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8-①.緊迫のコート

8.緊迫のコート

「欠席いるかー?」

「さっきホームルームやったじゃないですかー」

「それもそうだな。じゃ、青木号令」

 体操着に急いで着替えて、グラウンドに出ると既に授業が始まろうとしていた。

 数メートルほど先で号令をかける彼、青木緑(あおきみどり)に貸してもらった体操着のジャージに慌てて腕を通しながら五人の元へ駆け寄る。

「転入生の赤塚もいるし、今日はドッチボールでもするか」

 息を必死に整えながら、皆の輪の中に入る。

 遅刻してきたことはとくに誰にも咎められず、そのまま準備運動が始まる。

 準備運動が終わると、担任である水谷昇(みずたにあがる)は大股でゆっくりと歩きながらグラウンドに白線を引き、大きな声でボールを一つ取ってと指示した。

 一、二分もすると、コートを書き終わり内野と外野を決めることになった。

「俺内野がいい! 内野!」

 勉強は好きでも嫌いでもないが、運動だけは自身を持って好きだと言い張ることができる。

 その中でも特に、ドッチボールは小学生の頃から大好きだ。

「最近能力に目覚めたんでしょ? 外野に行った方が見のためだよ〜?」

 嘲るような笑いを浮かべ、サイドテールの彼女、陣内愛(じんないみのり)の腕に抱きつきながら黒い眼帯を付けた大内柚姫(おおうちゆうき)が近寄ってきた。

 いきなりそんなことを言われては、抗議する他ないだろう。

「なんだよ、そんなこと言ったら危ないから女子は外野出てろよ」

 ふんと一つ鼻を鳴らしてじっと大内の顔を見る。

 お互い睨み合いの延長戦にもつれ込みそうになった瞬間、金髪の少女(?)岩下磊(いわもとらい)が間に入り二人をなだめる。

「まあまあ、そんなことを言ってる間に授業終わっちゃうわよ? お手並み拝見、ってことでいいじゃない」

 

 彼女はでも、と口篭ったが、「磊ちゃんが言うなら……」と彼女は向こうのコートに歩いていった。歩いている間にもお前が悪いと言わんばかりの視線を浴びせられたが。

 そこまで言うならやってやろうじゃないか。あんな軽口を今後一切言えないように完膚なきまで叩きのめして――

「……? 何で外野行くんだよ。あんなこと言う割には度胸無いのかよ」

「え。だって相手に青木いるから……私言ったからね」

 ギクッという効果音が付いてきそうなくらいの反応をしてこちらに振り返ると、ボールを持ってにこにこしている青木を一瞬見てからそう答えそそくさと外野側に行ってしまった。

 こちらの内野は俺……赤塚に、岩下。外野には陣内がいる。対して向こうの内野は青木と星岡晴爾(ほしおかせいじ)。外野は大内だ。

 ボールを持って微笑んだまま動かない青木が少し、嵐の前のような不気味さがあるが、きっと気のせいだろう。

 二人くらいすぐに当てられる。一回ボールを奪えばこちらのものだ。

「ジャンプボールは大内と陣内。ああそうだ赤塚、大怪我すると思ったらすぐコートから出ていいからな」

 水谷の意味深な一言を理解する前に、試合開始を告げるホイッスルが鳴り響いた。

 大内より少し背の高い陣内がジャンプボールを制し、ワンバウンドして自分達のコートに入る。

 幸先がよい始まりだ。皆んなには悪いが、速攻で試合を終わらせてやろう。

 グッと足に力を入れ一歩踏み出す。腕と体を同時に捻り、ボールを投げる。手応えあり。我ながらいい球を投げてしまったかもしれない。

 勝ちを確信して顔を上げると、先ほどからの笑顔を崩さないまま球を掴む青木の姿があった。

「確かに、()()()ドッジボールは強いらしいね。でもここは特別科の校舎だよ?」

 水が流れるような滑らかな動作でボールを構える。だがしかし、足はぴったり揃えたままだ。そんなフォームでは満足な球は投げられないだろう。

 この様子なら自分のボールを取れたのはまぐれか。みんなが口を揃えて青木が……と言っていたのは何だったのだろうか。

「賢斗ちゃん取らないで!」

諸事情により、次回更新は再来週3月8日になります。

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