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エピローグ


「お前はいつも鈍くさいのに、人前に立つと輝くな」

「シャーリーンは昔からそういうやつだろ。それにしてもすごい人出だったな」

「まったくだ。戴冠式であんなに歓声があがったのは初めて見た、って父さんも言ってたよ」

「来てる人の数が違ったもんね。貴族から平民まで、そこにエルフと魔物と、他国どころか海外からも」

「それだけシャーリーンやルイス様に影響力があるってことだね。本当に誇らしいことだよ」



 今日は、海外へ就航する大型旅客船の処女航海を記念するパーティーに多くの人が集まっていた。



 これまで木造の船しかなかったこの世界で、ルイスと相談して戦艦としての鉄船をつくりはじめたのは戦前のこと。


 それを客船に転用し、ラートッハ王国やこの大陸の他の国から、海外へと出向く人々を増やすために着々と動いていたのは、私がどうしてもしたかったことのひとつでもあったからだ。



「それにしても、すごい船だな。シェフも選りすぐって、船内でショーもするんだって?」

「長い旅になりますし、飽きないよう豪華にね」


 私が笑いながら言うと、ジレス様がふうん、といささか感心したトーンでつぶやく。


 その横にいたラッセンさんが、少し渋い顔をしながら耳元で揺れる大きめのピアスに手を触れた。


「けど、本当に俺たちが行けるのかな。あの時の息苦しさを思い出すと、少しこわいんだが」

「ええ。私とレヴィン様が既に実証済みですので、ご安心ください」

「レヴィン様と? どうして僕には声をかけてくれなかったの?」

「ルイスが感動するところを見たかったから。私も感激して興奮しすぎてたら、ルイスの反応が見れないでしょ」

「おーっとっと。痴話げんかなら、よそでやってくれよな」


 ラッセンさんの言葉に、みんなが思わず笑う。



 魔法が使える者は、海の外へ行くことができない──────。


 これは確かに事実であり、実際に以前、ラッセンさんとルイスと三人で帝国の船にこっそりと乗り込んだときに、この身をもって実感したことでもあった。



 けれどその常識も今日で変わる。

 とある青薔薇塾の生徒が、戦後に海外留学して科学技術を学び、エルフと共同でこのピアスを発明したからだ。


 このピアスというのがまさに、魔法使いでも海外へ行けるようにするという画期的な魔道具で、おかげで私たちは今日の処女航海で、船客としてしばらく海外を遊学することになったのだった。


 ちなみに留守中の政務は、お父様がビシバシやってくれるらしい。


「あれ? アノーリオンさんは、荷物がそれだけなんですか?」

「レヴィン様も、ほとんど手ぶらですね」


 処女航海の船客には、もちろん同じイマリカ大陸内の他国の人たちも招待した。



 グアラ王国のオスカー様は、まだ就任したばかりなこともあって国王としての執務を国内で片づける必要があり、どうしても来られなかった。


 ……かわりに、「海外にいるユリアを誘拐してでも帰りの船に必ず、必ず乗せて帰ってきてくれ」という切実な依頼を私たちに残していった。



 アーシラ王国もまだ国家体制を整えている真っただ中で、かわりにいくらかの有望な若い国民たちが留学のために乗ることになった。



 そしてエルフのアノーリオン様と、魔物のレヴィン様。


 二人はすぐに参加の返事をくれて、それぞれ何人かずつ、興味ある他のエルフと魔物たちも一緒に連れてくることになった。


 長い歴史の中で初めてとなる、貴重な海外への進出を体験できるとあって、特にエルフは志願者が多く、アノーリオンさんとピアスの発明者の他は、エルフ流の決闘で勝った者だけが晴れてここに来ているのだという。



 ……それにしても二人とも、長旅にしてはあまりに身軽な格好じゃないかしら?


 私も不思議そうにしていると、当然だというように二人は笑った。


「物理的に持たずとも、物は運べるだろう」

「そもそも物体を必要とすることは、ほとんどないしね」

「ああ……たしかに」


 私がうんうんとうなずいていると、横にいたルイスが船員に尋ねた。


「さて、乗客は皆そろったのかな?」

「いえ、残り一名様がまだいらしていません。マ……」

「み、みなさんお待たせしましたあああ! お、遅くなりまして……はあ、はあ、シャーリーン様っ! 今日もお美しい……! はっ、そのドレスはっ! わたくしがシャーリーン様の雷伝説をもとにっ、デザインした! と、特別な生地とっ、はあっ、はあっ」

「マリベル……」


 今日も今日とてシャーリーンの強火ファンとして鼻息荒い言動を繰り広げたマリベルに、私は思わず笑みを浮かべた。


「急いで来てくれたのね。なにしてたの?」

「はあっ、あ、はいっ……シャーリーン様に海外旅行中、着ていただきたい衣装を考えに考えていたら、じ、時間が……!」

「おい。だからってまさか、あの外にある馬車三台分の服を持ってきたっていうんじゃないだろうな?」

「何ですかヴィンセント様。なにか問題でも? 今、運び入れてもらっている最中です」

「お前…………はあ。いや、さすがだな」

「はあ、とは??」

「はあ、には、はあ、という俺の気持ちがこもっている」

「そういうことじゃなくてですね」

「ついに全員揃ったってことだね」


 ルイスがそう言うと、船に乗っている人たちが皆一斉にそちらを向いた。


「まだ見ぬ世界へ行けるのが今から楽しみだね。この航海に、僕たちのゆく先に。乾杯」

「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」



このたび全80話で完結しました!

ずっと長編ファンタジー小説を書く&完結させるのが夢だったので喜びもひとしおです。


なかなか思い通りに更新できず間が空きすぎたり、自分の好みと思想強めの内容が故か読者様がなかなか増えなかったりと不勉強や後悔も多いですが、またいずれ、何らかの形で失敗を活かせたらいいなと思っています。


もしお付き合いいただいた方がいらっしゃいましたら、本当に本当にありがとうございました!


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