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僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~  作者: 破れ綴じ
ソワン国 首都サンク

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マイペースで行こう

「ただいま、ルメド。急な呼び出しだったからびっくりしたよ」


「戻ったよー。なんか街がざわついてたけどあれは何だったんだろ」


「……お帰りなさい、二人とも。用事中だというのに、急かしてすみません」


 よかった……思ったより早く帰って来てくれた。


 どっちにしろエペが直ったら呼び戻すつもりでしたが……「あんなこと」を聞かされた以上、すぐに連絡を取る必要がありますし。用事も中断して帰ってきてもらったのはちょっと罪悪感がありますが……。

 連絡を出して……今で二日ぐらい? できる限りの手を使って、国内各所に連絡を取って、二人を呼び戻すよう要請した甲斐がありましたよ。


「いいよいいよ。リュトも『助かった、後はオレ一人で十分だ』って言ってたし」


 ……? 


 リュト? 

 え、誰ですか? 


「ああ、ルメドは知らないんだったね。きみと同じシエルの生まれ変わりがいてさ」


「は、はぁ……」


 ……え、もう一人シエルがいたんですか? 


 なんか……多くないですか? そっちのパーティー。

 いや……今更もう驚きませんけども。僕だってかつてはこの国に四人集まってましたし。

 でも、ここまでくると……案外シエルって集まりやすかったりするんでしょうか。


 ………………「オレ」ってことは、男の人なのかな。

 そうだと嬉しいんですけど。今シエルの男性率下がってて僕の肩身が狭くなってしまうので……。


 ああ違う違う。

 本命の話はこっちでした。考えが変な方向に行っちゃってた。


「それで、呼び出した理由なんですが……エペの修理が完了しました。今、奥の方の部屋で待機してます」


「えっ……!」


「お、おお……!」


 いやまぁ、そういうリアクションになりますよね。


 前回はある程度の硬質化まで実現してましたが……それでも不十分だったし、結局会話をすることはできなかった。

 そこからの完全回復ですし、首都を離れていた二人にとっては唐突な続報ですから……ちょっとテンポ早めに感じるのは仕方ないことです。


 でも。

 重要なのはそこじゃなくて。


「加えて──エペから『大事な話』があるそうです」


「……大事な、話?」


「はい。僕はヴィクトールさんと話があるので……その間、話を聞いてきてください」




「えっぼくもそっちがいいんだけど」


「えっ……いやマージュにも聞いてもらわないといけない話ですし」


「……まさかルメド、抜け駆け?」


「は、はぁ!? そんなんじゃありません! ほら二人とも、早く行って!」


 さっきまで頑張って真面目な雰囲気出してたじゃないですか僕! なのに一体何言ってるんですかこの人たちは! 

 ……いや僕自身なんだこれ! ああもう! 




 ……やっと行ってくれた。

 あの二人、ヴィクトールさんのこととなると態度が急変するんですから……まったく。


 ……ただ、それにしても。


「まさか『魔王復活の可能性』だなんて……」


 僕もエペから聞かされたときは驚きましたよ。

 ……「ル・マル」って名前には覚えがありませんでしたが。なんでエペは知ってるんでしょう。受け継いだ記憶に大きく違いがあるんでしょうか。

 ここから少し離れた農村の「カトリエ」にいた占い師の……プレヴィ? って人から聞かされた話らしいですが。普通だったらそんなの鼻で笑って一蹴するだけの下らないゴシップにすぎません。


 だって、魔王は──僕自身が倒したはずなんですから。


 かつて命を賭して倒したはずの元凶が、また蘇ろうとしている。しかも、一年以内に。

 占いが事実なら、いずれ世界中のボスがあの蛇のように強化され、人類を蹂躙し始める……そんな悪夢のような未来が、すぐそこまで迫っていることになります。


 ただ、それを心の底から否定できないのは……。




 ──「クソッ、こんな、馬鹿な……魔王様ァァァッ!」


 あのボスが、死の直前で、「魔王」という単語を叫んでいたという事実のせい。




 初めは、魔王軍の残党の一角かと思っていたけれど……エペから話を聞かされた以上、その可能性をあり得ないと切り捨てることが、もう僕にはできない。

 つまり、あの言葉は、ハッタリじゃなくて……あの化け物は、魔王の尖兵だった。

 国中に魔法陣を仕込み、僕を利用し、虎視眈々と侵略の機会を待っていた。


 今頃、エスクリとマージュも、その話をエペから聞かされているんでしょう。

 エペ曰く『元々この情報はエスクリの依頼で僕がスパイしてきた』……とのことですし、喋れるようになったらすぐ伝えるつもりだったんでしょうね。

 二人が頼まれてた用事っていうのが何のことかは分かりませんが……彼女たちは「既にボスが倒されたこと」「ヴィクトールさんが一人でボスを倒したこと」「その戦いでヴィクトールさんが大怪我を負ったこと」も全部知らないはずですし。その辺のことも話すはずです。


 そして、それに対する相談とか、今後どうしていくかとか、ヴィクトールさんにどう接するかとかも話し合いするはず。

 ヴィクトールさんは周囲に負担をかけないため、パニックを防ぐために、そのことを黙っていたらしいですから。


 だから。

 僕も、これからのことを考えなくちゃいけない。


「──起きてますか? ヴィクトールさん」






 *






「ルメドか、起きてるぞ」


「……暇そうですね」


「まあ。体はもう大丈夫だと言ってるんだが、お前の指示だからな」


 いやまぁ、驚異的な回復力だったのでもう本当に大丈夫なんですけど……一応、大怪我の後ですし。今みたいにベッドの上で上半身を起こして、窓の外眺めてるのが丁度良いです。

 左腕は……うん、ちゃんと動いてるみたいですね。皮膚も、再生魔法のおかげで綺麗に繋がってるはず。感覚がないなんてこともなさそうですし、とりあえず一安心、でしょうか。


「回復したからといって、同じ無茶をしていいって訳じゃないんですよ。血だって相当失ったんですから」


「分かってる。お医者さんの言うことは絶対だ」


 苦笑してますけど……本当に、心臓に悪い人です。

 あの時は本当に死ぬかと思いましたよ。こうして軽口を叩けるまで回復してくれて、本当によかったですけど……。


 でも、安心してる場合じゃありません。

 今日ここに来たのは、ただのお見舞いじゃないんですから。

 これから話すことは……僕の人生を、大きく変えることになるかもしれない重要なこと。


「……ヴィクトールさん」


「ん? なんだ、改まって」




「僕も──貴方たちの旅に着いていかせてください」


「ん……?」




「えっと……俺は助かるが、いいのか? お前はこの国の偉い人なんじゃ……」


「ええ、分かってます。でも、事情があるんです」


 あんまりそんな「えぇ……?」って感じの目で見ないでほしいんですが。

 まぁ予想外だったんでしょう。それもそうですよね。

 確かに断られるだろうとは思っていましたが。

 この国の最高治癒術師が、国を捨てて旅に出たいなんて言い出すんですから。


 でも、僕は、なんとしても旅に出なくちゃいけない。

 震えるな、僕の声。もっともらしい理由を並べて、彼を納得させるんです。


「実は……今回の件で、僕はパルジュ──あのボスを長年のさばらせていた『戦犯』という扱いになりそうでして」


「戦犯?」


「はい。護衛として近くに置いておきながら、正体を見抜けなかった……きっとその責任を取るよう糾弾されるはずです」


「そこまでの責任は無いと思うが……」


 いやいや。そんなことありませんよ。

 僕自身は責任を感じてますし、事情を知った上からも「えっこれどうすべきなの」って声が上がってます。

 国民の皆さんはいつも通りの魔物騒ぎだろうと思うでしょうが、僕が魔物を引き連れていたと理解すれば大きく批難するでしょう。


 なのでこれは全くの嘘って訳じゃないんです。

 むしろ、今の条件にとっては、都合が良い。


「このままだと責任追及や処罰が面倒なので……いっそ、逃げ出してしまおうかと」


 ……それ以上に、本当の理由は。

 勇者シエルとして、やっぱり「魔王復活」を阻止しないといけないから。


 今まで、「ソワン国のボス討伐」という大きな目的に突き動かされていた僕ですけれど。その目的が達成した以上、僕がこれまで通り焦燥感に苛まれることは無くなりました。

 それは多分良いことなんでしょうし……そうなった以上、僕も落ち着いて事後処理に務めるべきなんだろうなって思いますよ。


 でも……「魔王復活」なんて聞かされたら、やっぱり黙っていられないじゃないですか。

 かつての勇者シエルとして、やっぱり僕は動かないといけない。新たな脅威を聞かされた以上、それを僕は無視なんてできない。

 そのためには……今すぐにでも行動を起こすべきなんです。

 ……ただ、焦燥感の対象が別に移動しただけな気もしますが。


 そしてそのために。

 魔王に立ち向かおうとするこの人に、着いていきたいと思ったんです。


「それはまた随分と……思いきったな」


「まぁ、はい。貴方にとっても、僕の回復魔法は役に立つでしょう?」


「それは身を以て実感してる。お前以上のヒーラーは見たことが無いぞ」


 ふふん。

 そうでしょう。僕は混じりけの無い、信仰心の塊ですからね。


 あの一戦を見て思いましたけど、あの無茶な戦い方を支えられるのは、僕しかいません。

 エスクリやマージュには攻撃力はあるけど、回復手段がない。僕がいれば、彼らはもっと自由に、もっと安全に戦えるはずです。

 特に貴方は……無茶できそうな状況ですぐ自分を犠牲にしそうですから……。


「それで……どうですか?」


「……よし、分かった」


 ! 

 き、来ました……! 


 ここで許可が出れば、晴れて交渉成立。

 僕はこの人を癒す存在として、彼の仲間になるんです……! 

 この人からすれば、「過酷な旅に巻き込む人が増える」のは本意じゃないかもしれませんが……それでも! 




「お前がそこまで言うなら、歓迎するよ」


 ……! 


「あ、ありがとうございます!」


「こっちこそ。回復役は喉から手が出るほど欲しいからな」


 や、やった! 

 え、えへへ……! 


 ああ、荷造りをしなきゃいけませんね。と言っても、持ち出すものは少ないですけど。

 あのフリフリの正装は置いていきましょうか。旅には不向きですし。

 動きやすい服に着替えて、必要な薬草や道具を詰め込んで。

 よし……忙しくなりますよ! 




「あ、そういえば。エスクリとマージュが戻ってきたので……貴方が一人で無茶をしたこと、詰められると思います」


「えっ」


「その、覚悟しておいた方がいいかと」


「えっ……」






 *






「それで……国を出ていく、と?」


「そうですよ、オンド。今日は別れの挨拶に来たんです」


「何やら騒がしくなっていると思っていたが……まさかそんな急展開で事が進んでいたとは」


 タイムリミットを既に知っていたヴィクトールさんとエペ、新たに知ったエスクリとマージュ。そして新たに仲間入りした僕。

 ここまで来るとやることは一つ。迅速な次の目的地への出発です。

 これまであの三人と一本がどういう旅をしてきたかは分かりませんが……ここからの旅はよりハイテンポな動きが要求されるはずです。

 そのために、動きだすのは早い方が良いに決まってます。


「上層部や国民は、今回の一件をお前の責任とは見ないだろう。むしろお前も被害者の一人のはずだ」


「慰めはいいですよ。もう色々準備してしまったので止まれませんし」


「別に慰めでは……そうか」


 既に僕の弟子に対して、後任の治癒術師として指示を出しましたし。上にも既に、無理やりにでもこの国を出ることを掛け合ってますし。皆渋い顔してましたが。

 結局最後までルアーは見つからなかったし、ティルも再び目を覚ますことはありませんでしたが……まぁ、挨拶は済ませました。次に会うのは世界を救った後になります。

 本当のパルジュの遺体は回収できませんでしたが……墓もきちんと作り、追悼もしてきました。今でも少しひきずっていますが、ずっと立ち止まっている訳にもいきません。

 せめて僕の祈りが、彼の救いの一助となればいいんですけれども。


 確かに、この国の責務を放棄するのは無責任でしょうけど……元々、僕はさすらいの治癒術師だったんだし、きちんと引継ぎの準備もしたんです。

 そもそも、魔王が復活してしまえば国どころか世界の存続が危うい。優先順位ははっきり理解しているつもりですよ。

 だから、多少の尻拭いについては目を瞑ってもらおうと……。


「判断が早すぎはしないのか? お前がそういう性質なのは把握しているが、実際に様子を見たり、調査をしてからでも……」


「いいえ。それでは遅いんです。『あれ』については、より迅速な対応をしないと……あっ、すみません。詳しく話せなくて」


「いや、いい。あまり公にすべき内容では無いのだろう。それなら黙っていた方が賢明だ。私から情報が漏れださない確信も無い」


 ……彼には少し、申し訳ない。

 向こうはこの件の解決のために、危険性を承知で情報を提供してくれたのに……今回は僕が情報を秘匿する立場になるだなんて。

 ただ、「魔王復活の可能性」という情報はそれでもやっぱり公にできないし。既に「勇者シエルの生まれ変わり」とは別人になってしまったオンドにこの情報を与えて余計な心労や圧をかける意味もありません。

 だから、こうして向こうから理解してくれるのはやっぱりありがたいというか。


 彼はドライですけど、それでも僕にはちょっと甘いような気もします。

 それは彼が死亡する前、かつての彼であった時からそうでした。

 僕が女の子みたいな見た目で、小さな弟みたいな存在だったのもあるでしょうが。

 ティルも、ルアーも、オンドも……よく僕を気にかけてくれていた。


「なら、ヴィクトール──彼を連れて来た君に真実を打ち明けた私の判断は、間違っていなかった……ということか」


「ええ。あのとき、僕たちを信じ、託してくれて、本当に感謝しています」


「そうか。本当に仕事の早い……いや、君は元々そうだったんだ」


「オンド?」


 あれ……。

 急に俯いて……どうしたんです? 


「……前々から、思ってはいたんだ。君は物事を焦りすぎる癖があると」


「まぁ、はい」


「自分の前世を少し調べただけでも分かる。『ルメドは結果を急ぎすぎて危うい』と手記にあった。『きっとシエルの焦燥感を受け継いだのだろう』と」


 えっそんなこと書いてたんですか。

 えぇー……。


 じゃあやっぱり、僕って傍から見てもおっちょこちょいというか……あわてんぼうに見えてたんですね。

 う……なんだか気恥ずかしい。自覚こそしていましたが……今のオンドだけならともかく、過去の自分自身だったオンドにもそう思われてただなんて……。


「ただそれは同時に──君の行動力の高さを意味している」


「……えっ?」




「……私は、時々思うんだ」


「私達の存在が足枷となり、君の動きの妨げになっていたのではないか……と」


「だから、君が次の決断をしたこと。それが嬉しくもあり、自分達が情けなくもあるんだ」




「オンド……」


「君は初め、信仰心を持たない私達に、あまり良い印象を持っていないようだったから」


「それは……」


「……すまないな。旅立ち前にこんな愚痴を吐いてしまって」


 ……オンドは、そういう風に考えていたんですね。


 確かに、そういった面があったのかもしれません。

 僕がこの国に、延いてはあのボスに固執し続けたのは、かつての仲間であった彼らを奪われたという……恨みのようなものもあって。

 それが原因で、戦闘力が無いにもかかわらず次の一手を打てずにいた……。

 そう考えれば、確かにオンドの愚痴も的を射ているのでしょう。


 でも……。


「オンド、僕は……」


 確かに僕は、貴方たちの存在に縛られていたのかもしれない。

 確かに僕は、信仰心を持たないシエルを「混ざりもの」と見ていたところがあった。

 確かに僕は、周囲が呑気に見えて、自分だけが先行しているように感じることもあった。


 それでも。

 共に戦い、共に努力し、共に国を守ると誓い合った彼らは僕の仲間であり。

 僕が向き合うべき、自分自身だったんです。

 それを僕の妨げになっていただなんて。

 そう思われたまま別れたくなんてない。


 だから……。






「『僕』は、『僕たち』のことが邪魔だなんて……思ったこともないですから!」

魔王についてはですね。

まだもうちょっとあとなんです……(´・ω・`)


これで第5章終わりです。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

また1話、幕話をやって、その後6章に移ろうと思います。


可能であれば、感想や意見や評価やリアクションを頂けると嬉しいです。大喜びします。

それでは、次話以降も宜しくお願いします(´・ω・`)

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