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5-②.紫立ちたる雲

 朝食を済ませ、出発の準備も終わらせた朝八時。

 赤塚は見るからに落ち着きのない様子でしきりに服の汚れを払ったり、寝癖が無いかを確認している。

 数分に一回黄田に変じゃないかと尋ねてはまた汚れを払う。

 普通の生徒であれば、ある程度クラスの人間とも打ち解け始め、グループが形成され始める頃だろう。

 元々入学予定だった普通科には行かず、能力に特化した特別科への進学。

 どんな人がいるのか想像するが、どれもピンとこない。ただ、個性的な人間が集まっている、それだけは確信していた。

「迎えの車が来たそうだ。早く行けよ」

「おう! 今までありがとな、お前の作るご飯超美味しかった! 絶対連絡するから、また会おうなー!」

 大きく手を振りかぶりながら、来た時とはまた違う騒々しさを残し、外へと飛び出した。

 もう上へと登った太陽の光はちょうど赤塚の頭に重なり、まるで後光が差しているようにも見えた。

「……こちらこそ、ありがとう」

 騒がしい空気だけが残った玄関に対して、そう呟いていた。


 黄田達とはここで一旦別れることになる。さて、視点は変わり煌高に輸送中の赤塚。

 久々に見る街並みはとても鮮やかに映り、町を歩く人々の顔もなぜだか懐かしく思えた。

 この周辺は煌高を建てる際に教会が積極的に街づくりをしたことにより発展したため教会の人間も多く見られ、また学生向けのサービスを行っている店も少なくない。

 ここ、神奈川県川崎市多摩区煌五丁目は煌高を中心とした実質的な学園都市なのだ。

 活気のある駅周辺の商店街を抜ければ、一転して一軒家の立ち並ぶ閑静な住宅街へと変貌する。

 歩道には桜の木が植えられており、落ちた花びらはまるで煌高へと導くレッドカーペットのように思える。

 車はついに煌高の正門に着き、運転手が教員証と思わしきカードを見せると黒と黄色のバーが上へ上がる。それがこの学校に受け入れられたかのように感じ、また更に心拍数も上がっていく。

 駐車場に停まると降ろされ、担任が来るから待っていろと言われる。

 クラスメイトの想像ばかりしていたが、そういえば担任はどんな人だろうか。

 聖教会らしい祭服に身を包んだ優しそうな先生か、はたまた勤勉そうな信心深い先生か……ああいや、案外普通の先生かもしれない。


「初めまして、赤塚賢斗くんで合ってる?」

 春らしいのどかな緑の空に浮かぶ綿雲をなんとなく目で追っていた時、語尾が若干間延びした男性の元気そうな声が前から聞こえた。

 ハッと視線を戻すと、天然パーマが特徴的な黒髪黒目の先生が目の前に立っていた。

 随分と着古されたのであろう、所々色褪せた黒と緑のジャージに首元のよれた白いTシャツ。おまけにサンダルときた。

 別に公立などであればこういう先生は珍しくないし、なんなら小中共にこういう先生はいたが、煌高のようなエリート高校にいるのは意外だ。

「俺はS五組担任の水谷昇(みずたにあがる)。一応化学教師。話は聞いたけど、俺deepとかじゃなくて全然ランクcheapだからマジで能力で抵抗とかやめろよ、死ぬから」

 見た目に反し、相当な実力者かもしれないと身構えたが、どうやらテレビの見過ぎだったようだ。

 だが性格は見た目通り適当そうだ。しかし、ただの面倒くさがりという訳ではなく、面白いことを言ういじられタイプの人なんだろう。

 何か話題を捻り出さねばと考えつつ水谷の顔を見上げていると、クラスメイトが待っているから、と踵を返しさっさと歩き出してしまう。

 それに置いてかれないように走り出した第一歩は、新たな生活へのスタートを切ったようにも思えた。

次回投稿は来週1月18日です。

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