女の日常的な姿を知る人はいないとの噂ですが……。 


 ……あっ。

 とかなんとか考えてたら、目当ての宿が見えてきましたね。

 商人向けの大きな宿で、警備もしっかりしていることは確認済み。ちょっと値が張りますが……ボスを倒して回るヴィクトールさんたちの資金力だと、まぁ問題のないレベル。

 部屋も四人分、きっちり取れるでしょう。




「今日は移動で疲れたし、無理せず早めに休もう。明日は対ボスの活動開始だ」


「了解! ボクに任せてよ!」


「分かったよ、ヴィクくん。ぼく、頑張るからね!」


 なんだか……ちょっと変な状況ですね。

 本来は元勇者シエルである僕たちが世界平和に向けて、先導して方針決めをしたり、今日の進行を決定したり、次の日の予定を立てたりするのに。

 このパーティーは「勇者シエルが多すぎること」と、「最終的な目的が同じこと」から──完全にヴィクトールさんがリーダーになっているような……。


 まぁ僕もこの現状に異論はありませんし、彼がリーダーであることに文句もないので別にいいんですが。


「特に、言語を解するような知能の高い個体は強いかもしれない。心してかかろう」


「……!」


 ……言語を解する個体。

 パル……蛇のボスのことですよね。彼はその特性上、人に化けられるので言語を解することが大きな利点になっていましたが……。

 エペのあの話を聞いた今だと、「言語を解する上級のボス」という事実は……それこそ「魔王復活」に関係のある個体という意味なのかもしれません。

 だから、次なる敵に対して最大限の警戒をしているんでしょうか。


「じゃあ、今日は部屋を取って解散だ。ゆっくり休むぞ」


 ……この人は、僕たちが「魔王復活の情報を知っていること」を知らない。

 でも、自分だけは、その対処はしないといけないと思っている。

 だから、僕たちに対してはできるだけ気丈に振舞いつつ……旅の合間でも、休んでいる最中でも、街に滞在している間でも、少し焦っているような様子を見せている。

 それこそ、ソワンにいた僕みたいに。


 それがなんとも……もどかしい。






 *






「──ということで……第十七回、勇者会議を始めるよ!」


 で、その解決策が……これですか。


 夜の宿の一室。ロウソクの灯りだけが揺れる薄暗い部屋。

 本来なら、旅の疲れを癒すためにぐっすり眠る準備をする……そんな時間のはずです。

 それなのに、なんで僕はこんなところにいるんでしょう。いや理解はしてるんですけど。


「どうして毎回こんな風にやるんですか……?」


『仕方ないじゃないか。彼が起きてる間は話せないんだから』


「何故だか知らないけどヴィクは暗くなる前に寝ちゃうからね、時間があるんだよ」


「な、なんでだろうね~、あはは……」


 目の前には、エスクリとマージュ。そして、エスクリの背中には聖剣エペ。

 ヴィクトールさんが就寝した後、定期的に開かれる「勇者だけの秘密会議」。

 あの人には聞かせられない情報を、こうしてこっそり共有し合っていただなんて。

 初めに巻き込まれたときは正直驚きと呆れが半々でしたよ。もう慣れつつありますが……。


 昼間は「ただの仲間」を演じ、夜になるとこうして「勇者シエル」として集まる。

 まるで秘密結社みたいです。いや、実際そうなんですけど。変に気まずくないですか? 

 しかもこの二人の惚気でほぼ全部使い切った会も少なくないですからね? 

 僕? いや僕はそんな真似してませんけど……。


 とはいえ。

 今日の議題は……分かっています。


『さて、時間がないし──今後の具体的な方針について、早速始めようか』


 今後の対応、それも「魔王復活の予言」を踏まえたもの……ですよね。


 こうしてエペが進行役を務めるのも、いつものこと。

 彼は唯一ヴィクトールさんと会話できる立場にないし、そのせいか数少ない「状況を俯瞰的に見て突っ込みを入れられる人材」なんですよね。

 人材かな。剣材じゃないかな。


『ヴィクは「魔王復活の予言」を自分だけが知っていると思い込んでいる……当然、シエルに憧れる彼に対し、剣である僕が盗み聞きしたとは口が裂けても言えない』


「……まぁ、そうですね」


 そしてあの日、その……プレヴィとかいう人の小屋で。ヴィクトールさんが一人で話を聞いていた時、エペはずっと背負われていたんですから。彼が内容を知っているのは当然です。

 でも、それをヴィクトールさんに伝えることはできません。


「ヴィクは、エペが喋れることも、意思があることも知らないからね」


「ましてや、ぼくたちがそれを共有しているなんて夢にも思ってないだろうし……」


 もし知られたら……大変なことになりますよ。

 彼が勇者シエル……つまり僕に憧れているのも、十分承知です。エペから聞きましたし。

 そんなヴィクトールさんに対して……「喋る剣」なんてただでさえ怪しいものが「勇者シエルの生まれ変わり」だなんて知ったら……彼の世界観が崩壊しかねません。

 彼は純粋に「勇者シエル」に憧れているんですから、今ここで不安定な状態になられると誰も得をしない。


「もしぼくたちが知ってるって言ったら、『どこで聞いた?』ってなっちゃうしね」


「そしたらエペだけじゃなく、僕たちまでシエルの生まれ変わりだとバレてしまう……」


「だから、ボクたちはヴィクの前で『何も知らないフリ』を貫きつつ……彼を支えるんだ」


 なんて力強く宣言なんでしょう。その瞳には、揺るぎない決意が宿って……。

 ……健気というか、なんというか。


 もし彼が「僕たちの正体」を知ったとしても。今後の活動方針が一切変わらない、僕たちに対する対応も一切変わらない……そんな確証があるなら喋ってしまっても大丈夫なんですけども。

 あの人の本心が確定しない以上、「貴方の憧れの人は可愛い女の子と小さな男の子になってます!」なんて相当ショックでしょうし、僕たちへの態度も露骨に変わる恐れがありますからね。

 しかもうち一人──つまり僕は「貴方の弱点、先端恐怖症も知ってます!」ってなりますし。憧れの人に弱点バレだなんて、向こうからしたら恥ずかしいというか居た堪れないというか。


「結論としては……ヴィクトールさんに秘密を悟られないため、全員で『知らないフリ』を貫く。ただヴィクトールさんが動きやすいよう、あの人の方針に従っている体裁で支える……ということでいいですね?」


「うん、異議なし!」


「ぼくも賛成」


『僕もだよ。まぁ僕は彼に何かする立場じゃないけどさ』


 よし。

 とりあえず、今後の大まかな方針と口裏合わせの方向性さえあれば大丈夫でしょう。

 そうすれば僕たちも本来の目的へ邁進しつつ、彼との関係性も良好な状態を維持できるはずです。

 ヴィクトールさんの精神衛生に悪影響を及ぼさないためにも、これから頑張っていく必要があります。




 そして──次の話題。

 ただ隠しているだけじゃ、事態は好転しませんから。


 世界中に散らばるボスを、虱潰しに倒していく……そんな悠長なことはしていられない。

 効率的に、確実に、魔王の手がかりを掴む必要があります。


「魔王復活までおよそ十か月。ただ闇雲にボスを倒すだけじゃ間に合いません」


 そしてヴィクトールさんは言っていました。


 ──「特に、言語を解するような知能の高い個体は……」


 あの意味も、僕はしっかり分かっています。


「ヴィクトールさんは気づいていますが……これからは言葉を解する、あるいは知能の高いボス個体を優先的に探すべきです」


「ヴィクくんが倒した、蛇のボス? みたいなやつのことだよね……!」


「きっとそれが『強化ボス』なんだろうね。奴らなら魔王の情報を知っている可能性もある」


 そう……あの蛇のボスのように。

 魔王の意志を継ぎ、その復活のために動いている「上位のボス」。

 彼らを見つけ出し、情報を引き出すことができれば……復活の場所や、時期、あるいは阻止する方法が見つかるかもしれません。

 言語を解するということは、内部の情報を喋らせることも──不可能では無いのですから。


『そうだね。魔王が復活するというなら、その手駒も既に動き出しているはず。知能の高い個体は指揮を執る役割を担っているかも』


 エペの言うこともごもっともです。

 事態は非常に深刻、僕たちは迅速に動かなきゃいけない。

 そして、ヴィクトールさんもまた、タイムリミットに追われている。


 少々状況はややこしい……というかかなり複雑ですが。

 ヴィクトールさんはこれまでと同様、僕たちを不安にさせないためにも「いつも通りボスを倒して回ろう」と表向き主張するでしょう。それこそ、エスクリやマージュとやっていたように。

 しかし、実態としては「魔王復活」の情報を探るため、知能の高いボスに限定して捜索及び討伐をすることになるはずです。 

 僕たちはそんなヴィクトールさんの活動方針にできるだけ異論を挟まず、むしろ彼が動きやすいように問題を解決していく。途中でより良い案が思いつけば、都度バレない範囲で彼に提言するのもありかもしれません。


 それが、これからの動きになります。






 *






「おはよう。さっそくボスの情報を仕入れてきたぞ、皆」


 ……昨日会議したばっかりなんですけど。

 いや僕も急がなきゃいけないとは思ってましたが。

 早起きして調査に行ってきたってことですか……? 

 これから朝ごはんですよ……? 




「──という話だ。朝早くからすまないが……」


「いえ、僕は大丈夫ですが……」


「もぐ……もぐ……」


「んぅ……んん……」


『起きてー! 二人ともー!』


 あっほら、エスクリとマージュはまだ眠そうじゃないですか。

 僕と違って旅の最中は歩き詰めなので、疲れてたんでしょうけど……。


 早く動くことはいいことですけど、あんまり先へ先へと行き過ぎるのもちょっと危ないですよ。気持ちは分かるから特に何も言いませんけど。

 これなら僕とヴィクトールさんの二人だけで動いた方がいいんじゃ……ああ違う違う。

 とりあえず、きちんと早起きできた僕がちゃんと話を聞いておかないと。


 えっと? 

 街の東にある『旧時代の遺跡』に最近、厄介なボスが住み着いて、街道の物流を麻痺させているって話でしたっけ? 


「巨大なアンデッドが遺跡の中を徘徊しているそうだ」


「なるほど、アンデッドですか」


 巨大なアンデッド。それだけなら、ただの強力なボスです。

 僕自体、回復魔法しか使えないとはいえ、癒しの神への祈りを忘れた日はありません。完全に得意分野の相手になりますね。


 でも、こうして話をしてくるあたり──ただのボスじゃないんでしょう? 


「妙なのは、そいつが人間を見ても襲わず、何かを探すように徘徊している点だ。そして……街道を通る商隊を狙って、襲撃を繰り返している」


「……ただ暴れるだけじゃなくて?」


「そうだ。しかも、ただ奪うだけじゃない。『高価な魔道具や特定の物資』を選別して奪っていくという情報がある」


「……!」


 物資の選別。

 それはつまり……「価値」を理解しているということ。

 本能で動く獣ではなく、理性を持った存在。


 ……当たりですね。

 昨夜の会議で、僕たちが探すべきだと結論付けたターゲットと、完全に一致。

 知能が高いか、誰かの命令で動いている可能性があります。


「それで、えっと、あー……」


「その、ゆっくりでいいですよ」


「悪い。えっとだな……遺跡に被害を与える訳にはいかないから、できるだけ殺してしまうような立ち回りや大技は避けるべきだ。殺さない程度を目安に戦いたい」


 ……ふむ。苦しい言い訳。

 ただ、これも想定内ですね。


 情報を引き出すとなれば、そのボスは生け捕りにする必要があります。完全に倒しきってしまって、口もきけない……そんな状況は本末転倒です。

 ヴィクトールさんからすれば「ボスを倒さないで!」とは言えないので、なんとかそれっぽい言い訳を考えて、僕たちの行動を制限しようとしてるんでしょう。


 大丈夫、分かってます。

 心配しなくても、そうするつもりでしたよ。

 僕は傷ついた貴方を癒すための存在。

 貴方の重荷になるようなことはしないつもりです。


「じゃ、急がないとですね」


「……助かる」


「いえいえ! 僕は貴方の仲間ですから、ね?」


 そうと決まればパパっと準備してしまいましょうか! 

 現地までの地図や物資や、対アンデッド用の準備はヴィクトールさんに頼みましょう。

 僕は眠い目をこする二人の自分自身に渇を入れて、事情を説明することにします。


 相手があの蛇のボスのような、『強化ボス』の可能性も考えられますが。

 今の僕たちは四人と一本のフル状態! 肝心のヴィクトールさんも今回は両手が揃ってますし、大抵の敵相手なら勝利をつかむことは可能なはずです! 


「……ほら、二人とも! シャキッとしてください! 出発ですよ!」


 後衛でひたすら皆を援護して。

 もし今回の狙いが当たれば……魔王復活についての情報を得ることができれば。


 あの人の心の不安も、少しは癒せるでしょうか。






「──おやおや~? あれは……最近噂の旅人さんじゃありませ~んこと?」


「屋敷の窓からだと遠いですわね! この無駄に重厚な仮面が邪魔でよく見えませんわ!」


「ねぇじいや? あの方で合ってますの? ……合ってる? ならよろしいですわ!」


「向かう先は……ま! シュヴァ様が向かわれた遺跡ではありませんこと?」


「と、なると、あの旅人さん、相当に腕が立つと見てよさそうですわね! くくく……!」

過去の十六回もどうせ大したこと喋ってないです(´・ω・`)


感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)

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