エピソード23 決着
「死ぬ! 死んじゃう! レイル!!」
クレエルは叫んたが、声は届かない。
レイルの笑い声で掻き消えてしまう。何がそんなに楽しいか、不気味に思えばその目が視界に入る。快楽だけでなく確かな憤怒も感じられた。その目は確かに魔王だけを睨みつけていた。
「ハハハ! アッハッハッハ!! ハーッハッハ! ヒヒッ! ハッヒヒヒ!! なぁ、ほら剣を持てよ、立てるだろ。剣が壊れるまで突き合おうぜ、お前は絶対に幸せになんかしてたまるか。お前のような自己中心的なクズ野郎が生まれてきたから、この世に不幸が訪れたんだ! ハハハ! ハハハハハハ! アッハッハッハ! だから、だから俺さ、おまえのこと全否定しちゃった!」
「うう、ううううるせぇ!! いい加減その笑うのをやめろ! 人のことを何も知らないで! どうしてこんなことになったのかも分からないで! どいつもこいつも私だけが悪か!」
「当たり前だ!!」
剣と剣がぶつかり合う。
同時に剣身が砕け散る。それを確認すると、両者剣を後ろに投げ捨てて、殴り合った。何度倒れても立ち上がり殴り合う。
「死んでしまえ! 死んで、死んで! 俺もすぐに後を追うからァ、死んで! ハハハ! アッハッハッハ!! ハーッハ!! ハーッ!」
「頭のイカれたクソ勇者……! 私は戦うのが嫌いだった!! だから自分が世界の王になれると知った時、この力で世界平和を実現しようとした! あの時代、どいつもこいつも血の気が多い! でも無理だった! 愛した女も殺された!」
「自分が不幸だったら人を殺してもいいか!? ふざけるな!! ハハハ!! アハハ!! おまえの言うことは全部、つらい過去も、悲しい過去も、その時流した涙も何もかも全部!! 全部さ! 犯行動機っていうゴミみたいなもんにしかならないよ! やっていいことと悪いことがあることもわからないで! 自分だけは人を殺してもいいと思って、あの時その場でどんな誰が泣いていたのかもわからないで! 俺はそれが許せない! 俺はそれを許さない! お前が逃げても、俺は頭が欠けてもお前を殺しに行く! お前の前で満面の笑みでお前の作りたい世界平和を壊してやる!」
〈異嚇〉はダメだと叫んでも聞こえない。
近づきたくても身体が恐怖で動かない。
「何故……!! こんな世界の未来に何の価値がある!! 人は誰かを憎むばかりだ! 人は誰かを苦しめるばかりだ、だから、一度作り直す必要があるのに、なぜそれが分からんのだ!」
「良かった、安心したよ! 俺とお前、やっぱり違うね!」
「クソガキ!!」
「十八歳だも〜ん!」
「お前、もう死んでくれ!」
「なんだ知らんのか」
金色の拳。
魔王も慌てて拳に纏う。両者の拳がぶつかり合った。
そして、お互いの肉体が爆発した。
「レイル!!」
しかし、立っている。両者。
「〈勇者力〉を犠牲にして身体だけでも原型を保ったか……!!」
「それお前もじゃ〜ん」
お互い覚えられる魔法は一つ。
お互い「回復魔法」を使い、肉体を徐々に再生させていく。疲労だけでも回復させ、身体が動くまで荒い呼吸が続く。
「じゃあ、続きをしよう」
〈勇者力〉も〈魔王力〉も先ほどの爆破で消失。
だから、此処からは素の身体能力での戦い。
「ん゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙ぅ゙!!」
魔王がレイルを殴れば、レイルも魔王を殴る。
蹴れば蹴られた。殴れば殴られた。血が飛び散って、痣は気持ちの悪い色になって、髪をつかみ合い、胸ぐらをつかみ合い、頭突きを食らわせ合い、腕にかみつき、投げ飛ばし、必死に腕と脚をバタバタと動かして雪の上を走り、倒れている片方を蹴り飛ばす。
レイルは笑いながら怒り、魔王は泣きながら苦しんだ。
勇者と魔王の戦いはそうして続いた。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
「ん゙ぎぃ゙!!」
殴り合い、骨を砕くためにお互いの腕を掴み合い、同時に骨の砕ける音を響かせて、お互いに叫んで、今度は片腕で殴り合う。蹴り合い、内臓がいくつか弾けて、肋骨は折れて、お互いに死ぬ怪我を負い合う。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
「お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙お゙ァ!!」
そして、魔王が倒れる。




