エピソード18 接続
「なんだぁ! 君は女の子に間違われた途端に此方を見て『どうだ見たか』という顔をして、いつもうざったいなぁ、と思うよ」
「かわいいじゃない。僕のかわいいエピソードだよそれは。君ね、さっきの質問の答え方ってのがマズイよ。『賢者様のかわいい顔を毎日拝められるのでとても嬉しいです』くらい答えてもらわないと」
「君はおかしなことを言うなぁ、可愛い奴は人のあだ名を笑いの種にして酒場を盛り上げねぇって」
「それは三日前の話でしょうが、まだ引きずってんのかい?」
「酔っ払いのねぇ、半笑いの〝塵討ち〟が忘れられないよ。たまに思い出して気分が優れなくなるんだよ」
「それは君の心の弱さだろぉ? 僕の責任にされちゃ困るなぁ」
シュー・ザイシャは「なんだこいつら」と思いながら、マイクを握り直して、わざとらしく咳をする。
「あの! 次に、賢者クレエル・エスペラル様への質問です」
「お! なんだい?」
「貴方から見て勇者レイル・カハナヌイ様はどういう人なのでしょう。極力プラスの印象をお願いしたいのですけど」
クレエルは二分黙った。
「なんかあるだろ」
「僕からしたら君は不気味なやつだよ」
「君がそれを言ってどうなるかって考えたことあるかい? 何かあるだろ、『顔が良い』とか『優しい』とか嘘でもそこら辺を」
「顔はともかく君を優しい人間だと紹介するのは本当に優しい人に失礼だよ。君は価値観がぶっ壊れてるただの異常者だよ」
「君は俺への恩があるのを忘れてるなあ、そんなに乱暴を言うんならもう寝起きに髪梳いてやんねぇぞ」
「あれ実は不満があるぞ。君力が強すぎるんだよ、強引なんだよ。僕の髪質が損なわれたら君の責任だからな」
「可愛くないなぁ、弟とか妹にいたら精神病むよ」
「妹がいる人間の言葉じゃないと思うよ、それは」
「自分で髪を梳けなくて何が賢者だ。魔法と勉強だけじゃ賢いとは言えないと思うけれど、君の世界では君でいいのかい?」
「じゃあなにかい、君は僕にそれしかないと? 僕が魔法と勉強たけの空っぽ人間だと、そう言いたいのかい? ずいぶんと目が節穴なんだなぁ、君は! あんまりおかしなことを言ってるとぶっ飛ばすぞ」
「ぶっ飛ばしてもいいけど二度と同じ部屋でねてやんないぞ、人と一緒じゃないと寝られない赤ちゃんみたいな奴のくせにさ」
「君は僕が止めないと永遠に鍛錬だろ」
「向上心の塊じゃないかよ」
「あれはちょっと君を贔屓しちゃう僕でもだいぶ気持ち悪いなって思うよ。一切休憩無しでぶっ倒れるまでずーっと鍛えてるんだもの。それで大ムキムキになってないのも変だよ」
「大ムキムキになるまでもないだろ、筋肉なんて突つけば突くほど強くなっていくんだから。そうだろ、君は君で全くトレーニングも何もしないでいきなり大技だのを出すからたまにびっくりしちゃうよ」
「僕は生まれつき天才だから仕方ないだろ。努力家の君と一緒にしてもらっちゃ困るんだよ、わかるかい」
「君はいつもいつも言葉に棘があって嫌だなぁ」
シュー・ザイシャが口を挟む。
「魔王に対してなにか仰っしゃりたいこととかありますか」
「魔王に対して?」
「はい」
「これは広域で放送されてるから、ワンチャン魔王もこの放送を見ているかもしれないよ、言いたいこと言っちゃいなよ」
「そうだな……」
レイルはしばらく考えてから、口を開く。
「あと十日で、お前のところに行く」
水晶を睨みつける。その奥の、奥の奥の、さらに奥の、ずぅーっっっと奥にある気配と感覚が結びつく。ようやく掴んだ、魔王の気配。毎日見られている感覚はあったので、これで確信した。
「場所は特定したからな」
「最近の君を見ていると、〈勇者力〉さえなければ魔法使いとしても大成してそうだなって思うよ。魔王は何処にいるの?」
「ここから程遠くない山の上」
「じゃあ、遺跡を根城に?」
「そのようだ」
「小汚い奴だね」
「だな」




