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僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~  作者: 破れ綴じ
ソワン国 首都サンク

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三人と、一人の元勇者

 えっと、えっと。

 僕、普通に喋れてますよね? 衝撃の事実に頭がついていってないんですが……。


「──でだな、この剣は魔力を注ぎ込むことで変形するという特殊な性質があって……」


「は、はぁ……」


 ……うわあああ! 

 いいややっぱり無理だ! 

 集中できません! 

 なんですがこの会合は! 


 まず、この「ヴィクトール」って黒髪の男の人の両隣に座ってる二人ですよ! 

 さっき自己紹介して、銀髪の剣士の方は「エスクリ」、赤髪の魔法使いの方は「マージュ」。そういう名前なのは分かりましたが……いやでも、えぇ……!? 


 ま、まぁ。どちらも整った顔立ちで、キラキラと輝く、その黄金の瞳。

 そして間違いなく感じる、僕と──前世と全く同じ魔力の感覚。

 間違いありません……二人とも、勇者シエルの生まれ変わりなんです。

 多分向こうも分かってるんでしょう。さっきの特徴は僕にだって当てはまりますから。


「──しかし、魔力を注ぎ込みすぎたせいか、このように異常を起こしてしまって……」


「はぁ……えっと」


 ……ですが。

 ですが、ですよ。




 なんで……女の人になってるんですか!? 




 勇者シエルはっ、男だったじゃないですか……それがどうして、こんなことに!? 

 色々あるけれど、一番衝撃なのはそこなんですよ。多少は違うだろうと思ってましたけど、まさか、ようやく出会えた自分自身が──性別ごと変わっちゃってるなんて予想つきます!? 

 しかもなんですか、その………………大きな、胸は! 

 鎧の上からでも分かるそれと、ローブを押し上げる膨らみ……大きくないですか!? 


 ああ、神様。これは試練なのですか……? 

 僕は男のまま、こんな……女の子みたいな見た目になっちゃったのに。身長も伸びないっていうのに! なんで他の転生体まであんなことに……。


 ほら、向こうも向こうですよ。

 一応あの後自己紹介で、「男です」ってちゃんと言いましたけど……その瞬間、あの三人組がどれだけ驚いてたか。特に僕二人! 

 この「聖剣エペ」だって初めに説明してたのはエスクリって人なのに、混乱のせいかしどろもどろになって途中からヴィクトールさんに交代してるし! 

 まぁ、そのヴィクトールさんの話をろくに聞けてない僕も僕ですが! 


 今だって「えっ嘘冗談でしょ」とか「……男の娘?」みたいなヒソヒソ話。

 全部聞こえてますからね! 失礼な人たちですよ、本当に! 


 ……というか、間に一人挟んでるのにヒソヒソ話しますか普通!? 


「──という訳で、この剣の修理方法を探し、ここまで訪ねたんだが」


「……見せてくれますか」


 よく分からないのはこの剣も同じです。


 剣なのに「溶けた」という言葉が似合うほどグニャグニャに曲がってる……というのも、十分驚きですが、まぁいいです。いやよくないけど。

 ただ、一応その事実自体は嘆願書に載っていましたし。


 でも、この剣──さっきから微かに呻き声みたいなのが聞こえるんですが。

 それに、あの二人から感じる僕と同じ魔力を……何故かこの剣からも感じるし。

 中の構造もまるで剣とは思えない。軽く中を診察しても……まぁ意味不明。

 なんですかこれ。剣の診察なんて初めてなんですけど。


 内部は……まるで剣とは思えないほどの魔力回路の集合体。

 それが、溶けて……融合してる? 分離してる? 反発してる? 

 意味不明です。どうやったらこんなことになるんですか。

 鍛冶屋がお手上げだったのも当然です。物理的な修理じゃどうにもなりません。


「……あまりにも前例のない症例で、正直、僕でもどう対処すべきか……」


「そうか……」


 いや、それでも……。


「でも……分かりました」


「!」


 ここで断れば──せっかく見つけた「同類」との繋がりが、ここで切れてしまう。

 彼女たちを逃せば、僕はまた一人で、あの見えない脅威に怯え続けなきゃいけない。

 ……ああもう、やるしかないじゃないですか。

 僕に治せないのであれば、この国の誰にも治せません。全く可能性が無いってことでもないでしょうし! 


「僕が、引き受けます。国内随一の治癒術師の名にかけて」


「おぉ……! 本当か!?」


 ……できるか、どうかは保証できないけど。

 いや、きっとできるはず。複雑ではあるけど、時間さえあれば正直どうにでもなる。

 だから、その……そんな嬉しそうな顔で見つめないでください。

 プレッシャーです。胃が痛いです。


「ただし! 条件があります!」


 というか、元々はこっちが本題。

 何の縁もゆかりもない人の嘆願を順序全部無視して引き受けてやろうって言うんですから。当然、僕に職務上ある程度の負担がかかるし、本来の業務にも支障が出かねません。

 だからこそ、この国が抱える「最大の問題」に力を貸してくれないと。


「費用はいりません。その代わり、報酬として……この国に蔓延る『とあるボス』の討伐に協力してほしいんです」


「……とあるボス?」


 ……三人とも、顔つきが変わりましたね。


 さっきの自己紹介で、彼らが「ボスを倒して回る旅」をしていることは聞いています。

 だから、きっとこの話には乗ってくれると思うんですが……。


「まさか、魔王復活に関連する……」


 ……ん? 

 なんて? 


 ……ていうか、このヴィクトールさんは何者なんですか? 

 彼からは僕たちと同じ魔力を感じないし、瞳は金色じゃないし、なのに二人と一緒に旅をしてるらしいし。


 ……旅の道連れ? 

 元勇者シエルともあろう者がなに現代の一般人巻き込んでるんですか。

 これだから信仰心の無いシエルは……。


 まぁ、どちらにせよ──ここからの情報、彼には聞かせられません。

 今から話さなきゃいけないのは勇者シエルに関するトップシークレットの情報。

 一般人を巻き込んで、無駄な混乱を招くなんてあってはいけないので。

 協力してもらうにしても、この二人を通した内容でないといけません。


「あの……お二人」


「へ? あ、ボクたち?」


「はい。その……詳細は、そちらのエスクリさんとマージュさん……お二人と内密にお話ししたいんですが」


 ……これで二人には伝わるはずです。「ここから先は勇者シエルにまつわる話です」と。

 ヴィクトールさんをどう退室させるか、それは少々考えないといけませんが……。




「……そうか。またこのパターン、ということか……?」


 ……ん? 


「いや、そういうことなら理解した。俺は外で待ってる。後で教えてくれ」


 ……え? 

 あれ……なんで、「あなたを会話から省きたいんですけど」って意思が通じたんだ……? 






 *






 ……ま、まぁ。

 今からここでする話は、後で必要な部分だけ、二人のシエルがあのヴィクトールさんに伝言する形で教えてくれればいいんです。


 ということで、パルジュはいますけど──これでやっと、勇者シエル専用の話をする場が準備できました。

 できたんですけど……。




「な、なんで二人とも女性になってるんですか! おかしいでしょう!?」


 二人のシエルが「えっ護衛さんいるけどこのこと言っちゃっていいの?」みたいな顔してるけど……無視です無視! 

 パルジュは事情を知ってるからいいんですよ。それよりも! 


「シエルは男だったじゃないですか! なのにどうして!?」


「そ、それはこっちの台詞だよ! なんでキミは男なのさ!」


「ぼくだって目が覚めて女になってたときは驚いたのに……」


 そんなの知りませんよ! 

 部屋に入って二人を見たときの僕の衝撃が分かりますか!? 女になった自分自身と会話をしてる僕の気持ちが分かりますか!? 


「というかキミ、本当に男? サラシ巻いてるオチとかじゃないよね?」


「あっ確かに。前はそうだったし」


「お客様! ルメド様に対して無礼です、お下がりください!」


 ああ、ナイスタイミングです、パルジュ。

 こういう時、彼がいると本当に助かるんですよね。過保護なのは玉に瑕ですけど、護衛としては本当に優秀で……。


 ……サラシってなんですか? 


「失敬な! 僕は正真正銘、男ですよ!」


 僕の見た目から、まだ女じゃないかって疑ってて、胸を潰してるだけじゃないかって疑ってるってことですか!? なんてこと言うんです!? 

 どっちにしろこの発育じゃ潰すようなもの育ってませんよ! 何言わせるんですか変態! 


 これでも一応、男としてのプライドはあるんですよ。

 身長が低くても、顔が可愛くても、男は男なんです! 


「ボクなんて、男になりたくてもなれなかったのにぃ……!」


「そんな世界の終わりみたいな顔をしなくても……」


 うわ。

 うわぁ……。


 ……いや、彼女にも彼女なりの嫌がる理由があるんでしょうけど。

 その、自分の胸を抱き締めながら俯くのは止めてくれませんか。

 僕には縁のないものですが……そんなに嫌なんですかね? 

 世の中的には羨ましがられる要素だと思いますけど。


「やっと見つかった唯一の男がどうして……一番小さくて華奢で可愛いんだよぉ……!」


「なっ! 僕だってこんな見た目で生まれるとは思いませんでしたよ!」


「ぼくだってこんな重いの欲しくなかったし……肩凝るんだよ、これ。慣れたけどさ」


「……ルメド様。なんですか、この空間」


 僕だって分かりませんよ。

 ヴィクトールさんが退出して早々、元勇者三人が胸の話で盛り上がってるなんて。


 それにもう一つ。

 性別議論より、さらに嫌な予感がしてるんですが……。


「……で、もしかしてこの剣は……」


「……これもボクだよ。聖剣になった勇者シエルだよ」


『よ……ろ……く……』


「……えぇ?」


 剣まで僕なんですか……? 

 人間だけじゃなくて、無機物にまで転生……? 


 ああもうダメだ。このパーティーは意味が分からない。

 勇者シエルが複数人いる上に。二人とも女になっていて。しかも剣まで勇者シエルで。挙句の果てに一般人を巻き込んでいる……。


「一体どうして……」




「僕が知っている『他のシエル』たちは皆男だったのに……」




「え?」


「他の……シエル?」


「え……ああ、はい」


 そういえば、国外から来たなら……知る由もないですよね。

 そうだ、性別のことも驚いたけど、こっちが本題だ。

 シエルの頃からそうだった、早く魔王を倒さなきゃ、結果を出さなきゃって。

 つい焦って目の前のことや、頭に思いついたことに走りがちなのは僕の悪い癖だ。


 ……これから真面目な話に戻らないと。

 この国の──真実を伝えないと。




「この国にはかつて──僕の他にも三人のシエルがいたんですよ」






 *






 長い話にはなりますけども……。


 ……かつて、この国には僕を含めて四人のシエルがいて。

 偶然にも生まれがこのソワン国に近く、十歳になるころにはそれぞれが使命を胸に各々活動を始めていて……まぁ、その才能から全員が英雄として知られていました。


 オンドは「水魔法」の才能を受け継いだと主張していて。

 ティルは「弓矢」の技術にとにかく優れていたし。

 ルアーは「罠」をしかけるのがとにかく上手かった。

 三人ともベクトルは違えど全員男で、男なのに女の子みたいな僕を気まずい目で見ていたっけ。


 自分と同じ存在が、この国に集まっていた。

 それは希望であり、同時に残酷な運命の始まりでもあったんです。


 そんな折、国にとある脅威が現れたんです。

 神出鬼没の……『変幻自在に姿を変える蛇』のボス……多くの人を苦しめた化け物です。

 国は、それぞれで活動していた僕たち四人を招集しました。

 この国を救ってくれと頼み込んできたんです。僕たちは一人残らずそれに応えました。


「僕たちはお互い『かつての勇者』であることを打ち明け、国の上層部と共に、世界平和の第一歩へと足を踏み出すことを決めたんです」


 国の上層部、延いては作戦の参加者が……僕たちのことを勇者シエルだと知っているのはそれが原因です。

 前世の記憶を持つ者同士、連携も完璧でした。

 僕は後方支援に徹し、他の三人は前線で戦った。

 多くの犠牲が出ましたが、僕が蘇生させた諜報員が齎した情報が起死回生の一手となりました。


 そして……僕たちは勝利したんです。

 眷属の魔物を倒し、ボスを追い詰め、撃破した。

 国中が歓喜に沸いた。これで平和が訪れると、誰もが信じて疑わなかった。




「……でも、それは間違いでした」


 作戦の数日後……前線で戦った三人が、次々と倒れたんです。




 原因は、ボスの攻撃に含まれていた「毒」。

 遅効性で、魔力を蝕むタイプの……最悪の毒でした。

 僕は全力を尽くしましたよ。寝る間も惜しんで、蘇生魔法をかけ続けました。

 毒を浄化し、傷ついた肉体を修復し……彼らは、一命を取り留めたはずでした。


 でも……目は覚まさなかった。

 いや、目は覚ましたけれど……そこにもう、「彼ら」はいなかったんです。


 考えれば分かることでした。

 一度死んで、輪廻の理を外れて、無理やりこの世に舞い戻った魂。

 通常の魂であれば蘇生は可能ですが……シエルの魂は、一度転生したもの。

 二回目の肉体に無理やり押し込んだ魂を、三回目にも持ち越してほしいなんて……そもそも無理な願いでした。


 前世で死の間際に使った、「魂を転生させる魔法」がまた使えれば話は違ったかもしれませんが……。

 生憎、僕の受け継いだ記憶に「最終決戦以降」のものは含まれてなくて、思い出せず。

 肉体は治ったんですよ? でも、シエルとしての人格が消失してしまったんです。

 完全に人格がリセットされ、記憶も残っていないため……今の彼らは一般人として、支援を受けつつ、このソワン国で暮らしています。


「……そして、悪夢は終わらなかった」


 ソワン国は現在。

 ボスを倒したはずなのに……今でもあのボスの眷属が、姿を変える蛇の魔物が、各地に出現し続けているんです。


 最初はただの残党だと思ってました。今でも国民はそう思ってます。

 でも、出現頻度が多い上に、いつまで経ってもその数を減らさない。


 つまり──ボスは死んでいない。


 僕たちが倒したのは、脱ぎ捨てられた皮だったのか、あるいは分身だったのか。

 奴は生き延びて、今もこの国を蝕んでいるんですよ。




「……それが、この国の真実です」


「……そんな、なんて……」


「ぼく、たちが……三人も……?」


 ……自分自身の一部が既に実質死亡したって聞かされるのは辛いでしょうけど、今は飲み込んでください。


 あの作戦は表向き成功したと報じられたけど……それも国民のパニックを防ぐため。

 元凶はいまだ消えていないし、具体的な解決策は何一つ浮かび上がっていない。


 僕は……同胞を救えなかった。国も守れなかった。

 彼らとの交流は少ない期間でしたし。そもそも彼らは信仰心を受け継がなかった、かつてのシエルの……僕が嫌いな部分でもありました。

 ですがそれ以上に、あの作戦においては共に国を守るべき仲間でした。


 だから、だから……。

 生き残った僕が、なんとかしないといけないのに……! 


「──そして、私はその作戦に参加した諜報員の一人でした」


「……パルジュ」


「私は重要な情報を手に入れましたが、あと一歩のところで死亡しました。しかし、ルメド様の魔法により一命を取り留めたのです」


 ……そう、でしたね。


 彼が、パルジュこそが──作戦成功の要となる情報を手に入れ、そして死亡し──僕が蘇生させた、あの諜報員。

 それ以降、彼はこうして。

 僕に忠誠を誓い、今では護衛としてその身を尽くしてくれている……。

 僕は、それに報いないと。


 いつまでも下を向いてちゃダメだ。

 僕にはまだ、やるべきことがあるんですから。


「恥ずかしいことですが……僕には、攻撃手段がありません」


「軍は魔物を討伐こそできますが、ボスの所在を掴めていません」


「そしてあのボスは……今の軍と僕だけでは倒すことができません」


 だから。

 この「聖剣エペ」の修理の報酬として。

 差し出がましいことは自覚していますが……恥を忍んで、お願いします。

 かつての自分自身に。


「あなたたちの力を、貸してほしいんです。今度こそ……あの蛇を完全に滅ぼすために」


 僕たちの手で、決着をつけるんです。

 散っていった同胞たちのためにも。

 そして、この国を……未来を守るために。

 僕たちの使命を、果たすために。

感想やご意見をお待ちしていますのでよろしければ……(´・ω・`)

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