6-②.真実求めて三千里
多忙により投稿を忘れてしまいました。申し訳ありません。
本能的に体が強張り、次の言葉は口を開閉している内にバラバラに落ちてゆく。
「え、あの、それは……彼は……」
「うん、彼は?」
「私の……幼馴染、です……」
手を握り締め芝生を見つめる。顔が上げられない。彼女の目をまともに見れる気がしない。
もしかしたら、口封じに……そんな最悪の展開を考えてしまい手足の先から感覚が消えていく。
周囲の賑やかな声だけが聞こえてくるのが、この雰囲気とは間反対で心地悪く思えた。
「……なんだ、そういうこと! 私あなた気に入ったわ! 流石に話せないこともあるけど、それ以外なら何でも聞いて頂戴!」
効果があるかは分からないが、謝罪の言葉を言おうとした瞬間、打って変わって楽しげな声が彼女から発せられた。どういうことか分からないが、窮地は脱したらしい。
「恋話は大好きなの! 日本の少女漫画とか、本当に好き!」
「え、いや恋人……とかじゃなくてただの幼馴染ですけど……」
「私知ってるわ。そういう二人の恋路が一番甘酸っぱくておいしいのよ。漫画で読んだわ! 一体いつから一緒なの? やっぱり昔から――」
なんだか、今度は別の意味で窮地に陥ってしまったようだ。
身振り手振りで感情の昂りを表現している様を見ると、こちらの顔も熱くなってくる。
恥ずかしさと行き場のない苛立ちやらでどうにかなりそうだったが、本題だけは忘れていなかった。
「……それで、賢斗のことは知ってるんですか?」
「ええ、もちろん。彼なら元気よ」
あっさりと笑顔で流され拍子抜けしてしまった。なんだ、言うほど機密情報ではないのか……。
「確か……明日、月曜日から特別科の五組に来るはずよ。あ、特別科への道は本当に危ないからコッソリ行こうなんて考えちゃ駄目よ!」
忍び込もうかと少し考えていたのはさておき、有益な情報を得られた。やはり、休日を無下にしてもこのイベントに参加するだけの価値はあった。
その後は普通にイベントを手伝い、無事に何事もなく終えることができた。笑顔で用紙を貰ってくれる小さい子の顔を見ると、日々の疲れが飛んでいくような気持ちになれたから、そういう面でも手伝ってよかったかもしれない。
「武中さんいい仕事ぶりだったわ〜。本当、普段の仕事も手伝ってもらいたいくらい……」
「ありがとうございます。聖教会って普段どんな仕事をしているんですか?」
「人によるけど、私は図書館みたいなところで働いてるわ。申請を受けて保管されてる資料を取り出したり、最近はパソコンを使ってそういった資料のデータ化、とか」
最後、小物をあった場所に戻しながらそんな他愛もない話をする。
学生生活を送っているとあまり聞くことのない仕事などでのエピソードは、他人の話ということもあってか聞いているだけでも楽しい。
「そうそう、実は私色々あってしばらくは日本にいるの。もしよかったらまたゆっくり話したいのだけれど……大丈夫かしら?」
「休みの日なら大丈夫ですよ」
まさかの誘いに多少の戸惑いは覚えたが、これも何かの縁だ。それに、行きたくなければ忙しいと言えばいい。
そう手を動かしたまま返事をする。了承を得た彼女は顔を見ずとも嬉しそうだと分かるが、外人は皆感情が分かりやすいのだろうか。
「よかった〜! なら連絡先交換しておきましょう……あら、ごめんなさい。今仕事用のしか持っていないわ」
指先を唇に当て少し考える素振りを見せると、手を一度叩きこちらに振り向く。
「じゃあ、申し訳ないけど聖教会の東京支部の方に後日電話してくれるかしら。派遣職員のエンリさんはいませんかって聞くだけでいいから。それで個人情報保護の観点から〜、とか言われたら――」
普通のとは違い、大きなスリットの入った黒い修道服の裾をひらひら揺らしながら軽くステップを刻んでいる。
さっきから楽しげに動いてばかりであまり片付けていない気がするが……年上にそう指摘する程の度胸は持ち合わせていなかったので、ただ見つめるだけに留めておく。
「七段の城壁のヴィーア・エンリ、そう言えばきっと会えるはずだから」
七段の城壁。何も知らないのにその単語を聞いただけで不思議と鳥肌が立った。
底無し沼に片足を突っ込んでしまったような、そんな不気味さが体をかけ巡る。
「また赤塚くんのこと教えてね」
そう言って、彼女は人に呼ばれ去った。
次回更新は2月1日です。




