エピソード1 少年
毎朝はやくに起きて牧場の仕事を手伝って八時頃に学校。
学校では魔法について勉強する。
レイル・カハナヌイは魔法が苦手で、簡単な回復魔法しか使えない。
新聞ではよく十三歳にして賢者に選ばれた子供の話を聞く。
賢者といえば、この世で一番賢くて、この世で一番魔法を上手く扱える者である。そして、十三歳といえばレイルより五歳も歳下だ。
新聞の中の立派で偉大な魔法使いは、自分よりも遥かに。
だから尚の事魔法について頑張ろうとした。
けれど、どうも自分の魔力回路はほとんど発達していないらしい。
あるいは、別の何かが流れているのか。
医者がよく言う「別の何か」というのが分からないから、レイルはおそろしくて時折こっそり震えて泣いた。
魔法が使えないなら勉学やスポーツだと思い、勉学に励みよく身体を動かした。すると、自分がバカであるということも分かった。
得意なのは運動だけで、身体能力を数値化できるシステムか何かがあればおそらく「身体能力」の欄だけずば抜けて高いだろう。
垂直跳びで八メートル跳べるし。
「でも成績良くなってきてるから、頑張りの成果は出てるぜ」
幼馴染のシン・U・リーはそう言う。
シンは内向的なレイルとは違い、外向的な人間だった。
IQは二百をこえ運動神経抜群のいわゆる文武両道で顔もいい。
いつも笑顔を振り向いて関わる人を笑顔にしなければ気がすまないような善人でもあるから、レイルはこの男に憧れがあった。
「君のおかげだ」
その日は海岸の掃除の日だった。
海流の影響からかよくゴミが打ち上がる。
それを集めながら、二人はそろそろ近い冬休みと卒業後のことについてぐちゃぐちゃに考えていた。レイルは隣で手に息をかけている親友を見ながら「彼は大学にでも行くんだろうか」と考えてみる。
そりゃそうなんだろう。シンの将来の夢は昔から変わらず医者で、医者になるなら大学にある医学部を出て医師免許を得る必要がある。
「俺は、卒業したらなにしようかなぁ……」
ふと零してしまう。
「牧場は?」
「兄が継ぐことになっててね」
「ああ、あの人と仲悪いんだっけ」
「悪いと言うか、一方的に嫌われてると言うか。兄はウジウジしてるような人間が嫌いなんだ。俺のようなのはきっと嫌いだ。だから、高校を卒業したら牧場から出るようにと言われているんだ」
「そりゃつらいな」
「……何処かで肉体労働でもして生きるよ」
「俺と一緒にさ……」
「え?」
「……いや、いいや」
「そうかい?」
ザザン、と海が鳴く。




