エピソード11 異常
レイルははるか上空から街の様子を見下ろし、〈赤の勇者力〉の装甲を纏う。クレイルはレイルがきっとそうしているだろうなという憶測を立てて、空に一本火炎の矢を放った。
レイルはその矢を掴みエネルギーを込める。すると矢は十七本に増えるのでそれを街に溢れ出した魔族たちに撃ち込んだ。
着地すると、即座に魔族が飛び掛ってくるのでそれを殺す。
(たしか近くに教会があったな)
教会には子どもたちがたくさんいる。魔族というのは子どもが好きだから、きっと狙っていってしまう。
街中に溢れ出した魔族を一方的に虐殺しながら、教会を目指した。
すると目の前に牛よりも大きなオオカミが現れる。魔物である。
それを蹴り、壁に叩きつけて潰し殺す。
「勇者くん!」
「賢者様、教会に行くので君はここを任せていいかい」
「わかった」
〈白の勇者力〉で身体を強化して跳躍。
教会につくと、思った通り魔族がワラワラといる。〈赤の勇者力〉で着地と同時に熱波を吹き上げ十五体ほど殺す。
「もう大丈夫」
魔族が一斉に押し寄せる。
それを一方的に虐殺し、そこにいた魔族をすべて塵にすると、目の端の涙を払って「防御魔法を」と言って、クレイルの元に向かった。
クレイルの方もすでに五十体ほどの魔族を殺していた。
「大丈夫だった?」
「うん」
「よかった」
レイルを襲い出す魔族たち約百体。
それを二分程度で殺し切ると、背中から心臓に剣を刺された。魔族の剣は特別なので勇者にも刺さってしまうのである。レイルは「いまじゃないよ」と苦しげな声を出し、身を捻って魔族を殺した。
「勇者くん!」
「焦らなくたって、おまえ、焦らなくたって……心臓貫かれた程度で人は別に死なねぇよ……」
それを無理やり引き抜いて、口から血を流しながら、構える。
「死ぬのは、いまじゃないんだよ」
それを投げ、魔族を四十体ほど貫き殺す。
「ハァ……ハァ……残念ながら……」
微量ながら回復魔法が心臓を繋ぎ止めて生命活動を辛うじて維持している。出血は多量。戦いというのは数で押されればいつか負けてしまうものである。ただ「いまじゃない」という意地だけで瀕死の状態から二時間戦い抜いた男がいるだけ。
「死なないから勇者なんだろ」
「とは言ったって……なんで生きてるんだ……きみは」
「勇者、だからだろ。身体の中に〈勇者力〉とかいうよくわからない物があって、よくわからない組織の一存で。死なないほうが良いに決まったいるのに、君は、いったいなんなんだ」
「ごめん……」
「いいよ。そういうもんだと思ってるから」
「……ごめん……」
「俺が大人気ないみたいになるだろ。やめてくれよ。生きてるんだから。終わりよければすべてよしだろ。だからこれでいいんだよ」
この調子で八時間もちくちくと嫌味な口調で説教をされたものだから〈尋常維持機構〉の職員たちは最終的にかなりイラついていた。
「勇者くん、その……」
「理不尽に怒っているのはわかってるから、言わないでくれよ」
「違うよ。そろそろ輸血しないと、血が足りないんだから……」
「俺の血液型は、世にも珍しいF型だよ。あるかい、そんな血ここに……休んで、飯食ってりゃ回復するよ」
F型血液はきわめて希少である。現在確認されているF型血液は世界で六人程度。世界人口六十億人の現代である。
「なんで君ばかりが、そういうふうに……」
「なんだい」
不幸なんだと言いかけて、やっぱり辞める。
「……いや、なんでもない……」




