discomfort(ディスコンフォート)
ごめん!また投稿遅くなった!!
明日は、もう少し早く投稿できるように頑張ります。
「よく来たな、マチアス殿。」
「王こそ、今日までご健在でなにより。」
「フッ。ここは学問の町テクノマギア。その長が早々に死んだら、この世の心理も知れんだろう?」
「なるほど。」
「して、先ほどの報告は誠か?」
「あくまで可能性ですが……確率は、85%といったところでしょうか。」
「そうか……マチアス殿とハナ殿、それにゼルガ殿一行もいて、心配はいらぬと思うが、それでも、何もしないわけにもいかん。あれの試験運用もできそうだしな。」
「あれ?」
「君には一度見せたと思うが、あの新型兵器だ。」
「ああ、エーテリオン・ガイアス。」
エーテリオン・ガイアス。テクノマギアが勢力を上げて作っていた対大型魔法生物戦闘兵器。簡単言えば、超巨大な、人の操作できるゴーレムだ。一度見せてもらった時はまだ試験段階も試験段階で、心臓部にあたる部分が欠損してたんだよね…
「コアとなる部分の代用品がついに見つかってな。素材に関しては国家機密のため話すことはできんが、そこまで希少なものではない、ということだけは言っておこう。」
「わかりました。もし暴走しそうになったら、その時は僕が止めますので。」
「承知した。」
「ようやく出やがったなぁ、魔王。」
数日後。
王からの招集があり僕らが向かった先に待っていたのは、まさに魔王級の魔力を宿した、青色のドラゴンだった。大きさはドラゴンの中では小さいほうだが、それでも、常人の5倍ぐらいはある。そのうえこのドラゴン、大きな剣まで持っている。俗に「龍王」といわれる魔王だ。「魔王」といわれるものの中でも上位に当たり、僕も少し本気を出さないと倒せない、厄介な子だ。
「龍王か。めんどくせぇなぁ?おいお前ら、俺たちでやんぞ。」
そういって、ゼルガたちは戦闘準備を始める。先にしておいてほしいところだけど。
「私も行こうかな~。あいつが出たおかげで、周りにもだいぶ寄ってきてるみたいだし。」
「今回は残念ながら、僕とエーテリオン・ガイアスの出番はなさそうだね。」
「えーてり…何?」
「いや、何でも。」
エーテリオン・ガイアスは存在そのものが国家機密だから、僕以外の人間には伏せられているんだよな。ま、僕経由で、あの子たちも知ってるわけだけど。
「……」
「ん?どしたの?」
「いや……」
『もしかしたら、エーテリオン・ガイアスも消さないといけなくなるかもな。悲しいけど。』
『主様』
『主様!』
『—!どしたの?リリス、セレナ』
『主様の疑っていた人間が移動し始めていて―』
『別にそれはいいんじゃないの?』
『いえ。少なくとも、龍王のほうに進んでいるようには、到底見えませんね。そういえば、今あの人間たちの進行に見えるのは、主様が追っていらっしゃる元勇者殿の軍勢では?』
僕がテクノマギアに来た、もう一つの理由。それは、このテクノマギアに、龍王とはまた別の魔王が攻め込んでくるという情報が手に入ったからである。ちなみにこれは、裏から魔王型の調査を頼んでいた、8番目の子、ノワール・サングリアからの情報だ。
正直今回の龍王だけならば、テクノマギアにゼルガたちが着ていることも知っていて、来る必要がなかったんだけど、ほかの魔王が、それもレイダが来るとなると、話は別だ。いつかは倒すことになるとしても、それは今じゃない。少なくとも、話を聞けていない今、ゼルガたちに、レイダを倒されるわけにはいかない。
『………リリス、セレナ。足止め、頼める?もしきつかったら、ほかの子たちに援軍を頼んでもいい。少なくとも、エリシアとネフィラは暇そうにしてるはずだから。』
『『はい。』』
「……さて、ここからは忙しくなるな。」
「どしたの?」
「いや、こっちの話。それより、龍王討伐、協力するよ。」
「え?イイの?すぐ終わりそうだけど。」
「すぐに終わらせたいからだよ。」
勇者は、もともと魔物に対して攻撃がよく聞くようになっている。いくら強いとはいえ、実際にあの子たちがどれだけかは完全に未知数だ。できるだけ早く終わらしたい。
「……まあいいや。なんか隠してるんだろうけど。」
「そういうことにしておいてくれると助かるよ。」
そういって、僕はルクル・ハルパスを、ハナは自身専用の双剣、ニ―ドルベイン・ツインスラッシュ…通称NBを構える。NBはテクノマギア性の武器で、その小ぶりな双剣の一振りずつに、膨大な量の毒が含まれていて、さらにその種類を変更することもできるという、万能な双剣だ。
「じゃ、私は足止めするから、とどめはマチアスがお願いね。あ、私が好きなあの技でお願いしてもいい?」
「ああ……まあいいよ?久しぶりの共闘なわけだし。」
「やった~!じゃ、よろしくね。」
そういって、ハナは身軽に龍王に接近していく。
「大丈夫なんですか?」
そばにいたテクノマギアの技術兵たちが、心配そうな声で質問する。
「大丈夫だよ。何せ彼女、「最強の四人」の一角だからね。」
「それはわかっていますが、さすがに龍王相手に一人、それも接近戦は無謀でしょう……あと、他人事みたいに言ってますけど、あなたもそのうちの一人ですよ?」
「あれ、そうだっけ?」
そんなことを話している眼前では、龍王とハナとの激しいぶつかり合いが始まっている。大剣と双剣はぶつかり合うたびに火花を散らし、龍王の剣からは瘴気が、NBからは毒のしぶきがあふれ出ている。
「近づいたら危ないよ。」
「あ、はい。」
今回花は、酸性の毒を使っているのだろう。一見龍王にダメージが通っていないように見えるが、その実、体は少しずつ、毒に蝕まれ溶けてきている。だがそれと同時に、相手の出す瘴気に侵され、花のほうも確実にダメージを受けている。
「さて、そろそろ手伝うかな…」
「マチアス~!そろそろきついかも。私、もともと前線張れるタイプじゃないし!」
「OKOK、わかったよ。じゃ、終わらせるけどいい?」
「いいよ~」
「じゃあ、せっかく生まれてきたとこと悪いけど…ン?」
「どしたの?」
「いや……面白いこと考えついてさ。」
そういって僕は龍王に近づく。
魔物というのは、無から魔力が凝縮されて生まれる。だが、魔物が魔物たるには「瘴気」と呼ばれるものが必要不可欠。瘴気は、生き物を狂暴化させ、自我を奪う。たまにレイダや、レイダに命令を下す「魔王」、「魔帝」のような例外が存在するが、そのほとんどが、瘴気にのまれたものだ。
ならば、その瘴気を取り除けば、魔物化を解けるのではないか。
今回、相手は運よく龍王。ドラゴンは元から自我が強い。それなら、瘴気さえ取り除けば、瘴気を取り戻して、こちら側についてくれるかも…問題は、「生き物」→「瘴気を取り込んで魔物に」ではなく、「無」→「魔物」だということだけど……
「まあ、やってみるしかないか。」
「グルルルル……グルァァァアアアアア!!!!!!」
「フーッ………《瘴霧浄解》」
翡翠色に輝く光の帯が、剣を携えて迫りくる龍王の体を包み込み……
正気に戻った龍王が空高く飛び立ったのは、その10数分後だった。
あとがき豆知識…という名のアビスキュラ12メイド紹介コーナー
今回は、「ep.9 The King and His 12 Servants(ザ キング アンド ヒズ トゥウェンティ サーヴァンツ)」で初登場し、マチアスにログレスの軍の接近を知らせた、ネフィラです。
本名は「ネフィラ・グレイムーン」
元エルフで知性派。普段は比較的おっとりした性格ですが、いざ戦場となれば、与えられた仕事をきっちりとこなす仕事人です。普段は城内の書庫の番人をしていて、書庫の中の、マチアスの作った本を読み漁っています。さらに知識欲も豊富なので、魔法は一通り使えます。そのうえマチアス直々に教えてもらっているので、いくつかの禁忌魔法も使えるらしく……本人曰く、「主様には到底及ばないです。」とのこと。仲間たちから冤罪をかけられ、満身創痍だった時に偶然マチアスに会い、泣く泣く助けを求めたのが最初です。もともと立場が弱いほうだったのであまり教育を受けられておらず、マチアスとイヴから教育を受けています。基本はイヴと一緒に軍師的ポジションでいますが、ときには、後々に紹介するヴァレリア・ヘルグレイスとともに、魔法を使って戦うことも。
今回はイラスト多め!
前回間に合わず載せられなかったイヴ・ブラッドローズ、今回出てきた龍王、そして今回紹介した、ネフィラ・グレイムーンのイラストをのせておきます。
イヴ・ブラッドローズ
龍王
ネフィラ・グレイムーン