エピソード14 髪飾
剣が完成するとダルはそれを専用の鞘に収めてレイルに投げ渡した。レイルは街の子供たちの遊び相手になっており、かわりにクレエルが受け取った。ずいぶんと重い剣だ。
「お前の要望に沿った剣だよ。隕石に百回連続でぶつかりでもしない限り折れない剣。草臥れたぜレイル・カハナヌイ」
「どうもありがとうございます、とても嬉しいです」
「勇者くん、いったいどんな要望を出したんだい」
「秘密だよ。君には関係のない話だ」
「冷たいな……」
その日の夕方にはシーベンスを発った。子どもたちは「また来てね」と笑顔で手を降って、クレエルはそれに応じた。
レイルも少しだけ照れくさそうにした。
それからは、クレエルは人形を動かしてそれをレイルに見せて反応を伺ってみたりレイルはそれを無視してみたり野宿の際に炎をドラゴンの形にして遊ばせてみたりレイルはそれを無視してみたり……と、いろいろ和気藹々とした道中を過ごしていた。
ある日、ある村に立ち寄った。その村ではどうやら装飾品が名物らしく数多くの出店が並んでいた。
そのうちの一つが目にはいり、クレエルは足を止めた。
「どうかしたかい」
レイルは訊ねる。
「これ、可愛いって思った」
「どれ」
「これ、これ」
「ああ、この黄色の」
「女の子のものだけど」
ガーベラだろうか。
黄色のガーベラが描かれた髪飾り。レイルはそれを数秒見つめてから、手に取ってみて、クレイルの頭に合わせてみる。
「似合ってる。おやじさんこれをください」
「あいよ」
そして、クレイルにポンと渡した。
「いいの?」
「そのようになりたい人間というのは何処にでもいる。俺は当事者にはなれないが、理解するし受け入れる。どうやら君もそうらしい」
「デリカシーがないね、勇者くん」
「そんなことはないよ。俺だって人間だ」
「どういうニュアンスの言葉なの、それは」
村人に訊ねる。
「ガーベラを拵えた装飾品が多いけれど、何故です?」
「ガーベラはねぇ、ここの名産なんだ。すんげーうまいの」
「うまい……?」
なんと、ガーベラを食う異常村だった。
「今の時期はドライガーベラしかないよ」
「食わないからいいです」
「犬猫みたいな村だね」
「君たち恋人同士かい? にしちゃあ歳が離れすぎだな!」
「兄弟です」
「う、嘘をつくなよ。あの、俺たちは冒険者なんです」
「このご時世に冒険者なんて勇気があるなぁ」
「そうなんです。僕たち勇気あるんです」
「勇気は別にないだろ……」
あるだろ、と思いながらクレイルは髪飾りを挿してみる。
「ここいらに宿はありますか?」
「ガーベラハウスっていう宿があるよ。ガーベラとか食える」
「食いはしないです、ガーベラ」
「独特な村だね」
宿を取ると、窓から日が暮れるのを見つめる。
「ねぇ、勇者くん」
「なに」
「僕、魔法の天才だから女の子になれるんだよね」
「奇遇だね。俺はなれない」
「頭打ったかい?」
「君が俺にどういう心を向けているのか分からないけど、いずれにせよお勧めはできないよ。何かの間違いで俺が小児性愛者になったとして、君と俺の関係は長続きしない」
「なんで?」
レイルは答えないで、剣のヒルトをただ撫でた。




