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4-②.門を叩け

 やはりそうきたか。

 こっそり土生さんに教えてもらったから炎を出すことはできる。ただ……

『そりゃ炎の能力者なんだからみんな炎を出すことはできるよ。でも俺は炎出してもせいぜい爪くらいの大きさが限界。ところがどっこい、火花を出すなら無限にいけるし、頑張れば銃と同程度の火力も出せる! ま、向き不向きがあるってこと』

 自分の得意とは何なんだろうか。昔読んだ本では人間関係が一割、遺伝が四割、人格が五割で能力の特性が決まると書いてあったが、両親の能力なんて見たことがない。

 テレビ以外で能力が使われている場面を見たこともなければ、無能力者だと思い、コンプレックスを抱いていたからこれまでの人生で能力について考えたことなんて無い。

 それに対し相手は恐らく幼少期から能力を使ってきたプロ。ハンデがあるとはいえ、勝てるのか?

「来ないなら先に行かせてもらう」

 早い! そう言い終わらない内に闇元素で構築されている触手はこちら目掛けて伸びてくる。

 咄嗟に炎を出そうとするも、悲しいことにガス欠のコンロくらいの炎しか出ずに体は吹き飛ばされてしまう。

「赤塚くん! 『炎を出そう』と思うからうまく出てこないんだ! 液体ガスが無ければライターに火がつけられないように、元素が無ければ能力は使えない! 体内の元素の流れを感じるんだ!」

 ……元素は膵臓で作られ、毛細血管へ出て血液中に混じる。まだ遠い記憶ではない中学での授業を思い出す。

 血の流れを感じろ、血の中の元素を感じ取れ。

 手に力を入れ、グッと拳を握った次の瞬間。


「いってぇ!」

「……って」

 両足の裏から堰を切ったように飛び出した炎で前に吹き飛び、勢いよく頭がぶつかった。

 あまりの痛みに頭を摩り、ふと顔を上げると同じく尻餅をついた黄田がいた。

 ぽかんと口を開け、鳩が豆鉄砲を食ったような顔でこちらを眺めている。

「すごい! 赤塚くんの勝ちだよ!」

 数十秒ほど両者が互いの顔を見つめていた時、土生の声でハッと我に帰る。

 思い描いていた勝ち方ではないものの、とても敵わないと思っていた相手に勝てた。その事実を確認して次第に喜びが込み上げ、口角もそれに比例するように釣り上がる。

「やっ……たーー‼︎」

 未だ腑抜けた顔をする黄田をよそに、喜びから謎の動きをする赤塚。いつもの黄田であったら「気持ち悪い」と言うのだろうが、今ばかりはただ眺めるだけだ。

 そんな舞い上がる赤塚ともう一人、冷ややかな目で見下しながらも瞳の奥に期待を見せる青年がいた。

 一人ベランダから赤塚と黄田をジッと観察し、小慣れた手つきで番号を打ち込みスライド式の携帯を耳に当てる。

「赤塚くんようやく自分で能力使いこなせるようになりましたよ。いやー、先生って大変なんすね」

 土生のウキウキした声は単純な達成感か、それともまた別の感情か。

「……大丈夫じゃないですか? そりゃ教会、しかもdeepの中でも特にヤバめの奴が派遣されてたってわかった時は焦りましたよ……いや本当に」

「ただまあ、実力者といえどやっぱり子供ですよ。"楽団"だったら異分子が入ったら女子供も容赦なく殺――いやいやいや! 冗談っすよ! 流石に子供には手出しませんって!」

 赤塚達と接する時に似ているようで、また異なる軽薄な雰囲気をまといながら会話を続ける。

 目の前に相手は居ないというのにコロコロ変わる表情は、彼が感受性豊かだからなのだろうか。それとも、全てが嘘であるのか。

「はいはい、それじゃ次は対面で話しましょうね。……神なき世界に栄光あれ」

 シャッと携帯を閉じ、大袈裟とも思える歓声をあげながら土生は二人の元へと向かった。

次回投稿は来週2025年1月4日です。

連載開始したばかりですが、来年もよろしくお願いします。

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