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僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~  作者: 破れ綴じ
ソワン国 首都サンク

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後味がどうにも……

 ──シギャァァァッ! 


「こんなもんかよ……なァ!」


 寄った村で急に蛇の魔物が湧いたときは驚いたが……案外こんなもんかよ! 

 これがトロワジーのクソ鳥みたいな「ボス」じゃない「ただの魔物」ってのもあるんだろうな。こうやって雑魚と戦うのは久しぶりだが……あのクソ鳥に比べりゃ止まって見えるぜ! 


 次は……右から来るな! 

 狙うのはオレの首か? 甘ェよ、軌道が見え見えだ。

 くねくね動いてするっと抜けちまうのが面倒っちゃ面倒だが……それも当たりにくいってだけで、胴体の中心を真っすぐ狙えばしっかり攻撃は突き刺さる! 

 こんな風に──


「……ん?」


 お、おおお……? 

 なんだその……腕? 蛇なのに腕? 


 追い詰めたと思ったら、まだ隠し玉を持ってやがったか。いきなり形を変えてきやがって……そういう特性なのか? よく分かんねぇ魔物だな。

 形は……鎌か! しかも鞭みたいにしなりやがる。不規則な軌道に、肌がヒリつくような殺気……普通の獲物ならここでビビって足がすくむところだろうが──オレにゃ逆効果だぜ。


 半歩下がって躱しつつ、伸びきった腕を……ロック! 

 腕なんざ掴みやすい部位作ったのが命取りだったな! 


 ──シッ、ガァァァ!! 


 おっと、そう来るか! 

 腕を掴ませたのはわざと、そこから巻き付いて絞め殺すのが本命と。

 蛇らしいじゃねェか。締め付けられる感触も、ギリギリと締め上げてくる力も、人間相手じゃありえないレベルだし。オレが一般人なら今頃骨が外れてたかもしれねェな。


 だが、オレを力でねじ伏せようなんざ百年早ェんだよ。

 全体重載せてやる。


「らァッ!」


 勇者シエルの怪力、舐めんじゃねェ。

 このままお前ごと叩きつける! 


 ──ドゴォォォンッ!! 




「……ふぅ。一丁上がり」


 手応えあり。

 蛇野郎は地面に叩きつけられて、ピクリとも動かねェ。完全に沈黙したな。

 息もしてねェし、体内の重要な器官ごと潰してやった感触もあったから……まァ、この状態からアンデッドになる……でもない限りもう悪さはできねェだろ。

 ま、オレの手にかかりゃこんなもんだな。


「おぉぉぉっ!!」


「すげぇ! あんな化け物を一人で……!」


「嬢ちゃん! 凄かったぞー!」


 うおっ、すげェでかい声。

 おおお、ぞろぞろ出てきやがったな。今まで隠れてたってのに。

 婆さんは泣いてるし、ガキ共は目ェ輝かせてるし。


 いやそうか、見た感じデカい街からも遠い、のどかな村って感じだったもんな。

 助けを呼びに行こうにも時間がかかるだろうし、急に魔物が出てきて、ここの村の人間としては割と焦ってたんだ。だから、偶然居合わせたオレが急に魔物をぶちのめした……なんて状況、盛り上がるのも仕方ねェか。


「ありがとう!」


「あんた強いねぇ!」


「ふふっ……礼には及ばねェよ。通りすがりのお節介だ」


 ……いやァ、にしても悪くねェ。

 トロワジーでも思ってたが、こうして誰かに礼を言われるってのは案外いい気分だ。

 観光地に金を落とすか、魔物をぶちのめすぐらいしかできることもないが──こうやって真っ直ぐ感謝されるとなんだか照れくさいっていうか。


 オレは自由になりてェって飛び出したけど。

 出てきた魔物を倒すかどうかはオレの気分次第でしかないけど。

 自分の力が誰かの役に立ったって思うと、胸の奥がじんわり熱くなってきやがる。


 ……なーんて、柄にもねェこと考えちまったな。

 今はとりあえず「ありがとう」「どういたしまして」の応酬を楽しみつつ、ここの名産品でも教えてもらうかなァ……。


 ……ん。

 あれ、なんか急に向こうの方から気配がすんな。

 まだ魔物が残ってたか? 

 ……いや、そうでもなさそうな──


「あ! ルアーさん!」


「ルアーさん! 今日は大丈夫だよ! あの嬢ちゃんがぶっ飛ばしたから!」


「あの姉ちゃんすげー強かったんだぜー!」


 ……ルアーさん? 

 お、おお。人だ。

 なんだ人かよ。


「あ、あれ? そうだったのか? これでも急いで準備してきたんだぞ……?」


 ……おお、デカいな! 

 ヴィクよりも一回り……かなりの大男だ。

 デカい袋担いでるし、鉈なんか腰に下げてやがるし……。

 猟師か? 森で狩りでもしてたのか? 


「まさか、魔物を……倒したのか? 一切の被害を出さず?」


「そうだが?」


「なるほど、急ぐ必要は無かった訳か」


 ……ははーん? 

 なるほど、用心棒がいたのか! 






 *






「アンタ一人でこの村を守ってるのか」


「ああ、若い人間は皆、街に出ちまうから。残るのは子供と年寄りだけだし……用心棒が必要だろ?」


 なーるほど? 過疎化が進む村唯一の守り手を担ってると。

 責任重大じゃねェか。オレなら三日で逃げ出すね。

 コイツも無骨な見た目だが……話してみりゃ意外と気さくなもんだ。魔物を倒した礼に飯を食わせてくれるってんだから、断る理由はねェ。ありがたく着いてくことにしよう。


「普段は森に罠を仕掛けて、動物を捕まえたり、魔物を弱らせたりするんだが……」


「だが?」


「今日みたいに、村の近くに急に出られるとな……罠を張る時間がない」


「そりゃそうだ。魔物が都合よく罠のある場所に来てくれるわけじゃねェしな」


 ま、戦いってのは、いつだって想定外の連続だ。 準備万端で挑めることなんて、そうそうねェ。だからこそ、オレたちみたいな「その場でなんとかする」タイプが重宝されるんだが。

 にしても……罠使い、ね。


 見た目は完全に力自慢の猟師って感じだが……本職は罠師ってか。人は見かけによらねェな。ま、この見た目でとんでもない怪力のオレが言うのもなんだが。

 前世でも似たような罠作りとかしてた覚えがあるが……どうだったっけ。あんまり覚えてねェし、大したものは作れずに終わってたのかもな。


「そうなるとその場で即席の罠を張るか……力任せに殴って対処してる。最終手段だ」


「ちからまかせ」


 結局。

 それ。


 いやまァそのフィジカルしてるなら殴れるときに殴った方が良いんじゃねェのって思わなくも無いけど。そりゃオレが実際にそうやって戦ってるからか? 脳筋は怖いね。

 ま、オレなら「倒せりゃなんでもいいだろ」で済ませちまうし、「罠なんざまどろっこしいことやってられねェ!」って突っ込んでるだろうよ。脳筋だな、うん。


「いいんじゃねェの? 結果オーライだろ。守れるんだからよ」


「……そう言ってくれると助かるよ。あんたみたいな強い人に認められると、自信になる」


 ほー? 

 見る目あるな。オレの強さを見抜くとは……さては只者じゃねェな? 

 ……いや、女が素手で魔物ぶちのめしたんだから当たり前か。

 これでオレのこと見くびられてたら節穴でしかねェわ。




「それにしても……変わった眼鏡だな」


「ん? ああ、これか?」


 いやまァ、観光客用の色付き眼鏡だからな。

 そりゃ目立つか、こんな山奥の村じゃここまで実用性のないもん珍しいだろ。

 変に思われるのも無理はねェ。


「視界が悪くないか? 森の中じゃ危ないぞ」


「最近の流行りなんだよ。多少の不便はオシャレのために許容すべきだぜ」


 都会じゃみんな掛けてるぜー、常識だぜー、みたいな顔をして。

 いやいや嘘じゃねェぞ? 実際にソワンの市場じゃ売ってたしな。

 思えばソワン国に入ってからずっとつけっぱなしだが……そろそろ新しい言い訳も考えとくか? 「目の病気で」とか、「呪いのアイテムで外せない」とか。

 いや逆に怪しいな。見せてとか言われたら困る。


「そういうものなのか」


「おう。眩しいのが苦手でな、日よけも兼ねてんだ」


「なるほど、合理的……なのか?」


 で、これを聞くのは、猟師としての職業病か。視界の確保は命綱だしな。

 実際オレもこれ、薄暗い場所じゃ見づらくて仕方ねェんだけど。

 でもこれで納得してくれっかな。田舎の猟師なら都会の流行りなんて知らねェだろうし、適当に言いくるめときゃそれ以上突っ込んでこねェと見てるが……。


 ……一応確認しとくか。


「アンタ……『ルメド』って知ってっか?」


「……ルメド様か? よく知っているぞ。あの人には一度命を助けてもらったから」


 ……ほらな? 


 この国の人間はみーんなあの「ルメド」ってヤツのこと知ってやがる。

 しかもルアーの口ぶり的にコイツ結構本格的に世話になった人間じゃねェか。

 あー確認してよかった。


 ここで「実は目の色を隠してまして」なんて言えるわけがねェ。

 この「金色の目」は見られたらそれ即ち、「あのルメド様と関係があるのか?」って思われかねないトラブルの種でしかないってこと。また面倒なことになったら堪ったもんじゃない。

 だから、勇者の証であるこの目を隠すための眼鏡を外す訳にはいかねェ。幸いオレには欠片も魔力が残ってねェから、魔力からオレの正体を知られることは無いが……この目だけは例外だからな。


 一応、このルアーって男の目は……金色じゃねェな。近い色してはいるが、あんなにキラキラ輝いてねェ。

 よし、こいつは「同類」じゃねェ。ただの猟師だ。オレに魔力は分からねェが、目の前のコイツからは勇者シエルの気配みたいなもんしねェし、まー大丈夫だろ。

 なら、警戒する必要はねェな。もしコイツまでシエルの生まれ変わりで、「前世の人格」や「前世の記憶」そのまま、飯食ってる最中に説教とか始められたら食い逃げするしかなかったぜ。


「着いたぞ。ここだ」


 おおー、シンプル。

 丸太を組んだだけの小屋か。庭には薪が積まれてるし、軒先に干してあるのは……おお! 干し肉だな! そこまで本格的って訳じゃなさそうだが、結構堅実な手順を踏んで作ってある感じがするぞ。

 いかにも猟師の家って感じだな。それも意外とベテランっていうより初心者の。


「さあ、入ってくれ。飯を準備する」


 あー……中から、いい匂いしてきたぞ。

 スープか? それともシチューか? あの干し肉は使ってたり? 肉は何の動物の肉なんだろうか。何にしても、腹の虫が鳴きそうだぜ。


「ふふっ、悪いな。遠慮なく頂くよ」


 タダ飯なら断る理由なんてねェ。

 毒が入ってる心配もなさそうだ。こいつの目を見りゃ分かる、嘘がつけないタイプだし。

 旅の空の下、見知らぬ他人の家で飯を食う。

 これも、自由な冒険の醍醐味ってヤツだなぁ。


 さて、どんな料理が出てくる? 

 猟師飯ってんだから、肉料理だといいんだが。期待して待つとするよ。






 *






 ぷはーっ! 

 食った食った! 


「ごちそうさん、美味かったぜ」


「そうか。口に合ったならよかった」


 腹いっぱいだ、もう食えねェな。

 テーブルの上に残ったのは、綺麗に平らげた皿だけ。ありゃ鹿肉のシチューか? 臭みもなくて、ホロホロに煮込まれてて、最高だったぜ。

 あの大男、見た目に似合わず繊細な料理しやがる。「大したものは出せない」なんて言ってたが、謙遜もいいとこだろ。初心者のフリして、やるじゃねェか。


 いやァ、満足だ。タダ飯食わせてくれた上に、こんなに美味いもん出されたら、文句のつけようがねェよ。やっぱり、旅の醍醐味はメシだな。

 こりゃアイツらにも食わせてやりてェぐらいだ。なんか前世でも食ったような懐かしい味付けだった気もするが……あまりの美味さに変なスイッチ入っちまったのかもな。本人は特に考えてる素振りもなかったし、多分体で覚えてる味付けなんだろ。偶然だ偶然。


「んじゃな、オレはそろそろ行くよ」


「そうか。また魔物が出た時は頼む」


「んー……おう、気が向いたらな」


 ま、約束はしねェよ。オレは自由だからな。

 多分、こっちの方に来ることも早々ねェだろうし……また、同じ魔物を他所で見かけたらボコしてやるぐらいの気持ちで手振っとくよ。

 じゃあなー。


 ……さーてと。

 じゃあ余韻はここまでだ。


 で、ここから次の街に進むには……ええっと、今は地図のどこだっけ。

 えーとえーとえーと。あの山が見えるのが向こう側だから……あっちか? 

 ちょっと進んで何か覚えのあるものが見えてきたらそれを目印に進んでくか。

 で、もし迷子になったらこの村に戻ってくるって感じで……。


 ──ゾワッ……


 ……? 


 なんだ今の違和感。

 生き物の殺気とかじゃない、もっと……嫌な雰囲気。背筋が粟立つような……変な感じがしたぞ? 


 ……あそこか? あっちの方か? 

 ええっと……。


「おお……? なんじゃこりゃ」


 地面に変な……模様みたいなもんが。

 これってなんだっけ。幾何学的模様って言うんだったか? 

 ……じゃあこれは魔法陣か? 

 気味悪ェな。誰がこんなモンを……。


 というか、あの陣の真ん中にあるのって、もしかしなくても……。




「これって……卵の殻、だよな」




 外側から他人が割ったって感じじゃなくて、中にいる生き物が無理やりこじ開けて出てきたって感じの……まァ野生の生き物ならこういう卵が落ちてたっておかしくねェんだろうが。

 にしちゃ置かれてる場所が不穏すぎるぞ。こんな召喚魔法のど真ん中みたいな場所に我が子を産みつけたい親だっていねェだろ。この卵は初めからこの陣のど真ん中にあったって考えるべきだろ。


 そう考えると。

 この卵の中にいたのは間違いなく……。


「さっきの蛇野郎……しかいねェよな」


 じゃあアイツは、ここから出てきたってのか? 

 蛇なら卵でもおかしくねェが……そもそも魔物って卵生なのか? いやその辺詳しくねェけども。魔物の生態なんざ調べたこと一度もねェけども。

 いや、それ以前に……この魔法陣は何だ? 自然発生したもんじゃねェよな。誰かが描いたとしか思えねェ。となると、あの卵も自然発生したものじゃないって考えるのが妥当か。


 誰かが、意図的にここに設置した? 

 それとも、ボスがここまで来て産んだ? 


 周囲に他の卵とか、親玉の気配は……。


「……ねェな」


 この殻一つだけだ。

 魔法陣もここ一カ所だけ。


 でもそれっておかしいだろ。

 もしここが魔物の「巣」だってんなら、もっとウジャウジャ卵があってもいいはずだ。

 なのに、さっきの蛇野郎だって、一体しかいなかった。ルアーの話じゃ、たまーに湧くらしいが……それでも聞いた感じ群れを成して襲ってくる訳じゃないらしい。

 というか、普段から定期的に同じ罠とかで処理してるなら、「ボス」みたいな強化個体と鉢合わせたこともないんじゃねェか。だってボスクラスなら普段通りのやり方じゃ通用しねェだろ。


 ……じゃあ、ボスは──ここにはいねェってことに、なる。


 それなら、どこにいる? 近くに隠れてる? 

 まさか、それならオレが気づかない訳がねェ。ここら一帯に罠を仕掛けて回ってるルアーだって、それに気づかないはずがない。この近くに、ボスの気配はねェ。


 となると……ボスは移動している? 


「うわァ、面倒くさ……」


 だとしたら、とんでもねェヤツだな。

 神出鬼没。変な魔法陣使って、好きな場所に手足となる魔物を産み付けて……いざソイツを倒しても、卵を産んだ元凶は全然別の場所にいるって? 


 トロワジーのクソ鳥も大概面倒くせェヤツだったが……それでもアイツは同じ地域にずっと居座ってくれるっていうとこで真面目だった。ここのボスはそういう訳にもいかねェってことなのか。

 本体の行動範囲はこの村含めたあたり一帯なのかもしれねェし、近くの街にまで及んでるかもしれねェし、なんならこの国全域に及んでる可能性だってあると。そしてソイツがまた魔物の卵をどこかに植え付けて……。


 あーあ。せっかく美味いもん食って気分良かったのに、変なもん見ちまった。

 オレには関係ねェ……と言いたいところだが。このまま放っておくのも、寝覚めが悪い。

 かと言って、正体も分からねェ相手を探し回るほど、オレも物好きじゃねェしな……。

 とりあえず、このことは頭の片隅に置いとくか。


「どっちにしろ、厄介な相手だな」


 国のお偉いさんはこの強敵に頭抱えてんだろうなァ。

 どこにいるかも分からないボスが各地に魔物植え付けて被害出してますだなんて。

 範囲が広い分、どうやって解決するつもりなんだろうか。

 嫌な予感もするが……ま、オレはオレの旅を続けるしかねェか。

感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)

ブックマーク・評価・リアクション等も、可能であればぜひお願いします。大喜びしますので。

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