エピソード6 蹴撃
レイルは魔族を殺し続けた。
金色のオーラは破壊魔法の改変をした影響か銀色に変わってしまった。その銀色でとにかく塵にする。殺し続ける。
自分の事は昔から大嫌いだったが、勇者になって更にそれが加速する。もし今ここに鏡があったら、自分の頬などから蛆が湧いている幻覚を見るに違いないと確信できてしまうほど、自己嫌悪が激しい。
「やりたくない」と言っておきながら、それ以外にやりようがないと分かるとそれをあっさり受け入れてしまうような自己のなさ。
それが嫌いで嫌いで仕方がなかった。
だから、レイルは自分以外の人間が好きだった。
シンを例に挙げればわかりやすい。シンという男は自分にも優しくするから大好きだった。その他にもこの世界にはいい人間がたくさんいる。悪い人間ももちろんいるが。
だから、もし護れる立場があるなら、護りたいとも思う。自分は善人ではないから、自分の好き嫌いで守護対象を上から目線で決めてしまう。
(俺はやっぱり醜いお化けだ)
こういう事にはなってしまうのはレイルだけでなく、カハナヌイ一家総出である。レイルの母リゴレ・カハナヌイや妹ルチュー・カハナヌイは快活な女性だったが、カハナヌイ一家の男連中はどうも自己嫌悪をしたがる癖があるし、愛情を伝える手段がこの世の終わりのように下手くそで、レイルの兄クチェカ・カハナヌイは弟には世界を見てほしいと思っているがどう伝えればいいのかわからず、結果「早く出ていけ」というようなことをよく言うようになってしまった。
カハナヌイ一家の男連中というのは、要するにクソみてぇに生きるのがヘタクソな連中なのである。
魔族をある程度殺し続けた。
数が減ってきたと認識したその瞬間、スパークが集まって腕と脚に纏わりついた。どうやらこれが本来の〈勇者力〉の顕現らしい。
白い装甲を今更纏って、呼吸を整える。
「此方もある程度減らしたよ」
「ありがとう、賢者様」
「仕事だもの」
クレエルは気になってレイルの精神状態を見た。
そういう魔法があるので、鑑定は簡単だった。
「…………」
自己嫌悪と魔族に対する強い怒り、そして悲しみ。
「まだ何か来る……」
「そうらしいね」
次の瞬間、悲鳴があった。
一際大きな一つ目の巨人が避難所目掛けて全力で駆けていた。どうやら魔族側も一人でも多く人を殺したいらしい。
人を殺さなければならない生き物。
レイルは地面を蹴り、その巨人のもとまで飛んでいくと、思い切り拳を叩きつけた。しかし、どうやら通用していないらしい。
「硬いんだ」と分かると、状況を見た。
そして、この巨人を倒すという事よりも避難所を守るという事を最優先とし、それをクレエルに伝えた。
クレエルは防壁魔法を避難所に対して展開した。
「根本的な解決にはならない」
レイルは装甲を赤く変色させ、脚部に炎エネルギーを溜めていく。何度か「ボウン」と爆発のような大きなエネルギーの躍動があり、それを何度も繰り返す。脚部内に猛烈な火炎がこもり始めているのがクレエルでなくとも誰の目から見てもわかりきっている。
「蹴ってくる」
涙が可燃性になっているのだろう、目の端から炎を流しながら、レイルはクレエルに言う。その言葉を受けたところで、クレエルは彼に「身体強化」を施して見送るしかなかった。
一歩踏み出すごとに熱は身体の外に現れる。
右脚に籠った炎が怒りの間に暴れ出す。
そして、一瞬──明暗が覆る。
光のない世界になって、その中を火炎の一閃が駆け出した。思わず目を背けると、その次の瞬間には一つ目の巨人は塵になっていた。それだけでなく、残っていた魔族も全員散らしたらしい。




