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僕のくせにボクの邪魔しないでよ! ~全員同一人物ハーレム(※同一人物ではない)~  作者: 破れ綴じ
山岳都市トロワジー

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奇遇だな、いや本当に

 ボスを倒してから大体三日が経った。


 ……倒したというにはなんとも締まらねェというか。あっけない幕引きだったが……。

 とにかく、オレたちをこの街に閉じ込めてた元凶は討たれたんだ。




 あのクソ鳥をぶっ倒してから、一日もしねェうちに──トロワジーは大きく変わった。

 具体的に言うと、皆が外に出るための準備に奔走するようになった。


 倒してすぐは街の誰も信じてくれなかったし、逆に心配されちまったけど。実際数時間経ってもクソ鳥が空に現れなかったり、オレを信じて現場に行ったヤツがあの死体を見たりして。

 それで徐々に「本当にボスが倒されたんじゃないか?」って噂が広まっていって……今はもうこの有様だ。


「おーおー、今日も閉店ばっかだなァ……」


 ま、よく考えればこれも当たり前の現象なんだが。


 ていうのも、この街の住民のほとんどは他所から来た人間だ。

 オレが聞いた話じゃ、元々トロワジーは小さな村で、ここまでデカくなかったらしい。

 ボスが住み着いちまったせいで、外に出られなくなって、致し方なく定住……そういうヤツらが集まりに集まりまくった結果、街クラスまで拡大することになっちまったんだと。


 ここに来るヤツのほとんどは「山の向こう側に行くこと」だけが目的だから、ここの定住することは不本意極まりない訳で。しかも漏れなく外との連絡も制限されちまうし。

 自由になれるって分かればそりゃ……家に帰ろうとするよな。半ばあきらめてたとはいえ、オレと考えることは同じだった訳だ。


「──おお、噂をすれば! リュトじゃねえか!」


「この街の英雄が来たぞ! よくやったなお前!」


「ん?」


 おっ。

 宿のおっちゃんと、食堂のおっちゃんじゃねェか。


 ……なんかデケェ荷物背負ってんな? 


「どうしたんだ? アンタらも帰るのか?」


「いやな、一旦外の知り合いに無事を伝えに行くだけさ」


「うちで宿はここだけなんだ。長いこと留守にしちゃマズいだろうよ」


「ふゥん……」


 まァ、中にはこういう人たちもいるみてェだ。

 元々この街に住んでた人間か、それかここの街に馴染み切っちまった人間。今更街の外で生活しようにも考えられないってヤツら。


 特に宿に関しては、他所の旅人をこの街に長居させないためにどんどん数を減らして。

 最後に「この街から出られなくなった人間」が一時的に屋根のある場所で休めるよう、この宿だけ残ったんだ。


 偶然、その宿に泊まりに来た連中が──ほんの三日で全部変えちまったんだが。


「お前はいつかやると思ってたぜ。しょっちゅうクソ鳥ぶちのめすってほざいてたからな」


「よく言うぜ。ことあるごとに『無茶だから止めろ』っつってたのはどこの誰だよ」


「うちで水ばっかり頼んでたお前がまさか本当に成し遂げるとはなぁ……」


「だから倒せたのはオレだけの力じゃねェんだって……」


 おかげで、この三日は街中のお礼参りに付き合わされた。俺は礼言われる側なんだがな。

 街にいてまだ一年のオレに、ありとあらゆる顔見知り達が「ありがとう」「ありがとう」「ありがとう」って。耳にタコができちまうぜ。


 あの三人と一本も変に驚いてた。ボスを倒してここまで礼を言われるのは珍しいんだと。

 普通ボスを倒しても、周囲の魔物ごと同時に消滅する訳じゃねェ。ただ数を徐々に減らすだけだ。

 だから街のお偉いさんからは感謝されるが、そこの住民にまで大手を振って感謝されることはあんまり無い。その街に滞在してればいずれ変化が浮き出てくるだろうが……ヴィクたちみたいな旅人はそうなる前に次の目的地へ向かっちまう。


 それに対してトロワジーは、魔物が珍しいことにボス一体しかいねェだとか。ボスの有無が住民に即影響するだとかで、変化が分かりやすい。

 他の町と違って、ゆっくり時間を置かなくても、環境が明確に変わったことを実感できるんだ。


 だから皆、こうして感謝を口にしてくる。


「次からはお前だけ水を無料にしてやるからな、覚えておいてくれ」


「今までも無料だったじゃねェか。ちゃっかりしやがって」


「とにかく! お前には感謝してるんだ、リュト──ありがとうな」


 ……その感謝を真っ向から否定するって訳にもいかない。

 実際オレはボス討伐の一因を担った訳だし。自分でも感謝されるべきことをしたと思う。


 ただそれは……。

 自分が自由になりたいからやったことで──別にペコペコされたくてやった訳じゃない。

 だからこうして感謝されると、むず痒いというか、恥ずかしいというか。

 本来こんなものを受け取れるとは思ってなかったっていうか。


「……どういたしまして」


 ただ、それでも悪い気分じゃない。


 俺は自由を求める武闘家だ。

 人を助ける勇者ごっこに一生を捧げるつもりはねェ。


 だが……こうして感謝されるなら。

 人助けも悪いもんじゃない気がする。






 *






 さて。

 そうしてさっきから街をぶらぶらしてる訳だが──身の振り方を考えなきゃいけないのはオレも同じだ。


「あの家もぶっ壊されちまったしなァ……」


 そうだ。

 今のオレには寝泊まりできる場所がねェ。

 本気のボスが放った「羽の雨」のおかげであの隠れ家は過去に例を見ないくらい崩壊した。アレに住めって方が無理な話だ。

 そもそもすぐに街を出る予定だったオレにとっちゃそこまでの痛手でもねェんだが。


 にしても──ヴィクは実にケッサクだった! 

 何も知らずにボスを討伐して、自分が倒した相手がこの街のボスだと分かるや否や、喜んでるのか困惑してるのか分かんねェ顔して。

 唖然とするオレたちをよそに、とりあえずとそのまま家に戻って行き、自分の丹精込めて直した壁が跡形もなくなってることを知って……フフッ。


 今思い出して面白い。いや笑っちゃ悪いんだが。

 だってよ、壁の欠片の前で「せっかく俺が直したのに……償うって決めたのに……」とか言い出すんだぜ? 家主のオレよりショック受けてたぞあれは。

 終いには「責任取って一から建て直す」とか言い出したし。流石に勇者シエル三人で止めたけど……放っておいたら一週間後には家が建ってたんじゃねェか? 

 律儀なヤツだよまったく。


 ……借りができちまったのはオレの方だってのに。


「あっいた! おーい、リュトー!」


「んあ?」


 ありゃ……エスクリか。エペもいるぞ。

 今日はよく人に訪ねられるな。


「ごめん急に! なんか用事中だった?」


「いや? 暇してたが……どうした?」


「えっとね、リュトの今後の予定を聞いておきたくて」


「……今後の予定? そりゃ勿論──」




「──一人旅だが?」




「……あ、あれっ?」


 ……ん? 

 なんだ、どうした。なんでそんな意外そうな顔してやがる。


「え、えっと……一人で?」


「おう、一人だぞ」


「……ボクたちと一緒じゃなくて?」


「……なんでそうなる?」


 ? よく分からねェな。

 なんかエスクリの中じゃ、オレとエスクリたちが一緒に旅をするって前提で話が進んでないか? 

 ……あっ、運命共同体とか言っちまったからか? 

 でももうボスは倒しちまったぞ。予想以上のスピードで。お前たちのおかげだ。


 だからオレたちは──もう無理に一緒にいなくていいんだぞ? 


「え、あ……そ、そうか! ボクてっきり仲間になるものだとすっかり!」


「何言ってんだ。オレは自由になりたいってずっと言ってたじゃねェか」


「そうだった、ごめん……なんか一緒に戦ってて完全にパーティーみたいな気持ちになってた……」


 いやまァその気持ちも分からなくねェけどよ。

 オレも戦っててこれ以上ないぐらい息合ってる気がしたし。

 自分だからそりゃそうか。当たり前か。


 ただ、オレは再三「自由を求めてる」「勇者の使命なんざごめんだ」って言ってたんだ。

 お前らのパーティーの一員になっちまったら、必然的に世界を救う旅から逃げられなくなっちまうだろ。人助けって行為を否定はしないが、それに着いていく気もねェぞ。

 そもそも使命のためなら元勇者を一か所に集中させるのは効率的じゃねェしな。


「えっと……じゃあ、本当に──世界を守る旅には着いて来ない……?」


「おう、悪いな。心苦しいが、オレにそこまで崇高な生き方は無理だよ」


「……そっか」


 多分これは所謂スカウトなんだろうな。

 あのクソ鳥は、オレとマージュの力が無きゃ倒せなかったし、そのオレはエスクリとエペがいなきゃ今頃死んでた。

 これから先、強いボスと出会ったときに備えて、パーティーの戦力を固めておきたいって気持ちは分からなくもない。

 オレだって今度同じような目に遭ったら一人で対処するってのは無理だろうし。


 それでもよ。せっかく一年ぶりにこの山から出られることになったんだ。

 それならまた自由の旅に戻るってのが道理だろ。少なくとも、オレはそういう生き方しか無理だからな。


 強いて言うなら……勇者シエルと一切関係のない──それこそ、憧れてるだけのヴィク。

 アイツと気ままに二人旅……とかならちょっとは悩むかもしれねェが。

 当たり前だけどそんな真似、エスクリとマージュが許す訳ねェし。

 で、オレは他の勇者シエルと一緒ってのは息苦しいっていうか、罪悪感があって無理だ。


 結局オレは一人旅がお似合いってことよ。


「……それじゃあ、仕方ないね」


「おっと……断った俺が言うのもなんだが、良いのか? そんな簡単に」


「いいよ。こっちからも無理に勇者の使命を果たせとは言えないし」


「助かるぜ。どこぞの堅物シエルにも見習ってほしい柔軟さだ」


 別に、どこぞの勇者シエルの生まれ変わりみたいに「運命から逃げるな!」「貴様もシエルなら使命を果たせ!」「弱き人々を救いたい気持ちは無いのか!」とか怒鳴りつけても良い立場なのによ。

 かつてのオレの純粋だった部分を見てるようで眩しく思えて来るぜ。


「ボクだって……キミの気持ちは、なんとなく分かるよ。だって自分自身だもの」


「……そうか。分かってくれるか。悪いな」


「ううん、謝らないで。だってこれは勇者シエルが心のどこかで望んでいたことでもあるんだから」


「……!」


「ボクにそれを否定なんかできない。だからボクは──君の進む道を尊重するよ」


 ……はー。

 ちょっと……想像以上に人ができてるな。


 要は、本当は世界のために働いてほしいけど、「無責任な部分を受け継いだオレ」のことを同じ自分自身だからって理由で「真面目な自分が引き受ける」。だから好きにしてくれていいってことだろ? 

 それを残りのパーティーメンバーに相談もせず、今ここで独断で決めてるあたり……マージュも、エペも、そしてヴィクも、同じ考え……ってことか、多分。


 ……ひたすらに善人だけで構成されたパーティーなんだな。

 ちょっと罪悪感抉られちまうじゃねェか……。


「ありがとう……次に会えた時には、必ず力になってやるからな」


「うん、覚えておくね」






 *






 よし。


 荷物は軽い、必要最低限。

 空にはもうクソ鳥の影も見えねェ。空気が上手い。

 足取りも軽くて、しかも、この街から自由に出られるなんて最高の状況。

 自由の旅を始めるには持ってこいの日和だな。


 そして隣には──この一週間でオレと同じぐらい持て囃され、英雄扱いの接待を受けて若干げっそりしたヴィクたちパーティー。

 ご愁傷様だぜ。でも代わりに山ほど物資を支援してもらえたから良かったじゃねェか。


「そっかぁ……リュトとは、ここでお別れなんだね」


「悪いマージュ。人を焼く練習になっただと思っときな」


「あんな緊張することもうしたくないかなぁぼく……」


 ははは。


 お前めちゃくちゃビビってるけど、いつかそのうち人間焼くときが来るかもしれねェぞ? 

 応用すれば炎の壁とか作れそうだろ。手加減の練習になったと思っとけばいいさ。


「で、エスクリはさっきから何やってんだ」


「……リュト。ちょっと聞きたいんだけど……どこかで手袋見なかった?」


「? 見てねェな。悪い」


「そ、そう。見てなかったらいいんだ………………はぁ」


 エスクリはさっきから荷物ん中ガチャガチャやってやがる。

 忘れ物か? もう少しで街出るとこだってのにそんなんで大丈夫か? 


 あっ……分かったぞ。

 コイツら、隠れ家にカチコミ来た時に荷物も一緒に持ってきやがったんだ。

 で、今頃隠れ家は「羽の雨」で丸ごと崩壊してるから……あー、そこで袋が破けたかなんかで無くしたんだな。

 なんとか回収したはいいが、底にあったもんをどっかで落っことしたか……ご愁傷様。


「寂しくなるな。壁の借りも返せてないし、是非とも仲間になってほしかったんだが」


「オレに口説いても無駄だってば……学ばなかったか?」


「そうだったそうだった、悪い」


 ヴィクは相変わらずさっぱりしたヤツだな。


 正直、コイツとここで別れちまうのは惜しい気もする。

 二泊三日の仲とは言え──コイツとオレはだいぶ相性が良い気がしてたんだよな。


 一緒に過ごしてて気づいたが、コイツはかなり気配りできるし、結構視野も広い。色々なところをよく見てて、先に手を回してくれたりする。

 オレが女だからって変な目で見て来る様子も無かったし、男友達として結構気の知れた、仲の良い間柄になれそうな雰囲気があった。

 戦士のくせしてそこまで武器に執着がねぇし、普通に格闘技とかも使えるみたいでちょっと話が弾んだりもしたな。あれは楽しかったぞ。

 夜中に試しで腕相撲もして──こっちの世界で初めてオレが力負けしたんだったか。嫉妬されちゃ面倒だしあの二人には内緒だが。


 しかもその上、俺が倒し損ねたボスにトドメを刺してくれたって借りも作っちまってる。

 このまま別れるってのはなんかモヤモヤするというか。

 コイツはエスクリやマージュと違って元勇者の使命なんてものもねェし……。


 ……あっでもコイツ自身が勇者シエルに憧れちまってるのか。無理だな。


「じゃあ──またどこかで会おう」


 ……! 


「……ハッ、こっちこそ。アンタほどのイイ男ならオレとしても……おっと、これ以上は止めておこう」


「?」


 エスクリとマージュの方からちょっと強めの視線を感じた。

 あくまで「親友」って言うつもりだったが……嫌な予感もするし、黙っておこう。自分自身に睨まれる前に、さっさと門まで撤退だ。


「じゃあなお前ら。短い間だったが楽しかったぜ! ありがとう!」


 それじゃ、オレの一人旅! 

 ここからリスタートだな! 




「……あれ、リュト? キミもこっちの門なの?」


「……奇遇だな。さっき良い感じの別れした手前気まずいじゃねェか」


「えっと……じゃあ、門を出てからもう一回別れ……になるのかな?」




「──あれ、リュト? キミもこっちの方向なの?」


「……奇遇だな。オレは元々、北に向かう予定でこの山に入ったんだ」


「……ぼくたちも北に行きたくて山を越えたんだけど……」




「──あれ、リュト? キミの目的地もこっちなの?」


「……奇遇だな。オレは次の目的として、『ソワン国』を目指してたんだが……」


「それ、ぼくたちの目的地と、同じ……だね」




「ま、待て! なんでオレの行き先に先回りしようとすんだ!」


「いやまさか、こうなるとは思わなくて!」


 オレは一人旅が良いって言ってたじゃねェか! 現状ただのパーティーだぞ! 

 元々オレは『ソワン国』に興味があって、一年前から計画立ててたんだ。

 それでこの山に入って出られなくなって……やっと出られたから楽しみにしてたのに。

 いざ出られたと思ったら次の行き先が同じ……だと!? 


「じゃあ、再開しちゃったし、その……力になってくれる?」


「なっ……!」


 オレの進む道を尊重するって言ってくれたのに……いやそんなつもり無いんだろうけど! 

 これじゃ、あんなに気張って別れた手前オレが恥ずかしいだけじゃねェかよ! 

 ああヴィクもニコニコしながら見守ってるんじゃねェ! 

 畜生、文句の一つも言っていいよな……!? 






「お前は『ボク』なのに──『オレ』が進む道の邪魔をしないでくれよ!」

ヴィク:あれ……これ俺の手袋か? なんで廃墟の中に……?(´・ω・`)

なんてことがあったり……


これで第3章終わりです。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

また1話、幕話をやって、その後4章に移ろうと思います。


可能であれば、感想や意見や評価やリアクションを頂けると嬉しいです。大喜びします。

それでは、次話以降も宜しくお願いします(´・ω・`)

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