エピソード22 苛烈
拳と拳がぶつかり合った。
衝撃波と共に白い稲妻が走り抜け、遺跡が大きく砕け散る。
破片を一つ掴み、レイルは魔王の頭に強く叩きつけた。
魔王はレイルの顔面を掴むと思い切り地面に叩きつける。レイルはそこから背を丸め、魔王の首に脚をかけると、身を捩り脱出。
そして、またも身を捩り〈白の勇者力〉の急加速の技術を脚部強化に特化させ、魔王を投げ飛ばした。
レイルと魔王は同時に装甲を赤くさせた。
そして、同時に火炎を操り撃ち合う。火炎が、攻防を繰り広げる足元で二人も殴り合った。レイルが拳を突き出せば魔王はそれをガードしレイルの拳の威力を乗せたパンチを腹に叩き込む。
レイルもそれをなんとか両手でいなし、回し蹴りを叩きつける。
顔の皮膚が裂け、血が溢れ出したところで止まる気配はない。
おそらくこのまま戦いは続けられる。終わるまで、続く。
「魔王なら魔法を使ったらどうだ……火炎なんてしょっぱいことをしなくたって魔の王ならさ……!!」
「魔力路・魔力回路ともに〈魔王力〉が流れているせいで魔法が一つしか覚えられなくてさぁ……!!」
「へぇ、『うんこを軟便にする魔法』でも覚えちまったかい……!?」
「バカにして……!!」
魔王は〈緑の魔王力〉に変え、剣を取った。
レイルも〈緑の勇者力〉に変え、剣を抜いた。
「〈勇者力〉と〈魔王力〉はとことん同じらしいな」
「だからなんだ、ナンパか?」
剣と剣がぶつかり合うと虹色の火花が散る。
隕石に何百ぶつかられようと壊れない勇者の剣と、魔王自家製の自慢の剣がぶつかり合ってしまった。
その為、高圧力エネルギー波が発生し、魔族が消し飛んだ。
クレエルは防御魔法を展開させてなんとか凌ぐ。
「なんだありゃ……」
見たことのない次元の戦いだった。
剣士や戦士の戦いというのは何度も見てきた。小児性愛者の自信家同士のものだったけれどあんなものとは比にならない。
「いままでセーブしてたんだ……」
と、気づく。
「そりゃあ……あんな力で戦われちゃ街がだめになるか……」
踏み飛ばすようなキック。
魔王が吹き飛んだ。
その時、バヂリという嫌な音が大きく響いた。
レイルと魔王の頭から響いてきている。
「なんだ……?」
嫌な気配。
「なんか、楽しくなってきたな……」
「なにが楽しい……」
満面の笑み。
〈勇者力〉の装甲が黒く染まった。銀色の塵化能力が金色の爆破能力に巻き戻る。
「こんなことの何が楽しいか……勇者ァ!」
「楽しいねぇ、魔王!!」
心当たりがある。
「〈異嚇〉か……!? やばいな、マズい!」
クレエルは駆け出していた。〈勇者力〉の使用を止めなければならないと思った。しかし、次の瞬間、大雪が吹き荒れ、クレエルは足を止めざるを得なかった。
「勇者くん! その力まずいよ!! そりゃ〈異嚇〉といって生命力をいたずらに消費するんだ!」
「だったら尚の事ばちりき! 俺、ずーっと死にたかった!」
レイルと魔王がぶつかり合う。魔王は涙を堪え、レイルは大きく笑いながら。〈異嚇〉でさらに強化された身体能力と両者に備わった金色のオーラがぶつかり合い、大きな爆破を重ねていく。
山が壊れてしまってもいいとでも言わんばかりに。
「死ね! 死ねよ、魔王! お前が生まれてきて……お前のせいで、たくさんの、ヒヒ、人が死んだんだ! ハハハ! お前が生きてちゃあ……いけないんだよ!! わかるだろ!? ハハハ!! アッハッハッハ!! ハハハ! 人を殺して、それでいて尚も自分はキレイなままでいようとするのはさァ!! 『変』だろ!?」
「黙れ! わ、私は!!」
お互いの拳が顔面にぶつかり合う。
ふたりとも同時に吹き飛び、雪が踏み固められた地面に血が散る。




